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今の公職選挙法は「ありえない状況」-One Voice Campaign 実行委員会に聞く

(左から)高木新平氏、原田謙介氏、江口晋太郎氏。(撮影:田野幸伸)
(左から)高木新平氏、原田謙介氏、江口晋太郎氏。(撮影:田野幸伸) 写真一覧
現在、世界中でネット発の運動が政治や国を動かしている一方、日本では先進国であるにもかかわらず、未だインターネットを選挙運動に利用することさえもできていない。そんな中、若者の政治離れに危機感を抱き、ネット選挙運動の解禁を求める「One voice Campaign」が話題となっている。ネット上での政治家の情報発信を推進する私たちBLOGOSも、この「One Voice Campaign」に全面的に賛同するとともに、立ち上げのきっかけについて、実行委員会のメンバーに話を聞いた。【編集部 大谷広太、濱田敦子、田野幸伸】

-まずは、今日お越しいただいた皆様のご経歴と、今回のキャンペーンに参加されたきっかけは何でしょうか。原田さんは、呼びかけ人だそうですね。

原田謙介氏(以下、原田):僕はもともと学生時代にivoteという団体を立ち上げて、20代の投票率を上げよう、政治を身近にしよう、という目的で活動していました。大学卒業後も、若い人と政治をつなぐ、をテーマに活動をしています。

今回のキャンペーンは、有権者の声をもっと政治に反映させようということで始めました。そもそも、選挙のときにインターネットが全く使えない状況というのはありえないと思います。公職選挙法は昭和20年代にできた法律ですから、当然インターネットなんていうものは想定されていません。現代においても、ブログやTwitterが公職選挙法の第百四十二条で定められている「文書図画」と解釈されてしまっているんです。

もともとこの第百四十二条の、葉書やビラ以外の頒布を制限し、その枚数を制限する条文は、立候補者がお金のあるなしに関係なく公平に活動できるように作ったものであって、ブログやTwitterを使った情報配信にまで適用されてしまっている状況は誰も得しないと思います。だから、ネットでの選挙運動を解禁するというのは、政治や選挙に関しての情報を届けるというありのままの姿に戻すというだけの話なんです。

選挙というこれからの政治を決めるための大事な場なのに、候補者本人だけでなく支援している人が政策の比較やわかりやすい説明もできなくなるというのはおかしい話で、有権者同士、候補者同士、そして有権者と候補者のコミュニケーションのきっかけを奪っていることにもなると思う。

江口晋太朗氏(以下、江口):僕は高校卒業後、3年ほど陸上自衛隊にいました。ちょうどその頃、イラク派遣の渦中にもいて、自分自身の立場が政治や社会情勢の当事者としての感覚を持ちました。それから、そうした政治や社会情勢の背景にも興味を抱くようになり、自衛隊を退官して大学に入り、議員へのインターンやNPOでの活動などを個人でやるようになりました。 議員インターンをしていたときには、ちょうどオバマ大統領が当選したときで、彼の選挙戦でのプロモーションを見ていて、そこからデジタルの世界やメディアに興味を持ちました。 今は、社会の仕組みをどう変えていくか、様々な分野を横断し人と人や、人とコトなどあらゆるものつなげるための方法として、IT・ウェブ、メディアの力などを使い、コンセプトやメッセージを紡ぐ編集者の仕事をしています。

ネット選挙運動が解禁されたからと言って、必ずしも若い人が投票に行くとは限らないけれど、やはり若い世代が情報に触れられる方法が増えるだけでもメリットはある。日頃、政治活動で使っているネットを公示・告示前日の23時59分で止めないといけなくなってしまう現状はあまりにおかしく現代にマッチしていなく、むしろ機会損失を法律が生み出してしまっていると言っても過言ではないと思います。

高木新平氏(以下、高木):僕はこれまで政治とは遠い距離にいたのですが、学生の頃からデザイン活動をやっており、その後は大手広告代理店に入社しました。ただ、就活のときにリーマン・ショックを経験し、入社後にはTwitterや Facebookなどが爆発的に流行、1年目の終わりには3.11もありました。そんな急激すぎる環境変化の中で、少しずつですが明らかに、これまでの”前提”が変わってきていることを実感しました。ライフスタイルやワークスタイルそのものを今の社会の中で、どのように再構築していくかを考えなければならない。そのためにも今は会社を辞め、様々な領域を超えて新たなことに挑戦することで、”これからのカタチ”を探しています。

