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小沢判決の解説・評価と往生際の悪いマスメディア

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既に多くのメディアが取り上げているが、東京地裁の小沢一郎氏に対する無罪判決について、取り上げたいと思う。小沢判決の全文は公開されていないので、NHKの判決骨子に従い、小沢判決の評価とそれを報道するマスメディアの姿勢を検証してみたい。

まず、小沢判決に対する評価であるが、他のメディアの引用は判決理由の原文から遠ざかった意図的なものが多く、判決理由を検証する上では不適切であるため、少なくとも他のメディアよりはマシに思える以下、引用はNHKのHPの判決骨子より行うこととする。
もっとも、小沢氏は判決全文を公表して、歪んだ形で判決内容が伝わらないようにした方が良いと個人的には思う(つまり、公開するということは小沢氏にとっても判決内容を歪めて有利な解釈ができないことを意味するが、無罪判決であることを考えれば、公開するする方がはるかに小沢氏の政治活動において有益であると思うが)。

1.公訴棄却の主張についての判断

まず、公訴棄却の主張に関する部分の判断につき、私見を述べたい。

公訴棄却の申立てに対する判断

〔公訴事実全部に係る公訴棄却の申立てについて〕
弁護人は、東京地検特捜部の検察官が、起訴相当議決を受けての再捜査において、石川を取り調べ、威迫と利益誘導によって、被告人の関与を認める旨の供述調書を作成した上、内容虚偽の捜査報告書を作成し、特捜部は、同供述調書と同捜査報告書を併せて検察審査会に送付し、このような偽計行為により、検察審査員をして、錯誤に陥らせ、本件起訴議決をさせたこと等を理由として、起訴議決が無効であり、公訴棄却事由がある旨主張している。
しかし、検察官が任意性に疑いのある供述調書や事実に反する内容の捜査報告書を作成し、送付したとしても、検察審査会における審査手続きに違法があるとはいえず、また、起訴議決が無効であるとする法的根拠にも欠ける。
また、検察審査員の錯誤等を審理、判断の対象とすることは、会議の秘密に照らして相当でなく、実行可能性にも疑問がある。
したがって、本件公訴提起の手続がその規定に違反して無効であると解することはできないから、検察官の意図等弁護人が主張している事実の存否について判断するまでもなく、公訴棄却の申立ては、理由がない。


ここで、判決が指摘しているのは、「任意性に疑いのある供述証拠」や「事実に反する内容の捜査報告書」といった違法証拠があり、それが検察審査会に送付されて、判断の基礎となったとしても、それが直ちに、検察審査会における手続違反に当たらないということである。

つまり、①検察審査会がたとえ、素人である一般市民により構成されているとしても、そこに出された証拠の違法性や信用力についても当然検討がなされるべきなのであって、それを踏まえて、検察審査会は検察の不起訴判断が相当であるのか、不相当であるのか、それとも起訴すべきとする起訴相当と判断するのかを職責とするのであるから、検察審査会の手続そのものに瑕疵があった場合は別として、そうでなければ、判断そのものが違法ということにはならないと理解しているようである。

そして、判決は、②審査員が適法な証拠だという誤解をした上で判断していたとしても、誤解をしていたかどうかについては、審査会における審議内容が秘密にされているのであるから、判断はできないと述べている。

この点、①の指摘は、まさにその通りというべきであろう。
逆を言えば、検察審査会の審査員に選任された場合には、検察が不起訴とした事案であるだけに、審査員も、証拠が違法である可能性も含めて証拠の評価し、審議することが要求されているということである。

公訴の提起については、検察官に独占させるという起訴独占主義の例外である強制起訴という制度からすれば、検察審査会員の職責がそれほど重いものであるという理解をするのは当然であろう。この制度が妥当であるか否かという立法論は置いておくとして、東京地裁の判決の理解は極めて妥当なものといえる。

次に、②の部分であるが、ここは賛否分かれるのではなかろうか。

起訴の判断における会議の秘密性ということを重視すれば、判決の通りの結論になろう。
しかし、会議の秘密ということのみを重視してしまうと、検察審査会の判断そのものを争う方法は実質的に無くなってしまうことを意味するのではなかろうか。

つまり、強制起訴された被告としては、自身の有罪・無罪を争う他なく、検察審査会の判断の適法性を争う手段としては、無罪判決を受けた上で、国賠請求をするくらいしかできないように思われる(最決22年11月25日民集64・8・1951により、行政訴訟による処分の取消訴訟及び執行停止の申し立てについては、不適法却下されているので、行訴による争いもできない。)。

もちろん、国賠については、処分の違法が国賠違法というイコールの関係ではないから、審査会員が、職務上の注意義務に違反して、違法な判断をしたという立証を原告が負担しなければならなくなる。

したがって、強制起訴された者は、無罪判決を目指す以外の方法はないことを意味する。

ただ、これは検察官の起訴の判断についても同じことがいえるのであって、特段今までとかわらないといえばそうであろうが、検察審査会が法律のプロにより構成されるものではない、いわば、素人集団であることにかんがみれば、その判断の違法性を争う手段が刑事での無罪獲得にしかないとするのは、強制起訴された者にとって酷な気がする。

