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幸福途上国ニッポン 新しい国に生まれかわるための提言

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世界100カ国を10年かけて回っという著者が、各地域での経験をからめつつ、様々なアングルから“幸福度”を分析する。

経済力のわりに日本人の幸福度は高くないという話は、以前からわりと有名だ。実際、いろいろな調査を見ても、日本の幸福度は低迷している。

「長引く不況のせいだ」となんとなく思っている人もいるかもしれない。だが、実は1950年代からバブル期を通じて現在にいたるまで、日本人の幸福度はほとんど変わっていないのだという。日本人にとって、幸福とは何を意味するのだろう。ここから、本書の幸福度を巡る旅はスタートする。

まず、世界各国を比較してみても、格差と幸福度にはそれほどの相関関係は見られない。たとえば90年代前半の日本は世界で2番目に格差の小さな国だったが、134か国中62位に転落した2008年も、幸福度に変化は見られない。

逆に、強い相関関係が見られるのが、多様性に対しての寛容さだ。男女間の格差の小ささはもちろん、同性間の結婚まで認められているような国は、総じて幸福度が高い。多様性の意味するものは、「個人の選択の自由」である。

実際に統計を見ても、自主性と幸福度との相関関係は、所得と幸福度との相関より20倍もある。社会的地位や所得に関係なく、自分で自分の生活の管理ができる機会がある人のほうが、生活満足度が高いことも明らかになった。(中略)自分の意思で選択し、その選択に責任を持つという精神があれば、どのような人生を送っても幸福度は高い。結果が問題なのではない。どうやって生きるかが重要なのである。

その点、日本人は自分で自分の舵を取っていると言えるだろうか。

本書では本当に色々な調査結果が引用されていて、そこからは経済大国日本のもう一つの姿がくっきりと浮かび上がっている。たとえば、以下の質問に対してYESと答えた日本人の割合は、世界最低水準だ。

楽しい時間を過ごすことは重要か?

選択の自由はあるか?

国を誇りに思っているか?


つまり、日本人は、楽しい時間を過ごしてはいけないと思い、選択の自由があまりないと感じ、自らの意思をあまり反映できない人生を過ごしているということになる。

そして著者は、ドイツの社会心理学者エーリッヒ・フロムの言葉を引用しつつ、自己の自発的な行為が、より高い次元での精神的安定をつくりだし、世界との新しい絆をつくることが出来ると説く。「選択の幅が無い」とか「人生が一般勝負すぎる」という点については、恐らく多くの人がうすうす感じていることだと思われる。それを見事に一本の絵物語のように明快に解説してくれる良書だ。

日本が個人の幸福度を高めるためには、著者の提言するような社会個人主義を実現させるしかないが、それはどこかにあるボタンを押すことではなく、我々自身が変わるしかない。最後に著者の言葉を引用しておこう。

集団主義であるかぎりは、寛容な社会にはなりえない。協調性を強いることは「異質な個人を涵養しない」と同じである。

ここからは私見。実は大企業や労組が従業員の満足度調査をやると、たいてい上記のように「楽しくない、選択の自由が無い、子供には入社を薦めたくない」というようなゲンナリするような結果が出るものだ。

恐らく、この問題は雇用問題ともリンクしている。社会においても企業においても「やらされている感」から「自分で選択している感」にシフトさせることが、幸福度や満足度を向上させるうえでの目指すべき方向性だ。

規制とか正社員転換などという言葉の先に待っているのは、少なくなる椅子をめぐる「さらなる選択肢の少ない社会」でしかないだろう。

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