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東電勝俣会長退任インタビューの不遜

本日の日経新聞朝刊に、東京電力勝俣会長の退任を前にしたインタビューが掲載されています。東京電力の問題では何か書くたびに「言っても無駄」と、コメントをいただくことも多々あるのですが、無駄を知りつつも一応言っておくべきとは思いますので書くことにしました。

この時期に勝俣氏が新聞社のインタビューに応じると言うは何か思惑があってのこと。もちろん普通に考えれば、会長辞任を目前に控え今一度公式な形で福島第一原発被災者の皆さんはじめ世間の人々に謝罪の弁を申し述べてきたい、そのような意図でのメディア登場であると受けるのが正しかろうと思い読み進めた次第です。しかしながら、いきなりその受け止めは、力一杯打ち砕かれることになります。

日経新聞インタビュー要旨冒頭にある質問「東電の実質国有化」の項の回答を、以下に転記します。

「一言で言えばやむを得なかった。(原子力損害賠償法の免責条項である)3条ただし書きという選択肢もあった。免責を主張して勝つ可能性も弁護士らに指摘されたが、難しそうだと感じた。被災者の皆さんから損害賠償請求の提訴を受けた際に『免責だ』といって何年も裁判できるのか。社会的に激しく糾弾される。銀行借り入れも難しくなる。こうした原賠法の欠陥を認識していなかったのは、反省材料のひとつかもしれない」

勝俣会長が言っている「3条ただし書き」とは、原子力損害賠償法3条1項にある「異常に巨大な災害で原発事故が発生した場合は電力会社の賠償責任が免除される」旨の規定のことを指しているようです。すなわち、氏の言いたいことは、「本来東電は今回の件では、免責されると読み込める法的根拠もあったのだ」ということのようです。そして、でありながらその主張をしなかった理由は、「社会的に糾弾される」「銀行からの借り入れが難しくなる」といった、組織防衛上の理由をあげているのです。日経新聞はこの部分のやり取りを「賠償を優先したことを強調」と書いていますが、私にはどう読み込んでも被災者保護の心情は全く感じられず「組織防衛を優先したことを吐露」としか読み取りようがありません。

もちろん経営者として、有事における行動の判断基準として組織防衛の優先順位を高めて、あるべき手立て考えることは誤った方向ではないと思います。しかし、自社が引き起こした事故により被害者や被災者が出ているのであるのなら、その被害者・被災者の保護は最優先されるべきであり、自己防衛をそれに優先させることはできないはハズなのです。仮に被害者・被災者の保護を最優先することによって、組織崩壊のリスクを負うことになろうともそれはやむを得ないこと。ましてや、公共的色合いの濃い企業体の長であり、また人命がかかわる事態であるのならなおさら、被災者保護は最優先されるべき判断材料であるでしょう。

しかしながら会長の弁では、「被災者保護ではなく組織防衛上の判断から、3条規定の主張を断念した」と読み取れます。私は勝俣会長のこの言い分を聞く限りにおいて、氏が今回のインタビューで述べている被災者に対するお詫びの言葉も非常に空虚なものに聞こえてしまいます。氏は27日の会長職辞任を前に、被災者はじめ迷惑をかけた世間の人々に改めて謝罪をしたかったのではなく、「本来は自分たちも被害者であるのだ」「本当は免責されるべき事態でありながら、法の規定の甘さを容認していたがためのミスであったのだ」「法の未整備による混乱を避けるために国有化を甘んじて受け入れたのだ」等々の、これまで言いたくとも言えなかったことを、最後に会長として言いたいがためにメディアの取材をこのタイミングで受けたと思われるのです。

日経新聞には、勝俣会長を評して「カミソリ」と言われた論客であったとありますが、経営者としてはその姿勢において最後まで最低であったなと思います。この期に及んで、自分たちは免責されるべきであったという主張ともとれる一言、被災者救済よりも組織防衛を優先しての苦渋の決断であったという心情の吐露、法的規定の詰めの甘さの放任に関する自己批判形式での不満の表明等々、どのひとつをとっても被災者が耳にしたときにむしろその神経を逆なでするのではないかと思えるような発言の数々は、「カミソリ」であるが故の上から目線は如何ともしがたく、勝俣氏が東京電力の悪しき風土を作ってきた張本人であるということを明らかにする以外の何ものでもないと思います。

東電のあるべき再生がしっかりと進むか否かは、この古き悪しきトップの発言を耳にして、東電組織内部から「恥ずかしい」という一言が誰ともなく発せられるかどうかにかかっているように思います。

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