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テレビがテレビでなくなる日が迫ってきた

動画配信サービスのHuluが、日本で見放題月1450円のサービスを開始しました。ハリウッドの映画や海外のテレビドラマをテレビやパソコン、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機などのマルチスクリーンで視聴できます。
さっそく百式さんがレビューをレポートしていらっしゃいました。さすがスピードの時代ですね。

【F-12レビュー】 人気映画やテレビ番組が楽しめるhuluを試してみたよ! | IDEA*IDEA :
DVDのレンタル業界にとっては衝撃的な脅威になること、WOWWOWやケーブルテレビの料金にも影響がでてくることはいうまでもありませんが、それだけでは済みそうにありません。いよいよテレビ放送の終わりがはじまる象徴的な出来事になってきます。

もちろん、「テレビ番組」を見る人がなくなってしまうわけでも、「テレビ番組」がなくなってしまうわけでもありませんが、液晶テレビが、「テレビ番組を見る装置」から「好きな動画を見る装置」に移っていきます。「テレビ番組」はひとつの選択肢でしかない時代が始まるのです。とくに若い世代ほど、この変化には敏感に反応してきます。
Huluが日本でもたついている動画配信サービスを加速させるできごとになればと思いますが、実は放送業界を揺るがす構造変化はすでに起こってきています。

テレビ視聴者の高齢化です。

現在は、テレビは見る人の率でも、接触時間でも他のメディアを圧倒しています。NHKの行っている国民生活時間調査を見ると、これだけインターネットメディア利用が増えているにもかかわらず、テレビの視聴時間は増えています。おそらくにわかには信じがたいと感じる人が多いと思いますが、そこには落し穴があります。

平日の場合、3.28時間が平均視聴時間ですが視聴時間や視聴時間の伸びを支えているのは高齢者だということです。たとえば、10代男性は1.50時間、10代女性は2,01時間、20代男性は1.54時間、20代女性は2.33時間ですが、60代男性は4.29時間、60代女性は4.39時間、70歳以上男性が5.39時間、70歳以上女性が5.29時間です。しかも若い世代ではテレビを見る人も、視聴時間も緩やかではあっても減ってきています。

生活時間調査 | NHK放送文化研究所 :

つまり、テレビ番組は、広告収入を大きく左右する視聴率を稼ごうとすると、高齢者にあわせた番組内容にせざるを得ないのですが、それはますます若い世代にとってはつまらない番組になっていくというジレンマを抱え始めていることを物語っています。若い世代に合わせると、こんどは視聴率が稼げません。消費の旺盛な若い世代にリーチしたい広告主にとっては、テレビ広告の効果が落ち、広告の価格にも影響し、テレビ局の広告収入が減少するという負の循環が当然起こってきます。

もし、動画配信サービスが伸びれば、さらに若い人たちの「テレビ番組」離れは加速することは言うまでもありません。だからビデオ・オン・デマンドにしてもおいしいビジネスである本業への影響を考えれば、まだ海のものとも山のものともわからず、しかも収入としては本業よりもはるかに小さい動画配信サービスへの取り組みが遅れてきたのでしょう。典型的なイノベーション・ジレンマです。

しかし「好きな時間に好きな番組や映画を見る」「テレビ、スマートフォン、タブレットPC、ゲーム機など、好きな場所で、好きな方法で見る」のが時代の流れであり、腰の重い民放キー局5社も電通と、ビデオ・オン・デマンドのサービスをはじめるというニュースが流れていました。しかし、「2012年度から2014年度を本格運用に向けた準備期間」とし、「視聴機会が増えることで、テレビの魅力が再認識され、リアルタイム試聴へとつながることが狙い」というまるでスピード感もなく、番組への動線という発想も、さまざまな社内事情がそうさせているのでしょう。

民放キー局5局と電通が共同で取り組む民放VOD、そこで目指すサービスとは - ニュース解説:ITpro :

いずれにしても、たんに「見逃し番組を有料で見る」程度ではほんとうの潜在需要を掘り起こすことはできません。収益をどうとるかというビジネスのしくみ、またインターネットと組み合わせ、ストックされた画像を生かす発想も必要になってきます。
NHKが、PCでしか見ることができず、また画像の解像度も低いのですが、新日本風土記アーカイブスを利用した映像マップ『みちしる』も面白い試みです。

NHK映像マップみちしる〜新日本風土記アーカイブス〜 :

サイト「みちしる」好評 : テレビ&ラジオニュース : テレビ&ラジオ : エンタメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞) :

フローでしかない番組を安いコストでつくろうとするから番組がますますつまらなくなってきています。また安さの最たる韓流ドラマを仕入れるということになってしまうのでしょう。テレビ番組の価値が劣化すればするほど、コンテンツとしての競争力を失い、テレビがテレビでなくなる日が近づきます。

放送局が生き残るためには発想を変えればいいのです。フローでしかない番組を流すだけではなく、ストックされた良質なアーカイブスを再利用し、価値のあるものにしていくことだと思います。

たんに「見逃した番組」を見るビデオ・オン・デマンドではストックされた情報の価値をあげていくには力不足です。インターネットとの融合を真剣に考えれば、本当に社会に貢献できるイノベーションを起こせる可能性も見えてくるのでしょう。

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