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音楽産業の構造変化と衰退の理由

音楽が売れない理由ですか

いろんな話がネット上にはでているようですね。

ちょっと僕の意見というか。雑感。

アドバンテージマトリクスについて知らないひとはこれを http://www.nsspirit-cashf.com/logical/advan_mat.html

アドバンテージマトリックスのような競争戦略の枠組みで考えてみたりすると、すこし業界の流れがみえてくるのでは?と思った次第。

かつての音楽産業は、個人屋台みたいなもので個人の才能を小さい規模で披露するみたいな、分散型の産業に近かったのかなとおもいます。要するに町中の個性派レストランのようなもの。

それを規模産業に仕立てあげたのが、いわゆる大手音楽レーベルですね。町のレストランを、全国チェーンFCみたいにするイメージ。外食チェーンが食を産業化したのと一緒で、音楽レーベルが音楽を産業化しました。

個人の才能というより、一定レベルのクオリティの音楽を大量生産できる体制をつくり、レーベルでアーティストをまとめて発掘・育成マネジメントすることで、量産効果を得て、最後は、テレビやドラマ・広告のタイアップとして、ファッション的にどかーんと大量に売りさばく。音楽を聴いていないとダサいという雰囲気を作り出し、大衆がみな購入するものとして商品をつくった。 この競争のルールの下では、タイアップを取れる規模が大きいレーベルが常に勝ちました。

すでにこの時点で、音楽性なんてどうでもよくなっている。 このとき、音楽レーベルの最大の差別化要因は、マスコミとタイアップできるか。マスコミタイアップでセールスできるか?ということに付きたわけです。

良い音楽を作るというのはこの時点で題目ではなくなっています。 悪い音楽ではダメですが、タイアップテーマに合わせた一定以上のレベルの音楽が作れればよかった。そしてそういう音楽を大量生産するスキルを大手レーベルは開発したのでした(小室、ビーイング系、avex)

しかし、もはや大量消費の時代も終わったわけです。 似たような音楽や、似たようなドラマを大量消費する時代はおわった。まさにPOPの終焉。 もう、そういうのは、皆が欲しがる普及品段階を超えて、日用品になってしましました*1

コモデティです。

要するに、冷蔵庫とか、電子炊飯器みたいなものです。冷蔵庫とか炊飯器は、なくては困るけど、なにかあればいいわけです。 音楽も、冷蔵庫と一緒で、ないと寂しいですが、別になにか、適当に流れてその場でちょっと消費できれば十分なわけです。その音楽を一生聞き続けようとも思わない。

音楽的に差別化できる要因もなくなって、マスコミや共通の娯楽といった規模要因も効かなくなった。

こうなると、手詰まり産業になります。 家電などが、典型的な手詰まり産業です。 家電の特徴をかんがえると、音楽産業がよく分かるでしょう。

「良い音楽をつくっても売れない」 ⇒ 「多機能で、完璧にご飯が炊ける炊飯器や、棚が20個くらいある冷蔵庫や、リモコンにボタンが100個あるようなテレビをつくっても売れない」

<競争要因の変遷> ・音楽の内容(分散事業の時代) ⇒ ・音楽と一体化した広告、テレビ、ファッション(規模事業の時代) ⇒ ・なにもなし(手詰まり産業の時代)

しかし、既存の音楽業界は、新しい競争軸を打ち立てることできず、権利保護ばかりで漂流しているし、音楽家も音楽の内容が大事だという議論に先祖帰りしようとしている。 これが現状だとおもう。

手詰まり産業になったものが、どうイノベーションを起こすか? これはいくつかセオリーがある。 新しく規模がきくようなもの(共通コスト)などを見つけて、再度規模産業にするか、 もしくは新しい競争要因を見出すというものである。

家電の場合、デザイン化などは、後者の例である。機能や価格といった従来の競争要因ではまったくない「デザイン」というものを認知してもらって、あたらしい差別化するということだ。

これに習うと、音楽においても、音楽性やファッション性というものと違う要因を打ち立てて、それで売っていくという方向を模索するしか無い。

AKBは、これに近いと思う。AKBの音楽は一定以上のクオリティがあるがそれまでである。ファッションと大量消費とも違う。AKBは、ファンとのコミュニケーションを販売しており、当初からの見にいけるアイドルというコンセプトや、握手会、総選挙というものからして、音楽ではなく、コミュニケーションエンターテイメントを売っているのは明らか。それのマネタイズとしてCDというのが付属しているにすぎない。

AKBは、音楽産業において、音楽内容そのものやファッション性といった過去の売りものとは違う競争要因で勝負している。

よくあるAKB批判としての「音楽がせこい」「可愛くない」とかいうのはこの観点からみるとすべて的外れの批判だと言える。必要以上の音楽性や必要以上の可愛さは、AKBの競争フィールドにとってはどうでもいい要因である。

(AKB) ⇒ タレントとのコミュニケーション (新しい競争要因・差別化軸)

コモデティからの脱出は、先祖帰りすることでも、権利保護することでもない。 あたらしい競争要因・差別化軸を生み出していくこと。 これがイノベーションの本質であって、 すべての産業のイノベーションとは、あたらしい競争要因を自ら生み出していくことにほかならない。それが新しい市場をつくりだす。音楽産業においても同じである 要するに音楽産業は、次のイノベーションを起こす必要がある。そうしなくては衰退する。当たり前の話である。

(追記:音楽家へ)

なお、依然として分散型事業としての音楽は今も昔も同じくこれからも残るとおもいます。ここでは限られた嗜好の一定の層向けに質の良い音楽を作るというのが差別化要因として機能するでしょう。良い料理を作るレストランと一緒です。ただし、これが、以前のように巨大タイアップがついて200万枚売れるということはありません。星付きレストランは味では秀でていても、デニーズのような売上は作り出せません。

もう、音楽産業は音楽家のための産業ではありません。外食産業が、料理人のための産業ではないように。事業家の視点ではなく、あくまで音楽家をやっていきたい人にとっては、星付きレストランを目指すという方向性が必然的な帰結なのかもしれません。つまりメジャー・デビューというのが死語になるということです。

*1 この構造変化をおこした要因はいろいろあります。ネットや携帯の普及といった見方が一般的でしょう。

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