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ボツリヌス食中毒と食品分類

国内では、およそ5年ぶりとなるボツリヌス菌による食中毒が発生しました。この菌は嫌気性で瓶詰めや真空パックなど酸素の無い状態でも繁殖します。また、強い毒素を産生し、過去には多数の死者が出た事例もあります。*1

ボツリヌス食中毒:「あずきばっとう」食べ 鳥取の男女重体
岩手県は26日、宮古市の食品メーカー「ハニー食品」が製造した「あずきばっとう」を食べた鳥取県内の男女2人が、ボツリヌス食中毒を発症し、意識不明の重体になっていると発表した。ボツリヌス食中毒は治療が遅れると、死に至ることもあり、県は同社の製品を回収した上で、注意を呼びかけている。
毎日新聞 2012年3月27日
今回の食中毒事故を知った際に、私は一つ気になることがありました。詳しい事故の内容がまだ分からないのですが、推測を元に書いてみます。

今回の原因食品である、「あずきばっとう」は手に入らなかったのですが、類似の食品として、あんこ物である「つぶあん」と「ぜんざい」を購入し、そのパッケージを確認しました。

つぶあんぜんざい
表面f:id:ohira-y:20120328202018j:image:w300f:id:ohira-y:20120328202101j:image:w300
一括表示f:id:ohira-y:20120328204543j:image:w300f:id:ohira-y:20120328204541j:image:w300

よくみると、一括表示の内容が違います。右側のぜんざいには殺菌方法という欄があり、次のような記述があります。
殺菌方法 機密性容器に密封し、加圧加熱殺菌
これは、この製品が容器包装詰加圧加熱殺菌食品、いわゆるレトルトパウチ食品であることを示しています。容器包装詰加圧加熱殺菌食品は恒温試験*2や細菌試験が陰性という成分規格や厳しい製造基準を満たす必要があります。また、容器包装詰加圧加熱殺菌食品のうち、缶詰食品及び瓶詰以外*3 *4では
「食品を気密性のある容器包装に入れ、密封した後、加圧加熱殺菌 した旨」を記載する
とされています。*5 それは、気密性のある容器に真空包装されてる食品にもレトルト食品とそうではない食品がるためです。こうした気密性のある容器に入った食品についての関係を整理したものが次の図です。

f:id:ohira-y:20120328212651j:image:W500
容器包装詰加圧加熱殺菌食品と容器包装詰低酸性食品の関係

黄緑色の部分がレトルト食品ですが、それ以外の部分はそうではありません。その中でも特にpH4.6<かつAw 0.94<という部分は「容器包装詰低酸性食品」と呼ばれています。

私は、今回の「あずきばっとう」が、この「容器包装詰低酸性食品」に該当するのではないかと考えています。

厚生労働省は、この「容器包装詰低酸性食品」についてボツリヌス食中毒対策を呼びかけています。
容器包装詰低酸性食品に関するボツリヌス食中毒対策について
1 容器包装詰低酸性食品の定義
容器包装に密封した常温流通食品のうち、pH が 4.6 を超え、かつ、水分活性が 0.94 を超えるものであって、120°4分間に満たない条件で殺菌を行ったもの。

殺菌は、容器包装に詰める前後を問わない。
2 容器包装詰低酸性食品によるボツリヌス食中毒の防止対策 容器包装詰低酸性食品の原材料の処理及び当該食品の製造において、以下の (1)又は(2)に示す方法により、1当該食品中のボツリヌス菌を除去する、 2ボツリヌス菌の増殖を防止する、又は3ボツリヌス毒素の産生を防止する、

のいずれかの措置を講じること。
(1)中心部の温度を 120°で4分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法での殺菌
(2)冷蔵(10°以下)保存
なお、(1)又は(2)以外の対策を講じる場合については、科学的知見に基 づき、ボツリヌス食中毒防止対策を考慮した適切な常温流通期間の設定を行う 等、(1)又は(2)と同等以上の措置を食品等事業者自らの責任において講じること。
なぜ、pH4.6と水分活性0.94という条件が入るのかというと、その条件に該当する場合はボツリヌス菌の増殖の可能性があるからです。そのあたりの詳しい説明はこちらをごらん下さい。

今回の原因食材のpHや水分活性、また保存方法と賞味期限がどうなっていたのかはわからないのですが、皆様におかれましては、商品の一括表示において「期限表示」と「保存方法」を必ずセットで確認すると共に*6、調理方法の指示(加熱の必要性の有無など)についても、良く確認してから保存・喫食をお願いします。



*1:からしれんこんによるボツリヌス中毒事件の概要 http://idsc.nih.go.jp/iasr/CD-ROM/records/05/05702.htm

*2:容器包装のまま35.0°・14日間保持し、容器包装の膨張の有無又は内容物の漏えいの有無を観察する試験。容器包装の膨張又は漏えいを認めたものは、当該容器包装詰加圧加熱殺菌食品中で発育し得る微生物が陽性であるとみなされる。

*3:いわゆるレトルト食品

*4:缶詰めや瓶詰めの多くも、この容器包装詰加圧加熱殺菌食品になります

*5:食品衛生法に基づく表示について 平成21年9月17日付 消食表第8号

*6:この2つは、私が消費者向けの食品表示について話す際にアレルギーに次いで重要な安全情報と伝えている部分です

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