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ドル円が80円台に(円安仮説の検証)

小笠原誠治

2012年02月23日 11:44

ドル円がとうとう80円台に戻しました。昨年8月以来の水準なのだとか。

人間って面白いものなのです。というか錯覚に陥りやすいというべきか?

騙し絵っていうのがあるでしょ? あれと同じです。ドル円が90円から80円になると、とんでもない超円高に思えるのですが、こうして75円の水準を一度経験した後だと、同じ80円でも、相当に円安になったと感じるからなのです。

 菅さんが財務大臣に就任した頃、1ドルが90円台の半ば程度の水準であれば望ましいと、あんなにはっきり言っていたのに‥今となっては、1ドル=80円が恵みの雨に映るのがあら不思議!

 少し前までよく言っていました。ドル円が、1円分高くなるだけでも弊社の利益は○○億円少なくなるなんて。1ドル=80円などとんでもないレベルだ、と。

でもどういう訳か、多くの輸出企業は、今は1ドル=78円程度でそこそこの利益が計上できるような
体質になっているのです。

輸出企業っていうのは、そんなに簡単に円高に対応できるものなの? 輸出企業に同情してしまってバカみたいなんて思っている人が多いと思うのです。

いずれにしてもこんなに急速な円安が起き、多くの市場関係者が円安の理由について考えているのです。

一体何故、ここにきて急速な円安が起きているのでしょう?ということで、本日は、ネット上で確認できた円安の理由についてまとめてみることに致します。

1.「日銀の物価目途」仮説

2.「日米金利差」仮説

 3.「貿易赤字」仮説

 4.「為替介入」仮説

 
 以上のように私がざっとネット上をチェックしたところ、以上の4つの仮説を確認することができたのですが、それぞれについて考えてみることに致します。

先ずは、「日銀の物価目途」仮説についてです。これはいうまでもなく、日銀が2月14日に発表した
所謂「実質物価目標値」政策が、市場にサプライズを与え、それが円安の動きを作り出しているというものです。

 この考え方を支持する人は、国内にも多いようです。相場というのは、投資家の主観も大きな役割を果たす訳ですから、その主張が正しいかどうかは別にして、実際にそうした考えを多くの投資家が受け入れるのであれば、もちろんそのことが今回の円安の主因になり得るのです。

 ただ、どうしても不自然な点が残るのです。

 というのも、これまで日銀は似たような政策を何度も実施してきたのに、何故今回だけこのように
市場が過敏に反応しているのかという点なのです。

 物価の目標にしたって、飽くまでも「目途」という控えめな表現であり、また物価の想定水準もこれまでと同じ1%であるのに、何故そのことがこれほどまでの反応を引き起こしているのか、と。

それに、「日銀の物価目途」仮説を採用する人々は、日銀のこの発表以降円安に振れ始めたと
言っているのですが、事実はそうではないのです。円安は2月の初めごろから少しずつ進展している
のです。

次は、「日米金利差」仮説

これは、今回日銀が、さらに10兆円分長期国債を買い入れることを決定したことにより、例えば2年物国債の利回りの低下が引き起こされ、それによって日米金利差が拡大することになるため、円の魅力がなくなったからだというもので、相当に説得力を持つと言っていいでしょう。

ということで、この仮説は部分的には正しいと私も思うのですが、ただ、日米の金利差だけでこれほど急速な円安を説明することが可能であるのかという疑問も付きまとうのです。また、仮にこの説が正しいとすれば、今後米国において更なる金融緩和策が採用された場合には、今回とは逆に急速な円高が起こらなければなりません。

3番目は、「貿易赤字」仮説です。これは言うまでもなく、昨年の日本の貿易収支が31年ぶりの赤字になり、また今年に入ってからも1月は単月でこれまでの最大の赤字を計上していることから、実需面で円売りドル買いが起きているというものなのです。海外では、この説を支持する向きが多いように思えるのですが、意外に国内では多くないような気もします。

 最後は、「為替介入」仮説で、現在、日本政府が秘密裏に為替介入を続け、その結果このような
円安が起きているのではないかというものですが‥そして、私も少し前に、その可能性について考えたこともあるのですが、今までの政府の言動や、円安の進展のペースから考えて、その可能性はほぼないでしょう。

以上が、ざっと見た感じでの、現在考えられている円安の原因なのですが、私は、もう一つ重要な
ものを挙げたいと思うのです。

それは何かと言えば、中国が円買いを控えているという事実です。敢て名づけるなら「中国の円売り」仮説。

中国が大量の外貨準備を保有し、それを様々な方法で運用していることはご存知のとおりです。そして、中国は、この1、2年において急速に日本国債を保有するようになっているのです。

 しかし、ここにきて中国は態度を変えているのではないかと思われる節があるのです。それは、温家宝首相のスピーチの表れているのです。中国は欧州を買収しようなどという気はない。ユーロ圏が安定し発展することが、中国にとっても重要である、と温家宝は言いました。

中国は、ユーロ危機が起こり、ユーロが安くなることによって迷惑を受けていると感じているのです。何故かと言えば、ユーロが安くなり過ぎ、中国からユーロ圏向けの輸出が伸び悩んでしまうから
なのです。だから、どうしてもユーロ安には歯止めをかける必要がある、と。では、どうしてユーロを支えるか? ユーロが安くなりすぎているのであれば、もう少しユーロを買おう、と。そして、ユーロを買うために円売る必要がをあるのです。

それ以外にも、日米の金利差が拡大すれば、中国にとっても日本国債を保有するより米国国債を保有する方が有利に見える訳なのです。

ということで、私としては、この中国の動きが急速な円安の背景にあると思うのです。

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くだらない官僚ではなく、天下らない元官僚。経済コラムニスト

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