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対北めぐり米韓に亀裂 制裁解除示唆、南北軍事合意に米不満 現地メディアからも失望の声

The White House / flickr

 韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相が10日、北朝鮮に対する制裁解除を検討していると述べた。これに対し、「最大限の圧力」を対北戦略の中心に掲げるアメリカが激怒している。米メディアの一部は、既に「アメリカは韓国というパートナーを失った」「圧力路線は失敗しつつある」などと、韓国の“裏切り”に強い失望感を示している。

◆「勝手にやらせはしない」とトランプ大統領が激怒


 康外相は10日の国会で独自制裁措置の解除について問われ、「関係官庁で検討中だ」と述べた。あくまで韓国が独自に行っている制裁についてのことで、同外相は国連制裁には触れていない。しかし、アメリカでは文在寅(ムン・ジェイン)政権がアメリカ主導の国連制裁の枠組みを抜け、独自に制裁解除に踏み切る意思の表れだと受け止められている。米ニュースサイト『Vox』も、「韓国の対北制裁の多くは国連が行っているものと重なっているため、それを見直すということは、単なるポーズ以上のことを意味する」という表現で、事実上アメリカと国連に反旗を翻す発言だとしている。

 トランプ大統領もすぐに反応。「我々の許可なくやらせはしない。彼らは我々の許可なしでは何もしない」と語った。ワシントンの政府関係者の間からは、北が非核化するまで「最大限の圧力」を決して緩めはしないという大合唱が起きているという。トランプ大統領は、北朝鮮の金正恩委員長と会談し、個人として良好な関係を築いた後も、制裁解除は非核化とセットだという姿勢を崩していない。今回も「私も解除したいのはやまやまだ。しかし、そうするには何か得るものがなければならない」と述べている(英紙ガーディアン)。

 こうした米側の強い怒りの反応を見て、韓国側も少しトーンダウンしたようだ。康外相は、「制裁解除の問題は、南北関係全体の状況を見ながら検討されるべきだ」と、後にフォロー気味の発言をしている(Vox)。各主要紙の社説など、韓国メディア内にも拙速な制裁解除の動きを批判する論調が出ている。

◆韓国の裏切りが圧力路線崩壊のダメ押しになるか


 Voxは、韓国が独自制裁解除を実行すれば、米韓関係に大きな亀裂が生じるとしている。「韓国が隊列を乱すようなことをすれば、アメリカは信頼に足るパートナーとは見なさなくなるだろう。一方の韓国の文政権も、トランプ政権を北朝鮮に対して攻撃的すぎると見なし、アメリカを無視してハト派の道を歩み続けるかもしれない」

 米タフツ大学フレッチャースクールの朝鮮半島専門家、ソン・ヨンリ氏は、韓国の独自制裁解除の動きは、大局的には韓国の左派政権が続けてきた親北路線の延長線上にあるとVoxに解説している。同氏はそれを示す例として、韓国の“前科”を挙げる。1998年から2008年にかけて、韓国は国際社会の数多くの制裁をよそに、北に80億ドルの経済援助を行った。その約半分は、文現大統領の「ボス」である盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代に拠出されたものだ。つまり、文政権は左派政権に受け継がれてきたいわゆる「太陽政策」の一環として、制裁解除を考えているという見方が成り立つ。

 トランプ政権の「最大限の圧力」路線は、今回の韓国の動き以前からつまずきを見せているという見方も多い。6月の米朝首脳会談の後、雪解けの兆しが見え始めると、表向き国連制裁に歩調を合わせてきた中国とロシアが、すかさず制裁を緩め、北朝鮮との貿易を再開したとVoxは指摘する。康外相発言があった10日、ロシア外務省は、前日に行われたロ中朝の3ヶ国次官級協議を受け、北朝鮮への制裁解除を求める共同声明を発表した。経済制裁を核放棄に結びつけるために、抜け道なき厳しい制裁で他に選択肢を与えてはならないというのが、トランプ政権の考えだ。そのためには最大の支援者である中国やロシアの協力が不可欠だったが、Voxは中ロが離脱しつつある現状を見て、「最大限の圧力」路線は既に棺桶に片足を突っ込んでいると見る。そして、「韓国が間もなく、棺に最後の釘を打ち込むかもしれない」としている。

◆ポンペオ国務長官が康外相に直接不快感を示す


 康外相は制裁解除を示唆したのと同じ日に、9月の南北首脳会談で締結された軍事合意を巡り、ポンペオ米国務長官が不快感を示したことも明かした。米メディアでは、これも米韓関係の亀裂を示すものだと報じられている。

 先の文大統領と金委員長の会談では、南北国境の非武装中立地帯での軍事演習を中止し、飛行禁止区域を設けるなどの軍事合意が交わされた。ポンペオ国務長官が康外相との電話会談でこの件について激怒したという報道が韓国メディアなどで取りざたされていたが、その真偽を聞かれた康外相は、「(ポンペオ氏は不快感を)示した。強く表明したとは言わないが、十分に事前に説明されなかったことへの不満を示した」と答えた。

 米ワシントン・エグザミナー誌は、ポンペオ氏が南北軍事合意に不快感を示したことに対し、社説で「異議を唱えたことは称賛に値する」と強く支持している。同誌は「韓国は、演習の中止によって不意の軍事衝突のリスクが減り、緊張が緩和されるとしている。しかし、それは間違っている」と一刀両断。軍隊の能力と即応力維持に不可欠な演習を放棄するのは、当の韓国軍にとっても自殺行為だと指摘する。社説はこう結ばれている。「文政権は北朝鮮が望むままに与えるのが最良だと判断した。アメリカの強硬路線の交渉戦略は今、韓国というパートナーを失った」

Text by 内村 浩介

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