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小沢判決の解説・評価(それでも「小沢は黒」という人たちへ)

さて、連日この話題を取り上げてきたが、そろそろこれを最後にしたいところである。

無罪判決の意義と挙証責任の問題を混同して議論するなということは、「疑わしきは被告人の利益にという挙証責任の問題があることと、判決が出た段階における無罪判決の意義を、同一に論じられるべきではない」と述べたとおりであり、4月28日付ブログ記事「小沢判決の解説・評価と往生際の悪いマスメディア」の最後の方において、記載した。

通常人の通常の日本語能力をもって東京地裁判決を読めば、「真っ黒」とか、「限りなく黒」だが無罪なんていう理解にはならないと思うが、要職に就いている人やマスメディアの人々は、本当に判決を読んだのかどうかしらないが、本当に判決要旨を読んだとすれば、通常人の通常の日本語能力を持っていないのではないかとすら思ってしまう。

判決要旨が民主党の議員により公開されている現在においては、判決が小沢を黒と言っているというのであれば、少なくとも95ページの判決要旨を読んだ上でいうべきであろう。

さて、それでも「小沢は黒」という人たちのために、小沢の4億の原資について、東京地裁刑事第11部はどのように判断しているのか紹介したい。

判決要旨の29ページないし30ページは次のように判示する

((3)アの結論部分)したがって、石川が、本件4億円の簿外処理を意図した動機は、本件4億円を被告人からの借入金として公表することで、マスメディア等から追及的な取材や批判的な報道を招く等(原文ママ)して、被告人が政治的に不利益を被る可能性を避けるためであったと認められる。

更に進んで、指定弁護士は、石川が①平成17年3月頃から5月2日にかけて、被告人の指示を受けて、被告人の知人が運営する政治団体である改革国民会議の4億円の資金を分散して入金するなどして本件口座に集約したり、払い戻したりしたことなどから、本件4億円の原資の形成過程について、公にできないものであるとの危惧感を抱いたこと、②本件4億円は、無利息で返済の期限の定めのない借入金であることから、寄付金と解されるなどして、政治資金規正法上の制限に違反するとの疑惑を招くおそれがあると考えるに至ったこと等の事情がある旨主張している。

これらの指定弁護士の主張は、いずれも一定の合理性があると考えられなくはないが、この点について、石川は、公判においては、本件4億円の簿外処理の意図について否定しており、指定弁護士の主張に沿う直接証拠はない

また、①に関して指定弁護士が主張する事実は、石川において、本件4億円の原資が何らかの違法性のある資金であるとの具体的な認識を有していたことを推認できるほどの事情とはいえない

さらに、同人の供述からうかがわれる同人の政治資金規正法における寄付等に関する知識の程度等によれば、前記②の認定も困難である。

その他、指定弁護士の主張を裏付ける証拠はないから、前記アの限度で認定するのが相当である。


この判決から明らかなとおり、石川の簿外処理の動機について、判決は原資が違法なものであったためそれを隠すことを意図としたとは全くもって認定していないのである。

現に判決は、本件土地の公表先送りについても、要旨35ページないし36ページにおいて、

石川が、本件土地公表の先送りを意図した動機には、(省略)石川が供述するとおり、先輩秘書の示唆を受けるなどして、本件土地の取得が収支報告で公表され、マスメディアの追及的な取材、批判的な報道の対象とされるなどして、被告人が政治的に不利益を被る可能性を避けるためであったと認められる。


と改めて認定し、要旨37ページで、

指定弁護士は、本件土地公表の先送りは、収支報告書の記載を複雑化して、その内容を分かりにくくする隠ぺい、偽装工作としての意味もある旨主張しているが、そのような効果があるかには疑問があり、そこまではいえない


しており、原資の違法性を隠す偽装工作という指定弁護士の主張を排斥している。

そして、判決要旨38ページで判決は、

指定弁護士は、29日の送金は、分散入金や28日の送金と一連のものであり、本件土地購入代金等や本件定期預金の原資が、陸山会の資産からかき集められたものであるとの外観を作出し、本件4億円を分かりにくくするために行われたものである旨主張している。

