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「休眠口座への誤解を正していきたい」―休眠口座国民会議が創設

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3月24日に行われたシンポジウムの様子(写真提供:日本財団)
3月24日に行われたシンポジウムの様子(写真提供:日本財団) 写真一覧
今年2月から政府がその活用を検討した「休眠口座」。休眠口座とは、預金者の死亡などにより長機関にわたって銀行に死蔵されている銀行口座を意味する。これを預金者の権利を保護した上で、奨学金や貧困対策などに活用することを提言する「休眠口座国民会議」が設立され、去る3月24日に創設記念シンポジウム「休眠口座が新たなセーフティネットを創造する!」が行われた。当シンポジウムの模様を書き起こしでお伝えする。(取材・執筆:永田 正行【BLOGOS編集部】、韓国語翻訳:橋本 鮎子)

「国が国民の預金を取り上げる」ということではない


笹川陽平氏(日本財団会長):休眠口座の問題は、国民的なテーマです。日本の人口は1億2000万人ほどにもかかわらず、銀行の口座数は12億もある。ということは、国民一人あたり、10近く口座を持っているということになります。

議論するにあたって、第一の原則はお金を預けた人の権利であるということ。いつまで経っても、10年、20年経っても取りに行けば返してもらえる。ところが、残念なことに取りに行かないと、銀行がそれを収益としてしまう。時間がないので、多少端折っていいますが、もちろん取りに来た人には払い戻す、まだこれからも取りに来る人がいるかもしれまない。それでも郵便貯金までを含めれば、恐らく1兆円を超えるお金が存在するわけです。

若い皆さんに仮名というとわかりにくいのですが、今までは自分以外の名前で貯金をすることが、出来ていました。預金通帳と合った判子さえ持っていけば、預金を銀行から引き出すことができた。しかし、今はこれを持って行ってもダメなんです。自分の名前でなければ、身分証明書と名前が合わないと返してもらえない。ですから、「銀行はお返ししますよ」と言いますが、実質的には返してもらえない仕組みになってしまっているわけです。そういうお金が銀行の収入として利用されている。

国民一人一人に、権利の意識をちゃんと持って頂いて、議論をしながら、問題を共有して頂きたいと思っています。そして、これは私個人の考えですが、願わくば民間レベルできちっとした組織を立ち上げて、様々な手の行き届かない分野に使っていく仕組みを作るのが一番良いと思っております。最悪の場合でも国できちっと管理をして、国民のために使っていただきたい。

皆さま方の個人の少額のお金を国が取り上げる、ということではございません。転勤して、住所が変わった場合に、電車賃など取りに行く費用を考えると、1500円、2000円残ったお金を取りに行かない方が良いという場合もあると思います。それに先程申し上げました、他人の名前で預金しているものがありますから、12億も口座があるのです。これらをよく知って頂きまして、皆様方と有意義な会議にして頂きたいと思います。

駒崎弘樹氏(NPO法人フローレンス代表):私の方から簡単に、イントロを。私は元々NPO法人で、子育て支援の活動を行っておりました。こうした活動をしていく中で、支援を求めている家庭にお金を貸してくださるところがなかった。子供の入院やDVが原因で、引っ越さなければならないという時に、お金を借りることが出来ない。

韓国の先生とお話ししていたところ、韓国では休眠口座を使って、マイクロファイナンスの事業が始まるというのです。そこで「休眠口座って何だろう?」ということから調査を始めました。日本財団さんのバックアップもあり、このような会議を通して支援することになりました。

休眠口座は、10年経つと銀行の利益になる。もちろん何年経とうが私たちにお金を返してくれます。しかし、年間数百億円くらいずつ毎年生まれ、銀行の利益になっている。そのうちの一部は返還されていますが、残りは銀行の利益です。果たしてこのままでいいのか?もっと良い活用の仕方があるのでは?また、国民の権利権益をきちんと守りながらも、何かしらの事業に活用していくことはできないのか? そうした疑問を解決するための初めの一歩ということで、この国民会議は立ち上がりました。それでは、まず田中康夫先生に、お話し頂きたいと思います。

田中康夫氏(衆議院議員・新党日本代表): 私も学生時代に仕送りを受けていた口座ありました。その後社会人になる時に別の口座を作りました。ですので、学生時代の口座には、多分数十円とか数百円残っていると思います。でも口座の印鑑がどれだったかわからない。当時はその支店まで行かないといけなかったので、交通費を考えたら取りにいかない方がいいんじゃないか。

この休眠口座のお金はどうなっているのか。全国銀行協会を調べると、銀行の利益になると書いてあるのを知りました。金融庁の人に「毎年どのくらいそういうものがあるのですか?」と聞いたところ2009年秋の段階では、そうした調査は手元にない、あるいは行う用意もないと言われました。幾度かお願いをしたところ、2010年の夏くらいになってようやくでてきた。金融は医療や教育などの生存資本の一つであり、自然環境、あるいは交通機関などの社会基盤として社会的共通資本を構成しています。制度資本となる日本の金融機関の大半は、休眠口座預金を自らの収益として会計処理している。こうした処理は法律で定められたものではない

