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円を止めドルを使用したら?(超円高撃退法)

 幾分円高が修正されているようですが、それでも政治家にとってはまだ円高がホットイッシューであるのです。何と言っても、1ドルは80円を切る価値しかないのですから。

 で、このような円高が続くと、当然のことながら経済界から悲鳴の声が。

 例えば、米国向けに年間10億ドル分の輸出をする企業にとっては、1ドル=80円が1ドル=76円になることによって円建の売上高は800億円から760億円に減少してしまうのです。このため、場合によってはコスト割れになってしまうかもしれません。(但し、以上の計算が成り立つためには、年間を通して1ドル=76円に下がっている必要があります)

 まあ、だからこそ経団連の会長は「単独でもいいから為替介入を行うべきだ」なんてことを言ったりするのでしょう。

 しかし、為替介入を行うこと自体が目的ではなくて、円高を修正することに目的はあるわけですから、単独の介入に打って出ても、それで円高が修正されることがなければ、政府は何をやっているのかと批判されるのが目に見えているのです。

 だとすれば、ここは慎重に作戦を練り、円高を巧く回避するしか方法がないということなのです。

 いずれにしても、このように超円高が続くと、昔は固定相場制を採用していたのに‥とか、円の価値をドルの価値に固定することができないのか‥なんて考える人が出てくると思うのです。

 こうした考えは素人の十八番というべきなのでしょうか?

 実はそうではないのです。かつては通貨マフィアとも呼ばれていた財務省の国際問題担当の財務官が、あるとき米国に対して、円やドルの価値の目標値を設定するような構想を提案したことがあるのです。

 これ、どのような内容なのかと言えば、例えばこの先1年間は、1ドル=90円を中心として、ドルの価値がその中心値から上下3%の範囲に収まるよう、関係国が互いに努力するいうようなものであったのです。

 そこの貴方! 私がいい加減なことを言っているのではないか、なんて思っていません?

 そんなことはないのです。この構想は、かつて財務官を務め、今は島根県の知事をされている溝口氏が、財務官当時、米国のカウンターパートに打診をしたものであるのです。

 何故私がそんなことを知っているかって?

 実は、この話、当の溝口氏が、退官後にある新聞紙上で披露した話であるのです。

 いずれにしても、そのようにしてドルと円の関係が固定とまではいかないまでも、急激な変動を避けるような仕組みを導入しておけば、経済界が悲鳴を上げるような急激な円高も避けられる訳で、日本にとっては大変に結構な話であると思うのですが、その構想を聞いたアメリカ側は、大変に冷淡であったのだとか。

 為替レートの決定は、市場に任せるべきだ、と。

 まあ、そういうことで、円の価値は常に市場任せになっており、だからこそ今回のような円高がしばしば日本経済を襲うことになるのですが‥でも、何か方法はないのでしょうか?

 もっともアメリカからクレームを付けられるような方法ではダメであるのですが‥

 つまり、今更日本が中国のように資本取引を規制し、そして為替レートをコントロールするような
体制に逆戻りすることはできないのです。でも、世界の国々のなかには、自国の通貨をドルに固定させていても、米国から何のクレームをつけられない国もあるのです。例えば原油を生産している湾岸諸国。日本もそれらの国々に倣って、円をドルに固定してしまうことはできないのか?

 やっぱり難しいのでしょうね。

 では、いっそのこと今発行している円を全てドルに交換してしまい、日本国内の取引もドルで行うように制度を改正してしまうようなことが考えられないのでしょうか?

 或いはまた、ユーロ圏を参考にして、アメリカとともに日本が中心となってドル圏を形成して、日本がその一因になる、と。

 で、そのようにしてドル紙幣を日本国内の法定通貨にしてしまえば、もう我が国の輸出企業が円高で苦しむことなど永久になくなるのです。

 もちろん、ドル紙幣は米国の中央銀行が発行するものであるので、日本政府や日本銀行は、日本の景気がどのような状況にあろうとも、直接通貨の発行量を増やしたり減らしたりすることはできなくなるのでが、その代り超円高とは永久におさらばできる、と。

 さあ、このアイデア如何でしょう?

 まあ、大方の方は、そんなことをすれば通貨主権を放棄することになり絶対に反対だ、とか、景気に応じて金融政策を変更することができなくなり反対だ、と言うと思うのですが‥でも、アメリカが慢性的な高失業率に悩む限り、アメリカが急に金融を引き締めることはないでしょうから、その意味では日本がドルを法定通貨として使用するようになっても取り敢えず困ることはないような気もするのが‥

 でも、やっぱり大反対ですよね。だって、我々は日本人ですから。日本人なのに何故ドルを使わないといけないのか、と。

 しかし、そうやって我々が日本人としてのアイデンティティを大切にして、独自の円という通貨を使い続ける限り、否が応でも通貨価値の変動から解放されることはないのです。

 もちろん、日本銀行にじゃんじゃん日銀券を発行させて、円の価値を低下させるという作戦も考えられないことはないのでしょうが‥それは単純に言えば、日本銀行が大量の米国債を保有することと同意義です。

 確かにそのような作戦を実行すれば、超円高が回避され、その結果輸出企業が悲鳴を上げることはなくなるかもしれないのですが、その代り日銀が実質的に大量の米国債を保有することになるために、仮に将来米国の支払い能力に疑いがもたれるようになると、大きな損失がどっと日本銀行の覆いかぶさることになってしまうのです。

 つまり、仮に超円高を回避することができたとしても、為替リスクやソブリンリスクは全て納税者の肩にかかることになるにです。

 なかなかいいアイデアはないものです。

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