しかし、28日の送金のそのものは、同じ陸山会が有する口座間の資金移動に過ぎず、収支報告書等での公表は予定されていないから、金をかき集めた外観を作出するための隠ぺい行為としての実効性には、疑問がある

また、29日の送金は、関連団体からの資金移動ではあるが、関係証拠によれば、これは、平成16年分の収支報告書において、関連団体から陸山会に対する寄付として記載されていないことが認められ、本件土地の取得費や本件定期預金の原資として対外的な説明に利用されていないから、収支報告書を意識した計画的な隠ぺい工作と認めるには、疑問がある

したがって、指定弁護士の前記主張は採用できず、28日の送金、29日の送金の目的は、前記2及び前記5(1)で認定した趣旨にとどまるものと認められる。


として、違法な原資を隠す隠ぺい工作というマスメディアの報道にも多くあった部分は、明確に否定しているのである。

以上みてきたとおり、マスメディアが騒いだ4億円の原資が違法な献金によるものだという"疑惑"部分については、裁判所は一切採用していないし、それを前提として隠ぺい工作があったとする指定弁護士の主張を採用できないとしているのである。

このように、判決が原資の違法性に何ら言及しておらず、原資が違法なものであることを前提とした指定弁護士の主張を明確に排斥しているにもかかわらず、未だに「小沢は黒」という人々はどう判決を読んでいるのであろうか。

ぜひともその通常人を超えた(?)理解の過程を教えてほしいものである。

なお、ここで面白いのは、秘書の有罪判決で、別の裁判体(当時の東京地裁刑事第17部)は水谷からの1億円を認定したわけであるが、東京地裁刑事第11部はこの認定には触れず、違法な原資を前提とした偽装工作の主張を排斥している点である。

ここは私の個人的な感想なので、異論があるかもしれないが、小沢一郎の判決を下した東京地裁刑事第11部は、秘書たちの有罪判決を下した東京地裁刑事第17部の事実認定方法(少なくとも原資についての水谷建設からの1億円の認定部分)に問題があると感じて、その認定を前提とせず、違法な原資を前提とした偽装工作の主張を排斥しているのではないかと思う。

この水谷からの1億円認定については、オーソドックスな裁判官であれば、問題があると感じていたであろう(この点については、阪口弁護士のブログ記事の説明が参考になる)。

以上のとおり、マスメディアが「小沢は黒だが無罪」とする論拠は判決要旨からは見出せない。

他方で、インターネットを見ていると、「この判決は当初は有罪だったが無罪に直前で変わった」とか、「東京地裁は検察のプライドを守るために報告と了承を認めた」とか、しまいには「最高裁の陰謀だ」とか、極めて陳腐な陰謀論が結構あることに驚いてしまう。

いずれも一見して失当な見解であることは明白であるが、歪曲報道や陰謀論を行うにしても、もう少し判決要旨を読んでほしい。

なお、私はこれで小沢氏が非の打ちどころのない立派な人物であるとは考えていない。
当然、秘書の虚偽記入に対する責任というのは別途、検証されるべきであろうが、小沢氏の秘書が控訴していることからすれば、今これを議論すべき時ではないし、これを理由とする証人喚問等を要求する政治パフォーマンスは、極めてくだらないの考えている。

本件で小沢氏に説明責任があると主張している政治家たちは、なぜ政治資金規正法を改正して、今後、秘書の虚偽記入でも、政治団体の代表にも連座制が適用されるような法制度に改正しなかったのであろうか。

今まで約3年間という長期間、それをしてこなかった政治家の無責任さを棚に上げて、「小沢氏は政治家としての責任を果たせ」というのは、滑稽としか言いようがない

さて、連日紹介しているが、刑事訴訟法に興味がある人にはこの本を読んでもらいたい。
一番オーソドックスなものである。

法律を勉強したいまでは思わないが、司法のあり方に興味がある人にはぜひこの映画を見てもらいたい。

 

 

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