〔公訴事実第1の1に係る公訴棄却の申立てについて〕 弁護人は、公訴事実第1の1の事実について、起訴相当議決がされておらず、検察官の不起訴処分もされていないのに、起訴議決の段階に至って、突然、起訴すべき事実として取り上げられていることを理由として、同事実に係る起訴議決には重大な瑕疵があり、公訴棄却事由がある旨主張している。 しかし、公訴事実第1の1の事実は、同第1の2及び3の事実と同一性を有するから、起訴相当議決や不起訴処分の対象にされていたと解することができる上、実質的にみても、捜査又は審査及び判断の対象にされていたと認められるから、起訴議決に瑕疵があるとはいえず、本件公訴提起がその規定に違反して無効であるということもできない。 公訴事実第1の1に係る公訴棄却の申立ては、理由がない。


次に、この判示部分であるが、この部分は、公訴事実の同一性を根拠にする判断である。弁護人としては、公訴事実第1の1の事実と同第1の2及び3の事実とは、同一性がないという前提の主張をしたのであろうが、それを裁判所は認めなかったということである。
ただ、この判決は、同一性を欠く場合には起訴決議が無効になりえることを認めている。

 

2.借入金に当たるかという点の判断

争点に対する判断 〔収支報告書の記載内容〕 平成16年分の収支報告書には、本件4億円は記載されておらず、りそな4億円のみが記載されている。 本件土地の取得及び取得費の支出は、平成16年分の収支報告書には計上されず、平成17年分の収支報告書に計上されている。

〔本件預金担保貸付、りそな4億円の転貸の目的〕
石川が、本件4億円を本件売買の決済に充てず、本件預金担保貸付を受け、りそな4億円の転貸を受けた目的は、本件4億円が本件土地の取得原資として被告人の個人資産から陸山会に提供された事実が、収支報告書等の公表によって対外的に明らかとなることを避けるため、本件土地の取得原資は金融機関から調達したりそな4億円であるとの対外的な説明を可能とする外形作りをすることにあった(このような本件預金担保貸付の目的を「本件4億円の簿外処理」という)。
石川が、本件4億円の簿外処理を意図した主な動機は、本件土地の取得原資が被告人の個人資産から提供された事実が対外的に明らかになることで、マスメディア等から追求的な取材や批判的な報道を招く等して、被告人が政治的に不利益を被る可能性を避けるためであった。

〔本件合意書の目的〕
石川が、本件売買契約の内容を変更し、所有権移転登記について本登記を平成17年1月7日に遅らせる旨の本件合意書を作成した目的は、陸山会が本件土地を取得し、その購入代金等の取得費を支出したことを、平成16年分の収支報告書には計上せず、1年間遅らせた平成17年分の収支報告書に計上して公表するための口実を作ることにあった(このような本件合意書の目的を、「本件土地公表の先送り」という)。
石川が、本件土地公表の先送りを意図した主な動機は、本件土地の取得が収支報告書で公表され、マスメディア等から追求的な取材や批判的な報道を招く等して、被告人が政治的に不利益を被る可能性を避けるためであり、これに加え、本件4億円の簿外処理から生じる収支報告書上のつじつま合わせの時間を確保することも背景にあった。

〔本件土地の所有権移転時期及び収支報告書における計上時期〕
本件土地の所有権は、本件売買契約に従い、平成16年10月29日、陸山会に移転した。
石川は、本件土地公表の先送りを実現するために、本件土地の売主と交渉したが、不成功に終わり、本件土地の所有権の移転時期を遅らせるという石川らの意図は、実現しなかったというべきである。
本件合意書は、所有権移転登記について本登記の時期を平成17年1月7日に遅らせただけであり、本件売買契約を売買予約に変更するものとは認められない。
陸山会は、平成16年10月29日に本件土地を取得した旨を、平成16年分の収支報告書に計上すべきであり、この計上を欠く平成16年分の収支報告書の記載は、記載すべき事項の不記載に当たり、平成17年1月7日に取得した旨の平成17年分の収支報告書の記載は、虚偽の記入に当たる。

〔収支報告書における本件土地の取得費等の計上時期〕
平成16年10月5日および同月29日、本件土地の売買に関して陸山会から支出された合計3億5261万6788円は、本件土地の取得費として、平成16年分の収支報告書において、事務所費に区分される支出として、計上すべきである。
これを計上しない平成16年分の収支報告書の記載及びこれを平成17年の支出として計上した平成17年分の収支報告書の記載は、いずれも虚偽の記入に当たる。

〔本件4億円の収入計上の要否〕
被告人が、平成16年10月12日、本件4億円を石川に交付した際、被告人は、陸山会において、本件4億円を本件土地の購入資金等として、費消することを許容しており、石川も本件4億円を本件土地の購入資金等に充てるつもりであった。
本件4億円は、陸山会の一般財産に混入している上、資金の流れを実質的に評価しても、その相当部分は本件土地の取得費として費消されたと認められる。
また、本件定期預金は、被告人ではなく、陸山会に帰属するものと認められるから、本件4億円が、被告人に帰属する本件定期預金の原資とされたことを理由に、借入金にならない旨の弁護人の主張は、採用できない。
本件4億円は、本件土地の取得費等に費消されたものと認められ、りそな4億円は、陸山会の資金繰り等に費消されているから、このいずれも被告人からの借入金として計上する必要がある。
したがって、本件4億円は、陸山会の被告人からの借入金であり、収入として計上する必要があるから、本件4億円を収入として計上していない平成16年分の収支報告書の記載は、虚偽の記入に当たる。


判決は、秘書の行為が虚偽記入行為に当たるとの認定をしている。
判決が陸山回の一般財産に混入していることなど客観的な事情から、帰属先を認定しているのは妥当であって、そこから、帰属先が陸山会であり、小沢ではないから、借入金に当たるという事実認定の結論も特段おかしいものではない。

 

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