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「半分、青い。」はんぱなかった永野芽郁の「目の演技」

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最終回もじわっとした

 9月29日(土)に最終回を迎えた朝ドラ「半分、青い。」

 放送後、早くもロスに陥ってしまった。

 このドラマをめぐっては、評論家らが「展開がハチャメチャすぎる!」とか「ダメダメ女の主人公に全然共感できない!」など厳しい声も聞く一方で完全にハマってしまって、毎回の放送を楽しみにしていた人間も多い。

 筆者はテレビ番組については報道の分野はうるさいが、ドラマは専門ではない。だが、テレビ番組は大好きで放送批評誌を毎月出版している。つまり、番組批評が仕事の何割かを占める人間ではあるのでそういう立場で「半分、青い。」がなぜハチャメチャなどと酷評されながらも、常時20%ほどの高い視聴率を獲得し、老いも若いも主人公の鈴愛の人生の変化に一喜一憂していたのかを振り返ってみたい。

ぐっとくる場面での永野芽郁の「目の演技」がはんぱない!

 自然に涙を出せる。これは女優ならば誰しもが当然のようにやる動作だろう。だが、永野芽郁はその人物になりきって感情を表す時の「目の表情」が尋常ではないうまさだ。

 目の芝居というのは単純な動作だ。

 その中で「泣く」という芝居が一番典型的だが。

 動作として図式化すると以下のようになる。

 1、誰かを見つめる。

  ↓

 2、目が次第にうるおいを帯びる。

  ↓

 3、みるみる目に水分がたまっていてあふれる。

  ↓

 4、涙が目元からこぼれおちる。

 こうやって一つひとつを分解すると、あまりに味気ない。けれども彼女は一連の動作を一気に行ってのける。おそらく、他の俳優よりも、ごく自然に。

 さて、最終回となった9月29日に放送された「半分、青い。」(156回)を振り返ってみる。

 鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)が力を合わせて開発した「そよ風の扇風機」の完成発売記念パーティが岐阜・ふくろう町のつくし食堂で行われることになった。がんで闘病していた鈴愛の母の晴(松雪泰子)が七夕の短冊を飾り付けている。「スズメとリツくんの扇風機がうまくいきまうように」という晴が書いた短冊も見える。鈴愛の初恋の相手で初デート後に振られた小林少年が新聞記者になって登場して、鈴愛に扇風機の開発と母親の闘病についてインタビューする。その時に短冊を整えている母親を見つめる鈴愛の「まなざし」。その目の演技のなんと感情豊かなことか。

 母への慈愛に満ちた表情だ。

 そこで鈴愛は、この商品の名前を「よそ風ファン」から「マザー」に変更しようと思いたち、東京にいる律に電話する。

 やがて、パーティが始まり、鈴愛が挨拶する。

「『マザー』はもともとお母ちゃんががんになった時、外に出られなくなった時、そよ風を味合わせてあげたいって思って、思いついたものです。お母さんが扇いでくれるようなやさしい風という意味もあります」

 母の晴が挨拶している頃、東京から律も到着し、挨拶の言葉を述べるが、これが泣かせる。

 「何はともあれ晴おばさんと約束したこの『マザー』がこうしてできてよかった」と語った後で、長い間がある。

 自分の話になってしまうけど、と断った上で、「もし和子さん(原田知世)が生きとったら、この風を浴びさせてやりたいと思ってずっと作っとった」。

 その後の間で、死んだ和子の写真や和子に思いをはせる晴や鈴愛らの表情がいい。特に永野芽郁は和子を思い出している絶妙な「目の表情」を浮かべて視線を伏せている。

 律が続ける。

 「この風は、僕は天にも届くと思っている」

 その後の和子の夫役の谷原章介が視線を上げる芝居もうまい。今回の俳優陣はみな芝居達者がそろっている。

 「これを作っている最中に、鈴愛の親友の、僕の友だちでもある裕子ちゃんが、震災で亡くなりました」

 その言葉を聞いた時の鈴愛(永野)の目はうるおいを帯び、唇をかむ。

 淡々と語る佐藤健の言葉に合わせた表情だ。

 「鈴愛はよくがんばった…。きっと裕子ちゃんにこれを届けるためにがんばったのだと、僕は隣で見て思ってました」 

 それを聞いている鈴愛の目の表情。小さくうなずくようにまばたきをする。絶品の演技だ。

 「死んでしまった人たちは、死んでしまったわけだけど、その思いは残ると、ずっと残ると、そして僕たちはそれをうけついで生きていくのだと、僕は『マザー』をつくりながら思ってました」

 そう話す律を見つめる鈴愛の表情のクローズアップ。しっかりと言葉を受けとめる熱い目の演技だ。

 ここで律が鈴愛の方を向き、「鈴愛が何かしゃべりたそうなんで替わります」とマイクを鈴愛に渡す。

 感極まった様子の永野の「目の演技」も心に残る。

 この後の、律と鈴愛の愛情物語の結末などに関心が向きがちだが、「半分、青い。」は永野芽郁という天性の役者の「目の演技」に代表される芝居によって支えられていたのだと思う。

 最終回の放送にタイミングを合わせて公表されたNHKの番組ホームページで、永野芽郁の演技のうまさについて、共演した佐藤健が的確にコメントしている。

まずはシンプルに、お芝居が上手ですよね。特に、「!」だけのセリフとか、リアクションがすごくうまいなぁと思います。そしてなにより、力の抜けた状態で芝居できるのがすごい。ああやろう、こうやろうって頭で考えて硬くなるのが普通ですけど、永野さんにはそれがないんです。だから芝居にうそがなくて、生きた鈴愛になっている。大変なスケジュールの中で、相当すごいことをやっていると思います。

というか、18歳の女の子にすごいことやらせすぎだよNHK!って話です(笑)。

出典:NHK「半分、青い。」番組ホームページ 永野芽郁・佐藤健インタビュー

 芝居のうまさで定評ある佐藤健にこう言わせている永野芽郁。役者同士でも見ても、その演技力がはんぱではないということだろう。

この「半分、青い。」が“成功”だったと言えるなら、永野芽郁の功績はとんでもなく大きいと思います。

出典:NHK「半分、青い。」番組ホームページ 永野芽郁・佐藤健インタビュー 

 見逃した人は日曜日も再放送をやるので今日かあるいは年末にでも放送されるはずの総まとめの再放送をぜひ見てほしい。

 そこでスズメの「目の演技」に注目してもらえればよくわかる。

 「半分、青い。」ロスが早くも始まってしまった。

※Yahoo!ニュースからの転載

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