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書評:「若者はかわいそう」論のウソ

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「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)
海老原 嗣生
扶桑社

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ほぼ一章割いて批判されているので、反論しておこう。著者の主張は一見すると精緻だが、言っていることは実にシンプルだ。「非正規雇用が増えたのは、大学進学率が上昇し、大卒者にアホが増えたから」とくに頭数の多くてあんまり勉強もしてない団塊ジュニアは食いつめて当然というロジックである。

なるほど、たしかに大学進学率の上昇は“大卒者”の質を下げているとは思う。ただ、著者のロジックには致命的な欠陥がある。「じゃあ正社員のおっちゃんたちは、学生に文句垂れるほど勉強してたのか?」ということだ。

もし仮に、日本の労働市場にまったく規制がなく、新卒者と既存正社員の間で完全な自由競争が行われていたとしたら。現在30代の派遣社員は、派遣以外の道は無かったのだろうか。彼はやる気も能力も、本当にすべての正社員より劣っていたのだろうか。好況に挟まれ、先輩後輩に比べて不本意な就職先しかなかった30代の正社員は、本当にそれ以外の選択肢がなかったのだろうか。彼は本当に大学4年間、バブルやそれ以前に入社した先輩たちより自堕落に過ごしてしまった無気力学生だったのか。

そんなことはありえないだろう。50代一人を切るだけで新卒3人が雇えるのだから。新卒の三倍以上の生産性があるとはとうてい思えない。大手の社内には、世間話と雑誌整理だけで一千万近く貰っている正社員がゴロゴロしているが、彼らがそれだけ貰っている理由は、単に「景気が良い時に入社したから」に過ぎない。その一点のみで、「しょうがないよね、君たちは数が多いんだから」とすべての格差を正当化することは、断じて認められない。

要するに著者の主張は、「フリーター博士が増えたのは大学院を増やしたから。だから大学院を減らせばいい」という大学教授や、「司法試験合格者数が増えたから収入が減って弁護士の犯罪が増えたのだ。合格者数を以前のように減らせ」という宇都宮日弁連会長とまったく同じ。既得権100%温存で入口を締め上げるという典型的な年功序列的発想に過ぎない。雇用流動化論者が言っているのは、求職者と既存社員の間で公平な競争を実現しろと言う話で、割合がどうのという次元の話ではない。競争なくして、いかなる組織も社会も成長しないのだ。

ついでに言っておくと、著者はこうも言っている。

高齢者世帯は所得が低く、中央地で240万円、200万円未満が約4割となる。(中略)非正規対策も不要なわけではないが、圧倒的に優先順位が高いのが「高齢者問題」ということが見て取れないか?

仮に、鳩山さんが政界引退して、取材対応で年収200万程度の収入を得たとすると、統計上は上記の「可哀そうな老人枠」にカウントされてしまう。フリーターは自らの所得税で鳩山さんを養うべきなのか。この意見に素直にうなづける若者は、多くはないはずだ。

他には、「42歳で5割が課長になれる」というデータも誤り。データには“課長補佐”が入っているが、そもそも課長補佐って、担当部長や参事と同様、ほとんどはポスト不足をカバーするためのお飾りであり、部下もデスクもついていないなんちゃって管理職である。課長補佐になって「やった!俺も幹部候補だ!」と言っているおめでたいおじさんなんておらず、多くは自分の会社とキャリアを呪っているはずだ。

「最終的には7割超が役付きに出世できている」とも言っているが、役付きに係長(主任、リーダー) を含めちゃダメだろう。今どき電機なら20代で主任になれますよ。とりあえず「わが社で30年頑張れば、係長クラスにはなれますよ」と言って学生を募集してみることをおススメする。普通の人材はまず集まらないはずだ。

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