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現代の若者像 今も昔も変わりない?

『“新人社員”が危ない?どうつきあうイマドキの若者』(NHK2012年5月5日放送)
を見ていて感じたことを記載してみます。

「今時の若い者は!」というセリフは、いつの時代にもあったという指摘があります。大人からみれば、若者は理解できないというのは、いつの時代も変わらない、ということの意味です。

しかし、今時、言われている若者像というのは、その程度のものなのでしょうか。

私には、どうにも、そのようには思えません。質的な違いを感じざるを得ません。

同番組では、まず、現代の若者の生まれ、育った環境の特徴を示しました。
①バブル崩壊後の出口の見えない不況
②ネットワーク社会
③ゆとり教育

これらは、確かに、現代若者が生まれ、育った環境の特徴でもあります。

そして、厚労省によれば、3年で30%の新入社員が辞めていくという統計を紹介し、会社があの手この手で、社員が辞めない方策を講じているというものです。

この中で、一番、気になる発言をしていたのが、古市憲寿氏(社会学者)です。
発言要旨は、以下のとおりです。

現代の若者は、言われているほど変わっていない。20年前の『新入社員』という本にも、同じように「従順であるが、指示を待っているだけ、すぐ辞めてしまう」と書かれており、それほど変わっていない。

辞めていく理由も、
仕事が合わない
労働時間、休暇の条件
賃金の条件
人間関係

であり、これは、仕事が大変だから辞めていくという、いつの時代も同じ内容だ3年で30%が辞めているというが、バブル期も同じ数字だ。

他の出席者から、転職といっても、ステップアップになる転職であればよいが、今の転職は、貧困へ落ちていくものではないかという指摘に対し、古市氏は、
「貧困に陥らないように社会に仕組みを変えていくべきだ。」
と述べています。
また、古市氏は、データによれば、
「若い者は、それでも終身雇用と安定を求めている。」
とも紹介しています。

現代若者が、昔と比べて変わらないかと問われれば、やはり私は、ノーと言わざるを得ません。しかも、危機的状況ではないかとも思えるくらいです。

もともと、同番組の分析は、極めて不正確です。

前述したように、①〜③と分析していますが、それは単なる現象面をみたにすぎません。

①については、展望が見えないという意味では、その通りでしょう。
しかし、展望の見えない時代も、過去にも通過してきています(例えば世界大恐慌時代など)。時代ごとの比較がありません。

今後もマネーゲームを是とする社会を続けていくなら展望が見えないでしょうし、その意味では展望が見えないと言っても程度の差でしかありません。
②について、解説者は、「親密」な人間関係が身近になったが、会社に入ると孤独感を味わうという説明をしていました。
ネット社会が、どうして「親密」なのかが疑問です。むしろ薄っぺらな人間関係ではないかと言われている中で、コミュニケーション能力の低下こそ指摘すべきではないかといえます。

③については、解説ではゆとり教育を「個性重視」などといっていましたが、とんでもないことです。一部のエリート以外を切り捨て、教育予算の削減を目指したゆとり教育が「個性重視」であろうはずがありません。教育から切り捨てられた世代というべきです。

今の若者が置かれている状況の分析は、不正確なばかりでなく、不十分でもあります。

①生産性が向上し、生まれながらにして、物があって当然という環境で生まれ育っていること。
既に生産性の向上により、生まれたときから物があふれているし、食料にしても飢えることがないということです。この現象は、これまでの歴史の中では経験していないことです。
働かないニートの存在は、親世代によって養うことができるから(生きている間だけですが、遺産があれば、さらにその後も可能。)、ニートでいることができるわけです。その延長線上には、親や社会が、自分にしてくれて当然という発想につながります
生産性の向上は、従来は、金持ちもボンボン息子だけだったのが、着実に一般的な層にまでニートを押し広げています。
先進国ではニートが社会問題になっていますが、先般、NHKのラジオ放送でもサウジアラビアの若者の実態が述べられていましたが、若者の失業対策として外国人労働者ではなく、一定の割合で自国民を採用することを義務づけたところ、企業からは非常に不評だった、外国人労働者より格段に高い賃金で雇用し、しかも熟練の外国人労働者に比べても全く未熟な自国民若者は、クーラーが無く暑いからというだけの理由ですぐに辞めていってしまう。みな、クーラーの効いた楽な事務職ばかりを求めている、というものでした。

②社会保障が「充実」したこと。
働けない、仕事が見つからない、という状態でも、かつてであれば、役所の窓口は生活保護の申請さえさせずに、追い返していましたが、その点は、役所の窓口の対応の改善により、水際作戦が改善されつつあります(但し、現実に保護を受給させなければならない世帯は拒否している現実もあります。)。
出席者の中の香山リカ氏(精神科医)が、すぐに内面にきてしまうという指摘がありましたが、香山リカ氏のいうようなすぐに内面に来てしまうと、即、精神疾患ということになりますから、精神疾患による休職やら退職、さらには生活保護という状況もあると推測されます(もちろん、イコール不正受給ということでありません。)。

③インターネット社会の出現が、コミュニケーション能力の低下を一層、促進したこと。
私が驚くのは、消費者事件などで、欺されたと主張する人たちが、「友だち」という言葉を連呼するので、私はてっきり幼なじみとか、高校時代の同級とかかと思っていましたが、単にメールアドレスを交換しだけの関係であることが少なくありません。
下の名前は知っているが、苗字は知らないという人も少なくありません。
メールで内心に踏み込むような人生相談をし、それに相手が応えている姿とは思われません。面と向かってコミュニケーションをとれないのに、メールなら可ということがおおよそ、あり得ないことです。
いよいよもってインターネット社会は、人間関係を希薄化させているのです。
にもかかわらず、会社では、「濃密」な人間関係が求められるわけで、とてもではありませんが、コミュニケーション能力のない現代若者がいれる環境などではありません。

④労働を尊ばれなくなったこと
労働によって社会が成り立っているという当たり前のことが、認識されなくってきていることが非常に問題です。

このような問題は、結局のところ、労働を尊ぶという発想が全くもって欠如しているということでもありますが、他方で、マネーゲームによって単にお金を転がすことによって巨万の富を得ている(サウジアラビアではオイルマネーで外国人労働者を買っている。)、それが成功者だということになれば、誰も汗水垂らして働こうなどという気にならなくなるのも当然のことです。

そして、生まれながらにして、物があって当然という環境であるならば、「我慢」などいう概念は存在していないでしょうし、ましてや自分の力によって、自分の置かれた環境を変えていこうなどという発想も存在しないでしょう。

古市氏は、若者だって終身雇用を求めていると言っていますが、それは当然でしょう。その方が楽ですから。本当は、その企業で働き続けたいにも関わらず、辞めざるを得ない、会社や社会に問題があるんだという趣旨での発言であれば、それには賛同できません。

会社や社会には大いに問題はありますが、しかし、そこで会社や社会に変われと言っているのは、若者に手取り足取りせよと言っているだけの意味でしかなく(会社や社会の「問題」のとらえ方が違うということです。)、当該若者が自分自身で会社や社会を変えていくという発想が全くないからです。

このような活力の低下した若者が、今後の日本や世界を背負って立つということに大いに危機感がなければならないはずです
その意味では、古市憲寿氏も現代若者の一人なのかもしれません。

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