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“獣になれない”とはどういうことか? ドラマ #獣になれない私たち 初回レビュー

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かつて、動物から人間を区別する定義を「労働」であると記した偉人がいた。
ところが、働きすぎると思考がパンクし、精神を病んでしまい、行動が衝動的になっていく。動物から人間を区別したはずの労働なのに、それをしすぎると今度は社“畜”になってしまう、この何たる皮肉!

ぼくらは本当に動物でなく人間なのだろうか。
新垣結衣主演、野木亜紀子脚本の『逃げ恥』コンビによる待望のドラマ『獣になれない私たち』の第1話は、そんなことを突きつける。

新垣が演じるのは、ECサイト制作会社に務め、ワンマンな豪腕社長にまるで小間使いのようにこき使われる営業アシスタント。

人の良さから同僚のカバーにも回るが、そのたびにまるで自分のことのように社長に詰められる。第1話では、人の良さからなんでも引き受けてしまった晶が、パワハラとセクハラのダブルコンボを食らい、限界まで追い詰められていく様が描かれる。

けれど、晶はそのあと苦痛から逃れるための「衝動」には走らない。

駅のホームで電車が来る間際、あと一歩前に進めば…というところで踏みとどまる。クラフトビールバーで酔っても、顔見知り程度の男=松田龍平演じる恒星と一夜を過ごしたりなんかはしない。そして、何もかもほっぽりだして「辞めてやる」と会社に辞表を提出もしない。

そのすべては「衝動」的なものであるが、晶はそれらを回避する。

翌日、晶はそれまでにない、真っ黒なスーツに身を固めて会社に現れ、ワンマン社長に対して「これ、私の業務内容の改善要求です」と突きつける。

人間と動物の違いは労働だけではない。自らの意思で「変わること」「変わろうと努力すること」ができるのだ。

けれどもそれは、「獣にはもう戻らない」ことを意味する。

疲れ果てた晶があるところで、「今は恋がしたい。誰かに恋をして、すごくすごーく好きになって、なれたら、新しい恋ができたら、何か変わるのかな」と独り言つ。

でもそれは、単純に恋愛で快楽を求めているわけではない。晶の言葉には「恋愛していれば嫌なことを忘れられる。そんな生きものであったら楽なのに」という諦めのニュアンスも含まれている。

ぼくらはもう、衝動に身を任せても何も解決しないのをわかっている。もうそんなの終わりにしようじゃないか。獣じゃあるまいし。
これから『獣になれない私たち』が描こうとしているのは、そんな人間の尊厳をかけた戦いなのかもしれない。

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