例えば、ライフスタイルで言えば六本木で「トーキョーよるヒルズ」というシェアハウスを立ち上げました。家族でもあり、仕事仲間でもある5人の住人を中心として、家をパブリックな空間として様々な人が使えるようにすることで、生活と仕事・知り合いと他人・プライベートとパブリックの境界線を超えた場 をつくっています。また、ワークスタイルで言えば連続起業家の家入一真さんらと「Liberty」という新たなカタチの組織を立ち上げました。メンバーがプロジェクト単位で集まり、土日や平日夜中を使ってサービスを企画開発し、利益が出たらメンバーに還元する、という海賊的なモデルを実験しています。

政治に関しては知らないことも多いですが、ネットというコミュニケーションのツールがこれだけ生活に浸透しているにもかかわらず、政治分野だけがそこから乖離していってしまっている。有権者が投票に行かなかったり、国民のニーズを汲み上げることができていない現状も、そんな環境が作りだしてしまっている部分は少なからずあると思います。もっとネットが当たり前なものになるようにしていきたいと思っていたこともあり、今回このキャンペーンの立ち上げに参画しました。

-どういうプロセスを経て皆さんが集まったんですか?

原田氏:僕が何人かの知人に呼びかけたら、ここにいるメンバーで言えば、江口はもともと関心があったので協力してくれて、でも高木は政治にはほとんど関心がなくて…(笑)

高木氏:はい、全然興味なかったです(笑)

原田氏:でも、話をしたら「それはおかしいなあ」と、乗ってくれました(笑)。多くの人は、ネット選挙運動が解禁されていないことすら知らないんですよ。

高木氏:僕は本当に無知でした(笑)でも、会社を辞めてフリーになったりすると、法律や規制されていることの多さに気がついたんです。トップダウンで社会システムを変えなきゃいけないと苛立つこともありましたから。社会の構造自体を、変えていかないといけないんじゃないか、と感じます。そうした、社会のおかしいところを、自分たちでおかしいと言い、それを変えていくアクションをおこさないといけない時期にきていると思うんです。

今日はこの3人でインタビューを受けていますが、誰がコアとか誰かに言われたから動いているということはなくて、「自分はこの議員にあたってみるよ」とか、「俺はここでイベントやってみるよ」とか、組織的にではなく、全て自発的にやっているんですよね。

-誰かリーダーがいて、ということではなく、それぞれが得意分野でできることをやると。

高木氏:そうです。だから自分にも何かできることがある、という人はどんどん参加して欲しいです。

原田氏:エンジニアの方で、この部分は自分が手伝いますよ、という方がでてきたりするのが面白いです。今回は政治の中でもとくにネット選挙運動解禁が中心ですけれど、これをきっかけに、他の分野でも誰か任せでなくて、自分の出来る範囲でどんどんやっていくというのは面白いと思いますね。

江口氏:それぞれにタスクを割り振る、というよりも、「俺これやるよ!」というのが良いと思うんです。やらされるんじゃなく、自分から自分のできる範囲のだけでも自発的にコミットする。そうしてつながることで、いろんなことが加速度的に進んでいくことは多くあると思います。

-ネット選挙運動解禁に関して反対する方はいるんですか?いるとすればどういう理由がありますか?

原田氏:表立って反対する人はいませんが、ネット選挙運動解禁で若い人がどっと来たら「これくらいやればこれくらい得票できるだろう」という、これまでの選挙運動の手法や予測が成り立たなくなるんじゃないか、という懸念はあるかもしれません。若い人の投票率が変われば、政策の打ち出し方なども変わってくるかもしれません。

また、議員のなりすましをどう防ぐのかという声はあります。ただ、それはネット選挙運動解禁とは関係なく起こりうるし、議員の側が「それは俺じゃない」と、それこそ反論のメディアとしてtwitterやブログを使えば良いと思います。いまは、ネットがまったく使えない状況では、議員はデマや誹謗中傷が広まるばかりで言われっぱなしですしね。そうした、ネットを1つのメディアとしてとらえるべきなんです。

