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やまもといちろう氏は別にフェアトレードを批判したのではない(メモ)


sutaba_1やまもといちろう氏(いつもは”さん”としているのですが、それではひらがなが並び過ぎるし、”山本一郎さん”ではわかっている人しか伝わらないのでそう書いておきます)が、堀江健太郎さんという方が問題提起したコーヒー価格に対する理解不足とか、どこに問題があるのかを書いたブログを受けて、小松原織香さんという方が、さらに問題意識を投げかけています。しかし小松原織香さんにもまだ誤解があるようなのでかんたんにメモしておきます。
数字をきちんと読めない人がフェアトレードとか言い出すと大変なことになるかもしれない(メモ): やまもといちろうBLOG(ブログ)

グローバル化した市場の問題を無視したフェアトレード批判を始めると、大変なことになるかもしれない(メモ) - キリンが逆立ちしたピアス :

しかし、堀江健太郎さん、やまもといちろう氏、小松原織香さんとつながった議論の中味は、「モノづくり」信仰の危うさを理解する結構大切な問題だということ、経済や社会の矛盾は、政治や社会運動だけが解決策ではなく、ビジネスによる解決もあるということを理解するうえで重要です。またネットではいい感じの議論の流れだと感じるので取り上げておきます。 結論から言えば、コストに占める原材料の比率が小さいのは別にコーヒーに限らず、価格の成り立ちでいえば、製品に占める原材料や部品のコストが占める比率が下がってきているのが現実です。もしタンザニア及びエチオピアの貧しいコーヒー栽培に携わる人びとを救おうとすれば、現実には、やまもといちろう氏が指摘されているように卸を頼る流通経路を変えるしかなく、それを行おうとすれば、市場のメカニズムのなかで、フェアトレード・ビジネスを成功させるしかないの2点につきます。ちなみに、堀江健太郎さんは、やまもといちろう氏の指摘を受けて、Facebookにメモを追加されていますが好感が持てます
【謝罪と弁明】昨日シェアしたコーヒーの絵について :


自分自身がこういった産業の収益構造を知るまでに多くの時間を経てしまいましたが、それから世の中を違う視点で見る事ができ、それは非常に有意義なものでした。だからこそ、若くしてそういった知識を得、想像できるようになることは非常に重要ではないか、と思いました。


堀江健太郎さんが産業の収益構造を知り、世の中を見る視点が変わったというのは素晴らしいことです。評論家、政治家やマスコミでもまったくわかっていない人が結構多いのが現実です。モノづくりこそ日本を救うという信仰は日本の政治を誤った道に走らせ、日本の経済を危うくすることにもつながりかねません。市場での競争に負けてきてきた結果、投資が滞り、モノづくりの現場力ですら危うくすらなってきている分野もあるのです。

価格はさまざまな要素のコストとそれぞれの利益の足し算で構成されていますが、価格はコストで決まるのではなく、結局は消費側がどれだけの価値を見出すかと競争の結果として決まってきます。しかも製品やサービスが高度化すればするほど価値を生み出すための要素やしくみが複雑となってきます。コーヒーでいえば、コーヒー豆とか容器などのモノそのものだけでなく、やまもといちろう氏が指摘するように、その店を構えるコストや、そこで働く人たちの人件費だけでなく、その人たちのサービスレベルを保つための教育トレーニングなどにもコストはかかってきます。それらを含めての価値を凝縮されているのがブランドです。

産業が高度化してくると、製品やサービスの価値となる要素のなかで、モノそのものが占めるウェイトは下がってきます。モノの持っている機能を統合すること、ソフトと組み合わせること、さらにどうすれば価値を引き出せるかのノウハウなどのほうが価値の決め手となってきます。

マーケティングの世界では、マイケル・ポーターが「価値連鎖」という視点を生み出しましたが、現代はマイケル・ポーターもきっと真っ青というほど、さらにその連鎖が複雑化してきています。たとえば、スマートフォンやタブレットPCの世界は、たんにひとつの企業が製品を生み出すプロセスだけでは価値の説明がつきません。音楽や書籍といったコンテンツやゲームやさまざまなアプリを開発し提供できる企業、通信会社などが集積し、まるで自然界で共生する動植物の世界のような関係が成り立って価値が生まれてきています。また企業を顧客とする専門性の高いB2Bビジネスでは、ユーザーが実際に使い、その利用現場でさらにノウハウが生み出され、そのノウハウも含めて価値が高まること、つまり製品やサービスを提供する側だけでなく、ユーザーも価値づくりに加わっています。そういったユーザーとのコラボレーションの場や関係そのものを広げ、また深めることが競争優位の決定打になります。

