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ソーシャルゲームのすごい仕組み

ソーシャルゲームのすごい仕組み (アスキー新書 212)
ソーシャルゲームのすごい仕組み (アスキー新書 212)
  • 作者: まつもとあつし
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
内容紹介
伸び悩むゲーム業界の中で、唯一破竹の勢いを見せるソーシャルゲーム。業界の双璧のGREEとDeNAはそれぞれ3000万以上の会員を獲得し、高い収益率を維持し、急成長を遂げている。今なぜ若者が、このソーシャルゲームに夢中になっているのか?ソーシャルゲーム業界の成り立ちから従来のゲームビジネスとの違い、ユーザーの変化など、その人気の秘密を紐解く。また、ユーザーがアイテム課金やRMT(リアルマネートレード)にのめり込む様が、「パチンコ的」という批判もある業界の負の側面についても現状とその背景を探りながら、ゲームビジネスのあるべき姿を考察する。
 この新書を読んで、いまのソーシャルゲームの一般化とドル箱っぷりに、あらためて驚かされました。
 従来は、ソーシャルゲームは10代から20代の若年層のものというイメージが強かった人も多いはずだ。しかし、すでにその状況は一変している。

 2010年3月から2010年6月というごく短い期間での比較では、たとえば30代以上の層が40%以上を占めるなど、現在では幅広い年齢層にソーシャルゲームは受け入れられている。その拡がりは、従来、ゲーム専用機で遊んでいた人々を超えて進んでいるといってもいいだろう。
 如実な例は、コナミデジタルエンタテインメントが提供する「ドラゴンコレクション」だろう。すでに会員登録数は550万人を超えており、同じ「ドラゴン」を冠した『ドラゴンクエスト」のシリーズ第一作(1986年発売・約150万本)を上回っている。
 こうして、先に紹介した「ドラゴンコレクション」などのソーシャルゲームも提供するコナミデジタルエンターテインメントでは、2012年の3月期(第一四半期)にはついにソーシャルゲームの売上が、従来のパッケージゲームのそれを越えた。
 いつのまにか、ソーシャルゲームは、「若者のもの」から、「大人たちのもの」になってきているのです。
 実際に「ソーシャルゲームに、お金を使うことができる人」というのは、たしかに、ある程度の収入がある大人が多いでしょうし。
 それにしても、コナミの売上の半分以上がソーシャルゲームからになっていたなんて……

 コナミといえば、『パワプロ』『メタルギア』『ウイニングイレブン』などのコンシューマーの人気ゲームをたくさん抱える「老舗ゲームメーカー」のはずなのに。
 これだけ、ソーシャルゲームが「ゲームメーカーの屋台骨を支える存在」になってしまうと、ソーシャルゲームをほとんどやったことがない僕でさえ、「もしソーシャルゲームが流行らなくなったら、ゲームメーカーは軒並み潰れていくのではないか?」と不安にもなってきます。

 「ソーシャルゲームしかやらない人たち」は、ソーシャルゲームが下火になっても、携帯ゲーム機でゲームをするのかどうか?

 この新書では、「ソーシャルゲームとは何か」という基本的な定義から、その歴史、現状、ユーザーが「ハマる」理由、問題点、今後の課題まで、200ページあまりで簡潔にまとめられています。
 「この本で、はじめて知った!」というようなスキャンダラスなことは、書かれていません。

 しかしながら、ソーシャルゲームについて、短い時間で包括的な知識を得るためには、いまのところ良質な選択肢のひとつだと思います。

 ちなみに「あんな単純なゲーム」と思われがちなソーシャルゲームなのですが、実際は、かなりの手間暇がかけられています。
 多くのソーシャルゲームではチュートリアルが用意され、ゲームの基本的な進め方をまずは手ほどきしてくれる。その間、ネットの向こう側にいる運営担当者はチュートリアルの途中で離脱者(別のゲームや画面に移ってしまうユーザー)が出ないよう、そこでの説明文の一字一句や画面上のボタンの配置、画面切り替えの演出などに細心の注意を払っている。同様に、課金アイテムの売れ行きはもちろん、その利用状況などをデータベース上の様々な数値を見て、ゲームバランスを調整していく。そこで行われていることは「プレイヤーのゲームへのモチベーションをいかに刺激し、高め、維持していけるか」ということにつきるだろう。
 勝手に長いムービーがはじまって、プレイヤーを置き去りにしてしまいがちな「テレビゲーム」が多いなか、何よりも「常にプレイヤーをひきつけ、離さないこと」のみに特化したソーシャルゲームにハマってしまう人が多いのも、わかるような気はするんですよね。
 少なくとも、ソーシャルゲームの「ゲームバランス」は、見かけよりも、はるかにデリケートなものみたいです。

