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入社3年後離職率の公開、義務教育で労働法の授業を~安藤至大氏インタビュー回答編~

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インタビューに応える日本大学大学院准教授の安藤至大氏(撮影:野原誠治)
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BLOGOSと、「知」のプラットフォームSYNODOSがタッグを組んでお送りするインタビューシリーズ「SYNODOS×BLOGOS 若者のための『現代社会入門』」。前回は、日本大学大学院准教授を務める労働経済学者の安藤至大氏社のインタビュー「解雇規制を緩和しても、若者の雇用環境は改善されない―労働経済学者、安藤至大氏が語る"今後目指すべき働き方"」を掲載いたしました。今回は、読者からいただいた質問や意見に安藤先生が答える回答編をお届けします。 【BLOGOS編集部】

「管理職をクビにしないと新人が雇えない」状況はまれ

前回のインタビュー編につづいて、今回は回答編となります。よろしくお願いいたします。

寄せられた意見で目についたのが、「サボっている年配の社員はそれほどいないと思う」という部分に対する違和感や反発でした。「そうはいっても遊んでいる高齢者はいる!」というものです。  また、同じような感覚によるものだと思うのですが、人件費の総量の問題として、「管理職1人クビにすれば、新人3人雇える」という意見もありました。

解雇規制が緩和されても、実際には企業は年配の管理職を解雇せず、またたとえ管理職の首が切られても、それによって若者の雇用が増えることはないだろうと、安藤先生が考える理由を前回よりも詳しく教えていただけますか。


安藤氏:  まずサボっている高齢者がいるという件ですが、「サボる」というのはどのようなことを指すのでしょうか。私は、与えられた仕事を、本当ならこなせるのに、怠けてやらないことだと考えています。例えば、外回りの営業マンが喫茶店でコーヒーを飲みながら雑誌を読んでいるのはサボっていると言えるでしょう。最初に定義をきちんと述べなかったのは、私のミスでした。

それでは、与えられている仕事量が少ない状態はどうでしょうか。高齢者になり、若い人と同じだけの仕事はこなせない。しかし上司から割り振られた仕事は完成させている場合です。これはサボっているのでしょうか。

私はこれをサボっている状態だとは考えません。またこの場合に若者よりも高齢者のほうが高い給料受け取っていたとしても、それだけでは直ちに不当だとは言えないという点はすでにお話ししました。長期雇用の場合は、現在受け取っている賃金とその時点での貢献度が一致しないこともよくあることだからです。そして後払いは、年功賃金としてよく見られる性質の一つです。

私の主張は、まずサボっている高齢者がいると主張する人は多いが、本当なのかはデータがないのでよく分からない。そして現時点で給料をもらい過ぎのような人がいたとしても、それだけで不当かどうかは分からないということです。ここまでを今述べました。

さらには、実際にサボっている人がいたとして、それが労働者だけの責任とも言えないと考えています。

人を物に例えるのは良くないことかもしれませんが、例えば自家用車を買って、定期的なメンテナンスをせずに「走りが悪い!不良品をつかまされた!」というのは間違いですよということです。労働者の動機付けなどをよく考えて、人材の育成と活用をするのは雇う側の仕事なのです。

何度も言いますが、そもそも本当に人が余っているのであれば、ちゃんと手続きを踏めば整理解雇は可能です。またサボっている労働者に対しても、十分な指導を繰り返した末にどうしても従わないのであれば、普通解雇または懲戒解雇が可能なのです。

仮に皆さんが若手社員で、高齢者がサボっていると考えるのであれば、なぜ会社はその高齢者をきちんと働かせないのでしょうか。また解雇は手続きが煩雑だから現状では難しいとしても、なぜ待遇を切り下げないのでしょうか。その理由を考えてみる必要があるでしょう。

「管理職1人クビにすれば、新人3人雇える」という点については?

安藤氏:なぜ管理職をクビにしないと新人が雇えないと考えるのでしょうか。これは景気が良い企業と悪い企業とで分けて考える必要があります。

まず景気が良い企業では、無駄な管理職がいるかどうかとは関係なく新人を雇います。そもそも企業は、どのくらいの人員が必要になるかという先行き予想を考えて、採用計画を立てるのです。必要ならば雇うし必要なければ雇わない。それだけです。

そして景気が悪い企業は、人手が余っているため、新人を多くは雇いません。ここで仮に高齢者を解雇できたとしても、新たな雇用には結びつかないでしょう。

唯一あり得るのは、若い人手が足りないが、お金がないために雇えないケースです。このとき高給取りの高齢者を解雇できれば、お金に余裕が生まれて、雇用が発生する可能性があります。

しかしこのようなとき、お金の余裕を生み出す策は、解雇だけではありません。賃下げで対応することもできます。実際に、赤羽・中村(2008)(http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/11/pdf/044-060.pdf)では「バブル経済崩壊以降、企業の新卒採用抑制により若年労働者の需要が相対的に減退した。この外部労働市場の影響は、相対的に若年層の賃金を低下させる形で企業内賃金構造に影響を与えた。一方、同時に生じた生産性低下と企業内高齢化という問題に対して、企業は高齢層の賃金を相対的に下げることで応じた」としています。現状では、長期雇用の正社員をクビにするよりも、賃下げの方が容易です。そして実際によく使われているのです。このような対応まで考えれば、管理職をクビにしないと新人が雇えない、そして管理職をクビに出来れば新人を雇うという状況は、とてもまれなケースだと言えるでしょう。

平均的に見れば、若年層の雇用は、景気の善し悪しでほぼ説明できます。景気が良ければ多く雇われるし、悪ければ雇われない。そうなっています。株式会社ニッチモがWeb上で公表している『HR mics』のVol.12に分かりやすい説明が載っていますので、図表12とその説明を読んで頂ければと思います。

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