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相撲協会が"貴乃花の政界進出"を恐れる訳

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■きっかけは横綱・日馬富士による殴打事件だった

「貴乃花が安倍首相と極秘に会い、来年夏の参議院選挙に出る」

こんな噂が永田町を駆け巡っているそうだ。にわかには信じられないが、この話に「相撲協会への意趣返し」という意味合いが付け足されると、若干の真実味が加わってくる。

貴乃花と八角理事長が牛耳る日本相撲協会との「遺恨試合」の経緯を少しさかのぼって見てみたい。

きっかけは昨秋に起きた横綱・日馬富士による貴ノ岩殴打事件だった。

2018年9月25日、日本相撲協会に退職届を提出し、記者会見で厳しい表情を見せる貴乃花親方(元横綱)(写真=時事通信フォト)

現場となったのは鳥取市内にあるラウンジ「ドマーニ」。その場で白鵬が照ノ富士と貴ノ岩に説教している際中、貴ノ岩がスマホをいじっているのを見て日馬富士が激怒、ビール瓶やゲーム機のリモコンなどで殴り、ケガを負わせたのだ。

『週刊新潮』(10月11日号)によると、それに至る伏線があったという。昨年初場所で白鵬は貴ノ岩に金星を献上しているが、その前夜、白鵬のマネージャーが貴ノ岩に何度も「怪しい電話」をかけていた。八百長を頼んできたのだという説がある。

金星を挙げた貴ノ岩は、「俺はガチンコで横綱・白鵬に勝った」と、行きつけの錦糸町のモンゴルバーなどで吹聴し、それが白鵬たちの耳に入ったというのだ。

■なぜそこまで「告発状の取り消し」にこだわるのか

事件後、なるべく穏便に収めようとする相撲協会と、警察に被害届を提出して事件の徹底解明を求める貴乃花親方との間に、深い亀裂が入った。

貴乃花は、警察の捜査を優先したいと、相撲協会の危機管理委員会による貴ノ岩の事情聴取を拒否した。そうした貴乃花の姿勢が問題になり、協会の理事を解任されてしまう。

貴乃花も反撃に出る。今年の3月9日、事件に対する相撲協会の対応について問題ありと、内閣府に告発状を提出したのである。だが、その後すぐに、弟子の貴公俊の付け人への暴力沙汰が表に出て、貴乃花は告発状を取り下げざるを得なくなってしまう。

相撲協会側はそれでも矛を収めず、告発状の内容が事実無根であったと認めるよう、貴乃花に圧力をかけ続けるのだ。

なぜそこまで告発状にこだわるのだろうか。『アサヒ芸能』(10月11日号)は一つの「仮説」を提示している。「告発状には相撲の根幹を揺るがすタブーについても触れられていた」(スポーツジャーナリスト)というのだ。

■両者が絶対に引けないチキンレースへ

「その中には過去の協会の不祥事として、弟子へのかわいがり、野球賭博、そして最大のタブーたる八百長に関しても記述があったようです。(中略)協会としては税制上の優遇措置が受けられる公益財団法人の立場を取り消されるおそれがあるため、なんとしてでもこの告発状の存在を抹消したかった」(相撲部屋関係者)

その八百長の温床になっているのが、モンゴル人力士たちが集まって飲み合う「モンゴル互助会」だと貴乃花は考えているようである。

現役時代、ガチンコ相撲で21回の優勝をした貴乃花としては、絶対見過ごすことのできない「悪習」である。

告発状に書いたことは全部真実だと主張する貴乃花と、何が何でもそれを撤回させたい相撲協会とのガチンコ勝負は、両者が絶対引けないチキンレースの様相を呈していくのである。

■臨時年寄り総会で2時間ものつるし上げがあった

変化が出たのはこの夏だった。稽古場で貴乃花が倒れ、救急車で病院に運ばれ緊急入院してしまうのだ。幸い、すぐに回復したが、元大横綱も46歳。病院のベッドで来し方行く末を考えたのではないだろうか。

9月に入って「貴乃花が引退する」という情報が流れ始めたという。

日馬富士殴打事件以来、貴乃花側に立っていい分を載せ続けてきた『週刊文春』(10月4日号、以下『文春』)は、この情報をつかんでいたようである。9月25日の引退会見が行われる前日、文春の記者が貴乃花に「相撲協会を辞めるのか」と問いかけていた。

『文春』によると、「平成の大横綱を退職に追い込んだのは、日本相撲協会による“搦め手”の凄まじい圧力だった」。弟子の不始末によって告発状を取り下げた経緯を報告した臨時年寄り総会で、協会を混乱させたとして貴乃花への怒号が飛び交い、2時間ものつるし上げがあった。

だが、貴乃花は不始末を起こした弟子が相撲を続けられるよう、ひたすら頭を下げ続けていたという。

■メディア側の弱腰が、貴乃花を追い詰めていった

さらに協会は、あからさまな貴乃花排除工作を仕掛けてくるのだ。6月に貴乃花は自分の部屋を自ら潰して無所属になっていたが、「7月の理事会で、全親方は角内にある5つの一門のうち、いずれかに必ず所属しなければならない」と決め、従わなければ、協会員の資格を失うと、ひそかに決めたのである。

相撲協会側は、「一門の位置付けを明確にし、ガバナンスやコンプライアンスを強化するため」と、取って付けたような説明をしているが、下心は見え見えである。

それも、貴乃花が会見で話さなければ、表面化しなかったという。相撲記者たちは知っていたのだろうが、どこも書かなかったようだ。

『文春』(10月11日号)によれば、大横綱・貴乃花が引退するというのに、テレビ局は貴乃花の過去の映像を使わなかった。理由は「協会の許可が必要だから」だというのだ。

「協会と関係を悪化させてもいいことは何もありませんから」(テレビ局関係者)

今年2月に貴乃花の独占インタビューをやったテレビ朝日に、協会は猛抗議したそうで、今も出入り禁止が続いているという。こうしたメディア側の弱腰が、協会の理不尽なやり方を許し、貴乃花を追い詰めていったことは間違いない。

■弟子たちまでターゲットにされたら、引退するしかない

貴乃花と弟子を全員受け入れる条件は、「告発状が事実無根だということを認める」ことだと、ある親方からの圧力があったと、会見で貴乃花は語っている。

『文春』の貴乃花インタビューによれば、“圧力”をかけてきたのはかつて盟友だったが、いち早く二所ノ関へ復帰して貴乃花を捨てた阿武松親方のようだ。ただし『文春』の直撃に阿武松は、「それは絶対ない」と否定している。

貴乃花たちを受け入れてくれる一門探しは難渋した。有力視されたのが元日馬富士が在籍した伊勢ヶ濱一門だったが、白鵬を擁する宮城野親方の反対でまとまらなかったという。

9月27日に開かれる理事会までに決まらなければ、廃業に追い込まれるかもしれない。

貴乃花が下した最終決断は、弟子を引き取ってもらって、自分は相撲界から身を引くということだった。『文春』で貴乃花はこう語っている。

「私一人なら、ただ耐え続ければよかったんですけどね。でも、弟子たちまでターゲットにされたわけですから。このままだと今までのように相撲が取れなくなってしまうと。うちの子たちは何としても守らなければいけません。そのためにはもう、自ら身を退くしかありませんでした」

だが、相撲協会・八角理事長に対する批判精神はいささかも鈍ってはいない。

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