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“楽曲は無料、ライブも無料”の時代を--日本の音楽業界に挑む米国人シンガー

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nothing ever lasts
nothing ever lasts / 中央がネルソンさん

日本のことが好きすぎる米国人シンガーソングライター、Nelson Babin-Coy(ネルソン・バビンコイ)さん。名門UCバークレーでコンピューター・サイエンスを学んだのに、なぜか日本でバンド活動をしている。しかも「音楽を楽しむのにJASRACなんていらない。CDは無料で配ってしまおう」と本気で考えている。不振にあえぐ日本の音楽業界を変えていきたいからだという――。【取材・執筆:鳴海淳義】

彼が参加しているバンドの名前は「nothing ever lasts」。6月公開の映画「ライバル伝説」では主題歌を担当。「My pain, My way」という曲で6月6日から配信する。iTunesやGoogle Music、Bandcampなどで購入できる。CDはたぶん売らない。



ネルソンさんが初めて日本に来たのは15歳のとき。当時住んでいたカリフォルニア州バーバンク市が群馬県太田市と姉妹都市になっていた関係で交換留学制度があった。「ゲーム大好き、ニンテンドー大好き」だった少年はこれになんとなく応募。2001年のことだった。

「2週間の留学から帰るとき、絶対にまた日本に来たいと思った。うまく言葉にできないけど、『ここはオレの居場所だ』と思ったんです。すでに日本に住みたいと考えていました。大きかったのはホストファミリーの存在です。僕は一人っ子で親は結婚していなかったので母と2人きりで生活していました。群馬県では同じ家にお祖母ちゃんお祖父ちゃんも一緒に3世帯が住んでいて、家族というものを初めて経験したんです」

■「ゴメン、オレ日本語やるわ」

その後、大学は西海岸の名門、UCバークレーに入学。コンピューター・サイエンスを学んだ。Facebookが流行り始めた頃で、映画「ソーシャル・ネットワーク」に描かれていたように、友人は皆、Googleなどの現地IT企業で働くことをイメージしていた。

しかしネルソンさんは最初の1年でコンピューター・サイエンスを辞めてしまう。「一生PCの前で仕事をしたくない、日本語をやりたい」と、日本語専攻に切り替えた。

「バカだよねぇ(笑)親にも反対されました。家族全員から『おまえ何やってんだよ』と。高校でわりと優秀な成績をとって結構期待されてたんだけど、『ゴメン、オレ日本語にするわ』って(笑)」

UCバークレー時代にも日本に留学し、慶應大学で1年間を過ごした。日本語の新聞や論文を読みあさるなど必死に勉強した。同時に、趣味で路上ライブに挑戦。アメリカにはない路上ライブという文化が興味深かったそうだ。

1カ月ほどライブを続けていたら、とあるインディーズ事務所の社長に声をかけられた。そのときのことをネルソンさんはこう振り返る。「事務所に遊びに行ったら、『キミの一番の自慢の歌を聞かせくれ』と。で、聞かせてみたら、始まってすぐに『はい、ダメ。歌下手くそだし、日本語もダメ。でも顔はいいから使える』と言われて。最悪な気分でした(笑)。そこで思い切り落ち込みましたけど、好きな日本で生活できるからまあいいかと自分に言い訳をして、歌のうまい女性とユニット組まされました」。しかし結局、興行ビザが下りずに帰国。

「そのまま米国にいたら、きっと音楽はやめていた」とネルソンさん。なぜ再び音楽活動に目覚めたかというと、きっかけは動画共有サイト「YouTube」だった。日本の名曲をカバーして演奏した動画をアメリカからアップロードしたら、思わぬ反響があった。

■日本でYouTube初期の人気者に

ネルソンさんは「ネルの1コーラスシリーズ」と名づけて、せっせと動画をアップロードした。再生回数は20万回以上にのぼり、YouTubeで一躍人気者となった。いまから5年以上前。現在に比べるとまだYouTubeも浸透していなかった頃だ。音楽というカテゴリにおいては、視聴者数は日本でもトップクラスとなった。「日本に戻ってきたら、道で声かけられましたよ。『あっ、YouTubeの人だ!』『そうですよ、YouTubeの人だよ』って(笑)。そんなことが週に何回もありました」。

そして、日本の音楽業界にコミットしようと強く思った出来事もこのとき起きた。

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