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失敗を重ねる名門パイオニアが、”解体ショー”に突き進むこれだけの理由

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共同通信社

9月中間決算期の大きな話題として、先に第一四半期決算で「継続企業の疑義」が付された電機メーカー大手のパイオニアの外資ファンドによる再建支援発表がありました。

9月末に迫った銀行団のシンジケートローン返済期日を前に、倒産の危機に救いの手を差し伸べたのは、香港を本拠地とする外資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(以下、ベアリング・ファンド)です。昭和の名門企業パイオニアは、なぜこんなにも危機的な状況に陥ってしまったのでしょうか。

パイオニア初期の成功体験が新たなる事業展開のアダに

パイオニアは、スピーカーを主力製品とした音響メーカーとして発展してきました。昭和50年代からバブル期前後にかけて、同社のコンポーネントステレオは我々昭和世代の憧れの存在でもありました。その後音響製品をベースに映像分野にも手を伸ばし、映像デジタル化の流れの中ではレーザーディスクを担いで参入。一時期は次世代を担う存在になるかのような躍進を続けていきました。

つまずきの始まりは、この映像化の道筋にありました。デジタル機器小型化の流れの中で、DVD-R,DVD-RWおよび国産初の民生用DVDレコーダーを開発するも、低価格化競争の中で不戦敗的な撤退を決断。デジタル再生機としての民生用ディスプレイ製造に軸足を移し、技術力を背景とした画質と音質を武器に高価格プラズマテレビ開発をもって華々しく市場に打って出ました。

しかし、ライバルである液晶テレビ普及による大幅なディスプレイ市場の価格低下のあおりを受け他社との提携で延命をはかるも、リーマンショックによって決定的ダメージを被るに至って大きな損失を残したまま撤退を余儀なくされたのです。

ここまでの流れを見るに、パイオニアは当初の成功体験が新たなる事業展開のアダになったという印象が強く感じられます。音響スピーカー単体メーカーから出てコンポーネントステレオで急成長を遂げた同社は、販売単価を飛躍的に上げることが業績面での成功を後押ししてきたと捉えることができます。

この経験が、レーザーディスク部門縮小以降の映像機器への本格進出というターニングポイントにおいて、致命的なミスを招いたといえます。単価的に低価格でかつ早くから価格競争が予想されたDVD分野を捨て、高額単価のプラズマテレビ製造へ傾斜した戦略が、結果大きなつまずきに至ってしまったのです。

「企業の魂」を売るに等しい祖業オーディオ機器事業の売却

同様のことは、2015年の家庭用音響製品からの完全撤退にも見て取ることができます。プラズマで大きな損失を被った同社は事業の集中と選択を余儀なくされ、苦肉の策として祖業である家庭用オーディオ製造部門をオンキョーに売却し完全撤退を決断しました。

最終的に残した主力分野は車載用AV機器(カーナビゲーション、カーオーディオ)で、この分野での苦戦が現在の同社経営危機に至る道を一層加速させたといえます。

この選択の背景ですが、15年時点で既に音響のデジタル化とスマートフォンの普及率は加速度的にその勢いを増しており、音響ビジネスの行く末はスマートフォンメーカー向けの技術供与あるいは部品供給に絞らざるを得ない状況であり、当然ビジネス単価は過去のどの事業にも増して低いということが想像に難くなかったといえます。

一方の車載機器ビジネスは完成品販売として単価の張るものであり、既にライバル視されていたスマホ・カーナビアプリ、オーディオ再生アプリとはクオリティ面で差別化をはかることで成長が可能である、と見通したのではないかと。

すなわち、販売単価に惑わされた誤選択がそこにあったのではないかと個人的には見ています。しかし結果は、スマホの一人勝ちでした。

この選択には、もうひとつ大きな問題をはらんでいます。それは企業における祖業の扱いという重要度の高い問題です。スピーカー製造から業を興し、ステレオセットで一世を風靡したパイオニアが、家庭用オーディオ機器事業を売却するということの意味合いの大きさです。

企業における祖業というものには、創業の精神や企業理念につながるような企業の魂ともいえるものが詰まっています。カーオーディオという形でわずかに音響関連部門は残ってはいるものの、歴史的に同社を支えてきた主要事業である家庭用オーディオ部門を他社に売却するということは、企業の魂を売るに等しいことであったといえるのです。

赤字脱却に向け背に腹は変えられなかったとはいえ、祖業に携わってきた多くの古くからの社員たちが保ってきた組織の求心力をはじめ、企業が失ったものの大きさははかりしれません。販売単価に関わらず、今後の復活をかけた企業の拠り所としての祖業放棄はその後の一層の事業低迷を見るに、残念の一言に尽きる思いです。

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