 この本を読んでいて、僕が考えさせられたのは、「ガチャ」についての話でした。
 本書執筆中にもこのガチャをめぐってある出来事があった。第一章でも取り上げた「アイドルマスター シンデレラガールズ」でのゲーム内イベントがそれだ。
 2012年1月末からはじまった「コンプガチャイベント」。「人は人、私は私」と銘打たれ、期間中、1回300モバコイン、すなわち300円を使ってガチャを「回し」、6人のアイドルカードすべてを揃えると、「ニートアイドル 双葉杏」のカードが手に入る、というものだ。

(中略)

 さて、6人のアイドルカードのコンプリートに果たしてどのくらい投資(課金)すれば、「双葉杏」が手に入るのか? というのが問題だ。ネット上にもそのシミュレーションを行うツールが登場している。ここではニコニコ動画やソーシャルゲームの考察を行っているgigir氏の「コンプガチャシミュレーター」を使って、実際6枚のカードを揃えるのに、いくら掛かるのか試してみることにしよう。
 単純計算すれば、6種類のカードのペアを作るために、1回もダブりが生じなかったとしても300モバコイン×6種類=1800モバコイン(=1800円)がかかることになる。もちろん確率的にそんなことは不可能に近い。そして、カードのペアが揃えば揃うほど、残りのペアの出現確率は低くなっていく。同じペアが何度も出現することになるからだ。
 前述のシミュレーターでは、5回分の料金で1回追加でガチャが回せるメニューが用意されている。もし、読者がWebにアクセスできる環境にあれば、ここでぜひ試してみてほしい。果たして何回ガチャを回してコンプリートすることができただろうか?
 gigir氏のシミュレーターでは、その集計結果も見ることができる。最安値でカードをコンプリートできた人で4500モバコイン(=4500円)となっているが、最高値は19万9500コインとなっている。Twitter上では、実際15万円以上をつぎ込んだ逸話が紹介されていたりするが、おそらく現実の結果にかなり即した内容となっているはずだ。中心は1万5000~3万5000円前後、といったあたりだろうか。
 「最初の数枚までは、意外を簡単にペアが組めるので、あっけない印象を受ける」そうなのですが、欲しいカードが出てくる確率は、集めれば集めるほど下がってくるのです。
 でも、プレイヤーは「もう少しでコンプリートできそうなんだから……」と、なかなか諦めきれない。
 そういう「人間心理」を、ソーシャルゲームはうまく利用して、「ガチャ」にお金をつぎ込ませているのです。

 コンプリートするには、平均1万5000円~3万5000円くらいかかります、と最初に言われれば、「ガチャ」に手を出す人はグッと減るはず。

 ところが、「確率」のことを意識せず、導入部の「何が出てもOK」の状況で楽観的になり、後半の「確率の罠」に多くのプレイヤーがハマってしまいます。
 あと一組だけなんだから、と。
 ただ、これはもう「射幸心をあおるソーシャルゲーム管理側」にも問題があるのと同時に、「実際の確率について、自分の頭で考えてみること」を忘れてしまったプレイヤー側にも問題はあるんですよね。
 こういうことこそ、高校あたりの数学でしっかり教えておくべきなのではないかなあ。
 いやまあ、宝くじとか競馬とか「確率だけでいえば、プレイヤー側が参加した時点で負けているギャンブル」が日本にはたくさんあって、みんながあまりに賢くなってしまっては困るのかもしれませんけど。

 ソーシャルゲームは、現時点では、「課金のパターンが限られている」こともあり、似たような内容のものばかりとなっています。
 メーカーには「単純すぎる」という批判にさらされる一方で、「難しく、奥が深いものにしてしまったら、『ソーシャルゲームらしさ』が失われ、間口が狭くなってしまう」という悩みもあります。
 そして、GREEやDeNAなどのメーカー側も、「子どもがソーシャルゲームで大金を使ってしまうことへの、世間の反発」を意識してきているようです。

 CMを観ていて、ちょっと驚いてしまうような超人気タレントを積極的に起用し、認知度とイメージのアップをはかってきた業界だけに、「マイナスイメージ」は致命傷になりかねません。
 なんといっても、「お客さんが興味を持って、クリックしてみてくれないと、はじまらない」のですから。

 業界側も自浄のアピールやこれまで家庭用ゲームの世界で活躍してきた有名ゲームクリエイターの投入など、イメージ的にも、ゲームの内容的にも「改善」を試みているのですが、これが「ジャンル」として定着するか、それとも「時代のあだ花」として、10年後に「ああ、そういえば、ソーシャルゲームなんていうのが流行った時代もあったねー」なんて懐かしまれるのか、いまがまさに、その「分水嶺」なのかもしれません。

 ソーシャルゲームについて、やみくもに批判するだけではなく、その可能性についても書かれている、非常にバランスがとれた新書です。
 むしろ、「ソーシャルゲームのことなんて、考えるだけ時間のムダ!」という人に、読んでみていただきたい一冊です。
 あと、「ガチャ」をやってみようと考えているプレイヤーたちにも。

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