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音楽プロデューサー・佐久間正英氏が語る「音楽業界の危機的状況」

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日本の音楽業界の問題点

—ツイートを拝見していまして、違法ダウンロードの刑事罰化も、巡り巡ると表現する人たちにとっても、いい結果をもたらさないということをおっしゃっていました。

佐久間氏:表現をする人たちの”自由”を保証するように法を改正していかないと。今は自由じゃないんですよ。

例えば、仮に音楽をウェブで売ろうとした時に、自分で作った曲であっても権利登録されていたらできないわけですよ。あるいはどこかのレコード会社で作っちゃっていたものも、もうできない。曲なんて資産ですよね。そうやって縛るのではなく、煩雑な手続きもなく有効活用できる、もっとオープンな方向な音楽シーンというか、環境に向かわないとさらに衰退するんじゃないかなと思う。

—海外はエンターテインメントビジネスが日本に比べて非常に発達している印象があるのですが、アーティストとレコード会社との契約や業界の慣習など、海外と日本で違う点にはどのようなところがあるのでしょうか。

佐久間氏: 僕は80年代にPLASTICSというバンドをやっていて、海外ではラフ・トレード・レコード(Rough Trade Records)、アイランド・レコード(Island Records)というレコード会社から出したりしているんですけど、レコード会社の体質とか、やり方っていうのが全く違うんです。

当時のアイランド・レコードは、世界でも大ヒットを沢山飛ばしていましたが、ちっちゃな建物でした。しかも人数もそんなにいない。壁には大きな模造紙を貼って、手書きで各バンドのスケジュールなどを書いている。ラフ・トレード・レコードでは社員が自分たちで箱詰めをして、1階からトラックで積んで出荷すると。そんなやり方です。はじめから考え方や規模が違って。日本のレコード産業の構造的な問題はそこらへんだと思います。

—音楽に対する考え方とか目的みたいなものがちょっと違うと感じたのでしょうか。

佐久間氏:そうですね。音楽への真剣さを感じました。僕が初めてラフ・トレードの社長に会いに行き、社長室に入って行った時に、名前を言う前に、「お前、PLASTICSだな」と言われた。PLASTICSはラフ・トレード・レコードからは1枚しか出していないし、会いに行ったのは発売後10年近く経ってからのことです。

社長が、たった一枚しか出していないアーティストのことも分かる。「あれよかった」と、音楽の話ができる。ビジネスに対する真面目さがあまりにも違うなと感じました。

アイランド・レコードでPLASTICSでアメリカを回っていた時に、各地方ごとに営業の担当が来るんです。彼らは、初対面の時にもちろんバンドの全員の名前がわかる。で、「今回のを聴いたけど、あれは前のバージョンのほうが好きだった」とか、そういう話までちゃんと出来るんです。

日本では地方にプロモーションに行くとラジオ局を回ったりして最後はご接待、となるわけですが、この人は僕らの音楽を聴いたことがあるのかっていう人がたくさんいるわけです。引き連れるコースのことしか考えていない。

通常の商売では、当たり前のことですが、自分のところの商品を触ったこともないやつが商品を売れるわけがない。でも、そういう普通では無いことがずっとまかり通ってしまったのが、日本の音楽業界なんです。

—音楽業界にいる人たちが、自分で実際にCDを買ったりしてないんじゃないのだろうかというような批判もあります。

佐久間氏:そんなことはないと思います。擁護するわけではないんですけど、レコード会社でやっている人は音楽は好きですよ。ただ音楽を商品として扱える知識がないですね。売上を伸ばすための宣伝方法とかそういう知識はあるのですが、商品自体に対する知識があまりにもないんじゃないかなと。

知識があるとしても、アーティストのキャラクターとか、こいつはこういうやつだとか、こいつはこういう曲を作るやつだとか、その範囲にとどまっている感じがするんです。商品のこの部品の、ここを変えればもっとよくなるんじゃないか、ということを考えられる人がほとんどいない。そういう部分は全部プロデューサーとかに丸投げしてしまっている。

もちろん、たまにとても優れた方もいたりするんですけど、この人は優れているなと思ってた人は、だいたい社長とかになっちゃうんですけど(笑)。

商業的な部分での音楽の作り方だけを見ていても、例えばアイドルでは、まともに歌ったこともない子をオーディションで集めて、その中でルックスがよくて歌がマシな子を選んでやる、で、売る、何万枚売れたでよしとしている。

韓国のシーンを見ていると、アーティストを見つけるためにすごく真剣な努力をしていて、一番才能のある子を何年もかけて育て上げる。日本向けに出そうとしている子には、デビュー前に日本語を徹底的に勉強させる、1年くらい日本に住ませることもある。そこまでお金を投資して初めてデビューさせるんです。日本のアイドルのクオリティでかなうわけがないんですよ。

例えば楽曲にしても、日本では何人かの作曲家に依頼したとしても選ぶのはディレクターとか事務所社長とか、言ってしまえば音楽をあまりよく分かっていない人だったりするみたいですが韓国での話を聞くと、今回はスウェーデンのグループの曲を、という具合に、世界中に発注して集めている。そういうレベルで対応している。

ビジネスの仕方も、印象ではアメリカのビジネスのやり方と近い。僕が会った方も、日本の音楽業界の人とはまるでスピードが違うんですね。話していて、「気に入った、分かった、じゃあすぐ契約しよう」、「契約のドラフトはどういうふうに作ろう」と、初対面の場で出たことがあります。すごくびっくりしました。日本だったら、「ではこの話は会社に持ち帰って、社内で協議します」となる。それからドラフトを作成、そして3ヶ月後にという話になると思うんです。

—日本のアーティストがアジアに行って人気が出ていると報道は良く目にしますが、知らない間にアジアに負けてしまっていると。

佐久間氏:かなりの部分で負けているとは思いますね。アジアで音楽祭があっても、最近では日本のアイドルが呼ばれる数は圧倒的に少ないですから。数年前だったら、もっとたくさん呼ばれていました。

シンガポールもまだ発展途上な段階なんですけど、これからやっていくのにどの国とタッグを組むかという話になっても、初めから相手として日本は考えていないと言うんです。日本の音楽レベルには興味がないと言われているような気がしました。

アジアの中では、ロックバンドに関しては唯一日本にも活路があるのかなと思いますが、正直に言って、それも時間の問題かなという気がしてます。今のやり方をしていると、聖飢魔IIであれ、GLAYであれ、B’zであれ、せっかくあのレベルまで持ってきたものがもう育たないだろうなという感じがしています。

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