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エゴサーチと意識的な共有:ソーシャルメディアはプライバシーを守るのか



Googleは3月より新しいプライバシーポリシーを適用しました。その変更内容が論議を呼んでいます。

特に大きな問題となっているのが、Google検索、YouTube、Gmail、Google+、Googleマップなどのサービスに加え、端末やブラウザで使われているデータがまとめて管理され統合的に利用されることなどが盛り込まれていることです。EUなどが適用の延期を求めるなどしています。

Googleの新しいプライバシーポリシーについて、ユーザーの視点からみたメリットとデメリットを簡単に整理すると、以下のようになります。

メリットとしては、複数のサービスを一つのアカウントで横断的に利用できたり、複数のサービスのデータを使って個人にパーソナライズされた情報を得ることができるという点があります。

一方でデメリットとしては、すべてのデータが統合的に管理されることで、Googleに自分のあらゆるデータが蓄積されることへの不安や、外部からの攻撃があった場合のリスクへの不安があります。

ただし、Googleは回避のためにログインしないで利用する方法を用意していますし、各種設定を変更することで、Googleに送信するデータを最小限にすることができます。

今回は、サービスデータを統合することの不安の背景にある、ユーザーのWebサービス利用時の心理について、GoogleとDiggがそれぞれ発表している二つの研究調査をもとに考えてみます。

エゴサーチと検索結果の追加データ表示とプライバシー

Googleが先日「Vanity or Privacy? Social Media as a Facilitator of Privacy and Trust(虚栄かプライバシーか?プライバシーと信頼のファシリテーターとしてのソーシャルメディア)」という研究レポートを発表しました。

このレポートは、Web検索とソーシャルメディアの観点から見たプライバシーについて、二つの調査データを元に論考しています。2つの調査データを要約すると以下の通りです。

エゴサーチとオンライン上の評判

Googleなどの検索エンジンを使って、自分の名前を検索することを「エゴサーチ」と呼びます。一般的に自分のWeb上の活動を確認したり、他の人がオンライン上で自分のことに言及していないかどうかをチェックするために行われます。

調査では、エゴサーチをする人ほど、オンライン上の評判を気にかけているというデータを紹介しています。エゴサーチをしない人のうち、約50%がオンラインの評判を気にしていないのに対し、エゴサーチをする人は、約70%がオンラインの評判を気にしているとしています。

レポートでは、エゴサーチにより外部からの自分の評判を知ることは、間接的にプライバシーの問題(意図しない情報が出ていることの確認)でもあるとしています。

検索結果の追加情報が与える影響

もう一つの調査は、検索結果に「Facebookの「いいね!」(例:600人がいいね!と言っています)」「記事の人気度(例:ニューヨーク・タイムズで一番人気の記事)」という追加情報がある場合と、ない場合、閲覧者の行動にどういう影響を与えるかというデータです。

結果は、人気度がわかる記事は、記事やトピックに最も興味を持たれます。一方、Facebookの「いいね!」のある記事は、最もブックマークされやすく、シェアされやすいという結果になっています。

この結果から、「いいね!」の数などのように集約されたものも含め、ソーシャルメディア上のデータは、信頼性をあげエンゲージメントを高めるとしています。

このデータについては、「ウェブマスターツールの+1 統計情報:Google+でCTR3%向上」という記事で紹介したように、Social Media Experienceの場合も、友人の+1が検索結果に表示されるかどうかが、検索結果のクリック率に影響していることからも納得できるものです。

レポートでは、検索結果にソーシャルな追加情報が付加されることは、よりよい自己表現を可能にし、意識的なシェアにもつながるとしています。

研究の結論

レポートでは、これらのデータを元に、オンライン上のデータが統合されることで個人のオンライン上の活動がそのまま自己表現になるという気づきを与え、結果として意識的なシェアをするようになるとしています。

またソーシャルメディアがプライバシーにおいてプラスになるものだということはできないものの、ソーシャルメディアを介してやり取りしながら、プライバシーと信頼をサポートするようなソーシャルメディアシステムの設計は可能だとしています。

研究レポートは、上記のような論旨でまとまっています。ソーシャルメディアが評判に影響すること、意識的なシェアにつながることは実感としても納得できるのですが、そのこととプライバシー関連との関係性についてはもっと異なる視点からの分析が必要であるように感じます。

Diggの調査データ:ブックマークされる情報とシェアされる情報の違い

ソーシャルブックマークサービスであり、ニュースアグリゲーターでもあるDiggは、FacebookやTwitterの勢いに負けている印象がありますが、2012年の1月にはPVが35%も伸び、これは2010年10月以降で最高だったことを発表しました。(People like Chicken Nuggets & Other Things We Learned from Facebook)

これは、DiggがリリースしたFacebook向けのアプリであるDigg Social Readerによって、ユーザー読んだ記事がFacebook上でシェアされて、そこからのトラフィックが67%増加したことが影響しています。Digg Social Readerの詳細は後述しますが、このアプリのソーシャル機能を「オン」にすると、開いた記事が自動的にFacebookのタイムラインにシェアされます。「オフ」にしていれば自動的にシェアされることはありません。