先日の質問指示書を受けて、朝日新聞が3月22日に記事を載せています。毎年800億円以上ある。これはJAバンクであったり、まだ調査の途中のものもある。一方で記してあるように、定期の郵便貯金というようなものは20年経てば国庫に納付されている。いわゆる民営化が行われた後も、法律でそのように定めているわけです。 

貯金も預金も利用者の側からすれば同じです。その点において、フェアでロジカルな仕組みでないと感じております。全国銀行協会会長、また三菱東京UFJ銀行の頭取でもあります永易さんは、私がこういう質問をして、報じられるようになってからの会見で休眠口座は一種の「フィクションだ」とおっしゃった。

なんでお金を扱う人がフィクションと言うのか。これは国民に言われれば。「いつでも戻します」と言っていますが、「維持手数料が掛かって大変だ」ともおっしゃっている。国が召し上げるのではなく、社会的共通資本の一環として、私たちの社会をより良くする手立てとして、使えないだろうか?というように笹川さんと同じ思いであります。

駒崎氏:鈴木寛さんにも来ていただいております。鈴木さんがかつて大学の教授をされていた時に、ボランタリー経済や地域の仕組みを研究されていたりもしています。「国民からネコババするのでは?」というリアクションもかえってきていたりする現在の状況について、ご意見をうかがえればと思います。

鈴木寛氏(前文部科学副大臣・民主党):この運動が本格化したのは駒崎さんにも入っていただいた「新しい公共推進円卓会議」です。

そこで駒崎さんから提言をされて、「これは素晴らしい」と。古川大臣も法務大臣になってすぐに、新しい公共円卓会議に参加されていました。私も松井さんも。古川さんが大臣になったからやろうよ。ということで、一挙に前に出ました。しかし、現在では多少誤解されている部分がある。休眠口座はあくまでご本人のものであります。しかし、十年経つとなぜか銀行のものになっていた。それをもう一回社会のものにしようという話です。少し残念なミスリードがあるのが現状です。

休眠口座は共有財なんです。国のものではありません。社会のものです。それを社会のためにどう使うか。誰のものかという議論ではなくて、活用の仕方、仕組みをみんなで知恵を出しあって熟慮熟議していこう。そういうキックオフになればと思っております。

私は神戸の出身です。1995年に阪神淡路大震災がありました。95年の震災は日本にボランティアという概念とムーブメントが起こるきっかけになりました。翌年に敦賀湾沖に重油の流出がありました。ここでボランティアの力というものが、発揮されました。その後私たちはNPO法というものを作る、国民運動の一員をアカデミアの立場としてやっておりました。そこでボランティアの皆さんが結社する、集う法的な人格であるNPO法人格が出来ました。これで10年、15年経ったわけです。日本のこうしたムーブメントをさらに大きなものにしていくためには、人が動く、集えるようになりました。しかし、これと同時に大事なことは資金の流れを新しく作っていかないといけない。

この件については与野党も協力して、寄付促進税制というものが出来ました。そして、個人がNPO活動あるいは、社会的な活動に対して寄付をした場合、所得控除ではなく税額控除が出来る。これはまさに、今日お集まりの皆さまの活動の成果であります。であれば、この税制を使ってどうやって、このお金を社会的な活動に回していくのか。

大きな原資として、休眠口座の運動があります。もちろんそれぞれの人たちが、それぞれの財布の中から寄付をしていくのも大変素晴らしいことです。しかし、今日のご案内のように、800億円というお金が眠っている。これをなんとか新しい公共活動のために使えないか?ということです。

新しい公共というのは、威力を発揮しつつあります。震災で官が出来ないこと、もちろん我々なりに頑張りました。「民」にも、とっても頑張って頂きました。しかし、民にも限界がある。政府の限界、市場の限界というものを埋める、コミュニティによる問題解決がある。新しい公共というのはコミュニティソリューションということだと思います。

お金に色はついていないんですが、やはりついている。いわゆる資本、株式会社、企業のお金というのは、利潤のために使われないといけません。それから税金というのは、広い意味での公器の公正のために使われないといけません。どちらかというと、平等を実現するために官のお金、税金は使われるべきです。私は新しい公共は、官ではない民による公共だと思っています。これはどうしても官が平等に偏りがちな中で、正義を実現するために新しい公共というものが必要だと思っています、そして威力を発揮していくと思います。

そのために正義のために使われる、原資というものをどうやって社会から集めてきて、本当に正義の実現が必要な場に届けていくのか。そういう新しい金融を作っていきたい。皆さんと頑張っていきたいと思います。

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