収益構造だけでなく、なにが製品やサービスの価値を生み出しているかの構造を読み解く視点がこの時代には重要になってきていているのです。


つぎに、小松原織香さんが、コーヒー価格は世界の先物市場で相場が決まることで理不尽が生まれていること、例えばブラジルで豊作だと、不作だった他のコーヒー産出国の価格までも同じように下落してしまい、そのコーヒー農園で働く人たちの生存すら脅かしていることを指摘しています。その通りでしょう。またフェアトレードの状況のまとめについてもGood jobです。しかし、そうなってしまうのは、あくまで普通の流通経路をたどっている場合です。だからやまもといちろう氏は、こう指摘しているのです

で、これ。要するに「コーヒー農家はやっすい値段で商品を買い叩かれて、利益はコーヒーチェーンが持っていってぼろ儲け。そういうクソみたいなコーヒー農家の労働者になって搾取される側にならないよう教育すべき」という話ですね。


それに対して、小松原織香さんが、コーヒーにまつわる問題点買い手としての消費者の意識の問題に重きをおいていますが、ちょっと認識のズレというか、小松原が「我が事」としてどうするんだとうということが伝わってきません。

これは、そんな話ではない。「コーヒー一杯買う時に、消費者として、誰から何を買うことで、何が起きるのかを考えよう」という話が、この図から得られる示唆である。それが堀江さんの「俺はこういう構造に気付くまで多くの時間を要してしまったけれど、気が付いてからは違う目で世界を見ることができるようになった」の意味するところだろう。


消費者にそういった矛盾を気づかせ、実際に農家の労働者の生存権を守るのかですが、社会運動だけでは限界があります。それは現実を一部の人たちに知らせることはできたとしても、実際には消費者にとっては遠い世界の話になってしまいます。そしてたとえその矛盾や理不尽さを知ったとしても、実際に買える場に巡り合えることはできません。

日本がフェアトレードが世界の先進国に比べ劣っているのは、なにも消費者だけの問題ではなく、そういったフェアトレードのビジネスがまだ十分に育っていないからです。いくら理念が立派でも、モノが流れ、カネが流れる仕組みがなければ、なにも起こらないのです。
価値は、消費者の共感によって生まれます。そういったグローバル市場での矛盾があることは、逆に、その矛盾を埋めることを目指したビジネスが起こってくる機会も生まれてきます。それがソーシャル・ビジネスです。

ソーシャル・ビジネスとしての企業経営がうまく軌道に乗れば、現実を知らせることも継続的に行なえ、また実際に市場価格よりも高い価格で仕入れ、現地の貧困を救うことも継続的に行えます。「コーヒー農家の労働者になって搾取される側にならないよう教育」されなくとも、そういったビジネスが成功すれば生存権は守られることにも役だってきます。

ソーシャル・ビジネスといわなくとも、流通業のなかには農家と契約栽培を行い、市場価格が暴落するとせっかく栽培した野菜を捨てなければならないリスク、無農薬・低農薬で栽培するリスクを解消しているところもあります。そういえば日本酒でよく使われる山田錦はふつうの稲よりも背が高く、粒も大きいために台風などの影響を受けやすいリスクを背負っています。だから農家は作りたがらないのですが、昨今はそのリスクを避けるために、日本酒のメーカーや蔵元の多くが農家と契約して原材料としての山田錦を確保しています。

ただソーシャル・ビジネスも理念だけでは成功しません。フェアトレードだから、共感できるというのも大いに差別化となり、また価値を生みますが、美味しいとか、だからこれだけの品質でも安いとか、それを利用することがカッコイイとか、心が満たされるという価値づくりも行うこと、さらにブランド化していく知恵やマーケティング力も必要になってきます。

社会起業家となってフェアトレードを広げる道もあるでしょうが、実際にはフェアトレードに貢献している企業もあるので、そういった企業に就職するとか、そういった活動をしている企業の存在を知らせ、バックアップしていくことのほうがフェアトレードを広げる近道なのではないかという気がします。

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