Diggは、これまでもDigg(ブックマーク)、いいね!、ツイート、LinkedIn Shareなどのデータを読者からの記事の反応と捉えて分析していました。今回のFacebookアプリによって、ユーザーが自分のタイムラインに表示させた記事、読んだ記事、Diggした記事、コメントした記事、Diggにサブミットした記事を分析することができるようになりました。

この調査結果はTechCrunchでも取り上げられていました。しかしこちらの記事では、Facebookでは見栄を張ったり自分をよく見せようとして、Facebookで記事を選んでシェアしているということが書かれていますが、Diggの記事では単純に見栄だけが理由ではないように読み取れます。

Diggの分析では、Facebookのタイムラインでシェアする記事は、「パーティや同僚とお茶を飲みながら話すときのような話題」であることを指摘しています。タイトルは非常に無難で、政治や宗教など議論の種になるようなトピックは避けられています。

1月の場合は、SOPAの問題、iPhoneとiPadの人気アプリ、15年間チキンナゲットだけを食べ続けた少女の話などが、多くシェアされました。

では、ソーシャル機能をオフにして読まれた記事、つまりFacebookにシェアされていない記事はどんな記事だったのでしょうか。Diggはソーシャル機能をオンにした状態で読まれた記事、オフにして読まれた記事を比較したところおもしろいことがわかりました。オフにした状態で読まれた記事のうち14%がエンタテインメント記事を読でしたが、オンにした状態では4%以下となりました。また、政治的な話題も読まれた記事全体の10%でしたが、実際にシェアされたのはわずか2%でした。

Diggは、Facebookでシェアされるトピック、シェアされずに読まれる記事の傾向の違いは重要で、「新しい記事を読む習慣」を考えるきっかけになるとしています。

つまり、自動的にシェアされることが分かっている場合は、トピックの選び方が慎重になることがわかります。

Digg Social Reader:無意識に記事が共有されるので意識的に記事を選択する

ここで、Digg Social Readerの動きをみてみましょう。

FacebookからDiggのアプリを検索してアクセスすると、Facebookの認証画面、アプリの許可画面が表示されるので許可し、Facebookに追加します。

Diggから記事を選んで閲覧すると、画面にツールバーが表示されます。「Social:On」の状態だと、開いた記事がそのまま「読んだ記事」としてタイムラインに追加されます。

「Social:OFF」にすれば記事は共有されません。ON/OFF機能は、他のFacebookアプリのソーシャルリーダー(The Washington Post Social Readerなど)にはない機能です。

FacebookのOpen Graphアプリを使うと、Web上の読書体験が「無意識」に共有されるため、記事選定の時点で「意識的」な選択がされると考えられます。

Diggの調査データからわかったように、シェアされる記事が「無難な話題」が多いのは、Diggは様々なサイトの玉石混交の記事が掲載されるため、興味本位のクリックがきっかけで議論を巻き起こすようなことになったり、軽蔑されたりすることを防ぎたいという意識が働いていると考えられます。

ソーシャルメディアごとの役割と連携による淘汰

さて、Googleの研究レポート、Diggの調査データを見て気づくことが、「意識的な共有」というユーザーの習慣です。ソーシャルメディアの種類やコンテンツの内容によって、人は情報発信を制御していることがわかります。

そうした状況が、ユーザーがソーシャルメディアになじむ前からあったサービスの利用データが統合されるという、Googleのポリシー変更が不安を起こす要因の一つになっています。

国内でも、ソーシャルメディアが普及する以前から人気のあったサービスが、Facebookなどと連携する機能を拡張している傾向があります。

例えば、はてなの新しいインタフェースでは、Facebookの友達のブックマークが表示されるようになったり、ブックマークした記事をFacebookにも投稿できる機能が用意されましたが、今後ユーザーが連携機能を積極的に活用するのかは未知です。

Facebook上のシェアは「いいね!」という言葉であらわされるように、比較的ポジティブなものが多い傾向にありますが、はてブはポジティブもネガティブも両方ブックマークされる要因になっています。そもそもブックマークは自分の備忘録の側面が多く、コミュニケーション手段のシェアとは違う使い方をしているユーザーが多いようにも感じます。

こうしたメディア特性の違いがあるのに、連携機能を用意してしまうと、結果として弱いほうのメディアの個性がなくなり、強いものにひっぱられてしまうのではないかと思います。

まとめ:人の情報収集、共有行動の新たな習慣

ソーシャルメディアが普及するに連れ、ユーザーの情報収集方法は、少しずつ変わってきています。具体的には大手のメディアなどからの情報を見に行くだけでなく、友達や知人、フォローしている人がシェアした情報も見るようになっています。今回紹介したデータからは、その次のステップとして、シェアする情報の選別やクリックする情報の選別にソーシャルメディアが影響するようになることが感じられます。

ソーシャルメディアにおいて、プライバシーの問題は切り離せません。公開していく情報が積み重なってその人の信頼性を上げることがある一方で、下げることもあります。また、Webサービスを介して送信したデータは、データとして各サービス提供事業者に蓄積されていることも事実です。

こうしたプライバシーの問題が意識されるにつれ、サービスによって情報の消費活動が変わること、シェアされるコンテンツの特性などが変わってくるでしょう。

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