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SF文学にみる北朝鮮xテクノロジービジネスの可能性

河 鐘基(ハ・ジョンギ) , OFFICIAL COLUMNIST

Es sarawuth / shutterstock.com

9月18日から3日間にわたり、現・南北首脳による3度目の直接会談が行われ、朝鮮半島では平和ムードがさらなる高まりを見せている。

今回の韓国・文在寅大統領の訪朝には、現代自動車、サムスン電子、SK、LGなど、韓国を代表する財閥系企業のお歴々も同行。政治や外交だけでなく、経済やビジネスの変化にも世界の視線が集中した。

韓国企業が狙う北朝鮮市場

そんな南北の本格的な接近を予期してか、韓国では北朝鮮との経済・ビジネス関係を模索する人々が増え始めている。弁護士たちは北朝鮮の法制度を学び直し、メディアでは「北朝鮮に精通した人材を確保するための方法」などがコラムで掲載されたりしている。今年5月頃には、著名政治家のアン・チョルス氏が「北朝鮮ハッカー部隊を『AI人材』としてソウル市で採用する」と本気で語り、話題になった。

個人的な考えだが、今回、北朝鮮を訪問した韓国財閥企業も、北朝鮮とのビジネスに大きな期待を懸けているはずである。欧米や中国の企業と競争を繰り広げているグローバル市場とは異なり、北朝鮮は言葉も文化も同じ”お膝元”だ。いまのうちに交流を重ね、来るべき日には、是が非でも市場を獲得したいと考えているはずである。

昨今の韓国閥系企業を見ていると、人工知能やロボティクス、IoTを始めとする先端テクノロジー分野の研究・投資・商用化にあらゆる力を注ぎこんでいるが、社会インフラが未発達な北朝鮮にはそれらテクノロジーに対する莫大な需要が眠っている。

しかも、既存のインフラがないだけに新たな技術を導入するための障害や既得権益、経済的コストが少ない。加えて、北朝鮮の人々の教育水準は先進国と比べて遜色がなく、人材も豊富だ。

「アルファ碁」以前、北朝鮮の囲碁AIが世界最高峰のレベルだったことは知る人ぞ知る話である。将来的に投資や技術さえ集まってくれば、世界を代表する「テクノロジー実験場」になりうる可能性も秘めているだけに、韓国財閥企業の関心もことさら高まるしかない。

テクノロジーがユートピアを実現?

北朝鮮は、テクノロジーに対してフレンドリーな国であるとの分析もある。今年4月、韓国・尚志大学校のソ・ドンス教授が執筆した「北朝鮮の空想幻想文学とユートピア」という研究書籍が発刊されたが、その中身が非常に興味深い。

同書は、北朝鮮の「空想幻想文学=SF文学」に焦点をあてたもので、1950年代から、人工知能ロボットを取り扱った最近の作品まで、約100冊の北朝鮮SF文学を分析の対象としている。

歴史的にソ連作品の影響で誕生した北朝鮮のSF文学は、1960年以降、独自の発展を遂げ現在にいたっている。ソ教授によれば、その大きな特徴を要約すると次のようになる。

まずひとつは、「人工知能が世界を支配する」といったようなディストピア的な視点が皆無であること。次に「テクノロジー発展の合理性に基づき”現実的”に達成しうるような世界」が描かれること。そして、「テクノロジーは国家の発展に絶対的に服従するもの」として捉えられている点だ。

例えば『ロケットを呼ぶ電波』という作品では、「タコの言語を理解して大量捕獲計画をつくる」というようなエピソードあり、『雷を捕まえる飛行船』には、「飛行船から電波を無限に供給」されるシーンが登場する。その他にも、「遺伝子工学で巨大な作物を生産」(『レールの丘』)、「750年間、季節に関係なく着れる服」(『四季節着る服』)、「人工太陽の温度を調整しながら複数の種類の果物を食べられる社会」(『虹が表れた都市』)などのストーリーがあり、いずれもテクノロジーがユートピアを実現するための手段として描かれている。

なおソ教授は体制批判が許されぬ状況では、作家たちがユートピアを描くしかなく「北朝鮮のSF文学には限界がある」と結論付ける。

ただ、それらSF作品が北朝鮮の人々にどのように解釈されているか、またテクノロジーに対してどれほど親密さを生んでいるかはいまだ未知数なままだ。各作品のエピソードを見る限り、欧米で価値が高いとされる「課題解決型」の思考が反映されている傾向が強いとも解釈できる。

今後、朝鮮半島情勢が前に進み、韓国および各国企業の資本やサービス、技術が投入された際、「北朝鮮×テクノロジー」の本当の相性が明確になっていくはずだ。さしあたり、米トランプ大統領との二度目の会談が実現するか、その行方が気になるところである。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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