それから、ネットを使えない人もたくさんいるじゃないか、情報格差も進むじゃないか、という意見もあります。でも、若い人には新聞を取っていない人も多い。働いていれば昼間はテレビも見ていないし、街頭演説をわざわざ見に行くことはできないですよね。

いずれにせよ、議員のみなさんの間にも、そのうちどうせ解禁されるという空気が出てきていると思います。どうせ解禁されるのであれば、なし崩し的に解禁されるよりも、議員のみなさんも、有権者も一緒に動いて、一緒に前向きに解禁していったほうが面白いと思うんです。

-ネット選挙運動のその先には「電子投票」もあると思いますが。

江口氏:電子投票は、2つも3つも先の話だと思います。政治の世界においてインターネットの市民権が確立しない限りは、まだ議論ができないと思っています。政治という世界でインターネットという言葉の認知があまりにない。まずは、インフラとして機能しているインターネットの市民権をつくり、そこから、みんなで議論していけばいいと思います。

-5月23日に予定されているイベント「ONE VOICE サミット」について教えてください。

原田:衆議院議員会館のホールで、各党の国会議員7名をお呼びして、若い人の声が政治を動かしていくスタートにしたいと思います。どうやったら解禁できるのかお話を聞きますし、そのために議員の側がやること、有権者の側がやることを話し合う場にしたいと思います。

高木氏:イベントは20時で終わるんですけど、そこから100時間の間に、ウェブ上で有権者の人の声を集めるキャンペーンを仕掛けていきます。"現代版署名"のようなイメージで、Facebookで「イイね!」やtwitterのRTなどをできるだけ多く。賛同する有識者や議員さんのこともどんどんサイトで紹介していきたいと考えています。これらを通じて、ネット選挙運動を解禁を求める声がこれだけあるんだ、そこにはポジティブな未来があるんだという流れを創りだしていきたいです。

-このまま来年の夏まで解散がなければ、衆・参同日選挙がやってきます。そこまでに実施していきたいことは。

江口氏:ネット選挙運動のガイドラインはあるといいなと思います。また、どうやったら有効に情報発信ができるのか、インターネットを活用している人たちと議員さんとで考える勉強会なども開いてみたい。政策の比較や、政治家の応援サイトのようなサービスも、これからみんなで自発的につくっていくこともあるかもしれません。大事なのは、自分たちでアクションを起こしていく、ということです。

-後援会や政治家だけの情報発信だけでもなく、政治家を応援するサイトができたら面白いですね。

原田氏:そうですね。投票したら終わりじゃなくて、投票した自分も責任感や当事者意識を持って、政党や政治家に対して意見を言い続けられるような環境づくりにもつながっていくと思います。

-読者へのメッセージを。

江口氏:世代間格差って、価値観や考え方が相互に伝わっていないから起こっていると思うんです。One Voice Campaignをきっかけに、同じような運動が他にも立ち上がって、ネットがお年寄りも若い人も一緒に知恵を出しあって、歩み寄れる空間になればいいと思っています。いろんな世代が、一緒に社会について考えて、知恵を出しあったりアクションをおこしたりしてほしい。

高木氏:世代間"競争"から世代間"共創"にしたいですね。世代で対立するんじゃなく、世代を超えて新しいものをつくっていく。そうして、対立するんじゃなく、一緒につくっていくような社会になれば、もっと世の中は生きやすくなると思うんです。

原田氏:世代・立場等関係なく、日本のことを少し考えて、自分以外の人のことも考えて、みんなで日本を盛り上げていければ面白い国なると思います。

-ありがとうございました。

BLOGOS編集部では、23日のイベント取材を行い、今後もOne Voice Campaignの関係者へのインタビューなどを実施していく予定だ。

■関連情報
One Voice Campaign
FacebookTwitter

「ONE VOICE サミット」(5月23日(水)開催)の もよう


■登壇者
【国会議員】
石井登志郎氏(民主党衆議院議員)
世耕弘成氏(自民党参議院議員)
鈴木寛氏(民主党参議院議員)
遠山清彦氏(公明党衆議院議員)
松田公太氏(みんなの党参議院議員)
福島瑞穂氏(社民党参議院議員)
井上哲士氏(共産党参議院議員)

【有識者】
津田大介氏(メディア・アクティビスト)
三浦博史氏(株式会社アスク代表取締役

【One Voice Campaign】
発起人・原田謙介

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