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記事 消費増税

繰り返される野田内閣の詭弁〜「対岸の火事」と「他人事」

近藤駿介

2012年02月23日 11:09

22日の外国為替市場では一時1ドル=80円30銭近辺と、「素人財務相」が「満足」して介入をやめるよう指示した78円20銭を大幅に上回り昨年7月12日以来約7カ月ぶりの水準まで円安が進行した。

為替市場での円安転換へのきっかけを与えたのが、今月14日に日銀が実施に踏み切った「義理チョコ」と揶揄された追加的量的緩和。政府が圧力をかけて日銀に迫った追加的量的緩和が為替市場での円安に繋がったことで、「素人財務相」はさぞかし「満足」、面目を失った「経済学者の日銀総裁」は忸怩たる思いをしているはずである。

為替市場が80円台を回復したことに気を良くしたのか、「素人財務相」は、22日の衆院予算委員会で、社会保障と税の一体改革大綱で消費税率引き上げの前提に掲げられている「経済状況の好転」に関して「リーマン・ショックの直後や東日本大震災の直後など著しい落ち込みでない状態であれば、今の時点の経済状況であれば引き上げは可能だ」「デフレイコール不景気という認識で、だから(消費増税は)ダメだという単純なものではないと思う」と述べた。

しかし、これは「慢心」でしかない。

「リーマン・ショックの直後や東日本大震災の直後など著しい落ち込み」というが、「リーマン・ショックの直後」の最大落ち込みは2009年1-3月期で、GDP成長率は名目で▲15.1%、実質で▲14.8%、「東日本大震災直後」は発生時の2011年1-3月期で、名目GDPが▲7.5%、実質で▲6.8%である。

「リーマン・ショックの直後や東日本大震災の直後など著しい落ち込み」を基準にしている「素人財務相」にとって、2011年10-12月期の名目GDP▲3.1%(前期比年率)は「不景気」の内に入らず、むしろ「経済状況の好転」の部類にはいる状況のようだ。これは台風を基準に天候を語るようなもの。

ちなみに、2011年暦年の名目GDP成長率は▲2.8%と、リーマン・ショックのあった2008年の▲2.3%を上回り、1995年以降最大の落ち込みを記録している。そして名目GDP実額は1997年の523兆1983億円を金額ベースで55兆1245億円、率にして▲10.5%落ち込んだ水準にある。

「素人財務相」に続いて野田総理もデフレが長期化している理由として「1つはバブルが崩壊をしたあとに資産デフレ、バランスシートの調整が長期化するなかで需要不足状態が続いているということ」との認識を示し、「こうしたなかで期待物価上昇率が低下していることも指摘されていることと承知している」と語った。

「需要不足状態が続いている」ことを認識している総理が、「リーマン・ショックの直後や東日本大震災の直後など著しい落ち込み」を基準にして、さも消費増税の前提とされている「経済状況の好転」が達成されているかのように吹聴し、有効需要を確実に落とす消費増税に「不退転の決意」で臨むなど「歴史的愚行」でしかない。

「借金額を減免し、目先の返済のための資金をつぎ込んでも、財政を再建できるかどうかは分からない。同国の2011年10~12月期の成長率は、前年同期比マイナス7%だった。景気が後退しているところに、さらに財政を絞れば回復は一段と遅れるだろう」

「財政再建原理主義者」であある野田総理の援軍部隊である日本経済新聞は22日付の社説「応急処置でギリシャ破綻は回避したが…」のなかでこのような主張をしている。

「景気が後退しているところに、さらに財政を絞れば回復は一段と遅れるだろう」というのは、何もギリシャ固有のものではなく、日本にも当てはまると考えるのが一般的なはずである。
経済成長率が▲7%の国に対して「財政を絞れば(財政再建が)一段と遅れる」ことを懸念し、▲3.1%の国に対しては「増税を中心とした緊縮財政政策」を迫るというのは、明らかな論理矛盾である。

日本経済新聞が、もし、経済成長率が▲7%の国では「財政を絞れば(財政再建が)一段と遅れる」が、▲3.1%の国では「財政を絞れば(財政再建が)早まる」という誰も気づいていない理論を持ち合わせているのであれば、是非とも公開して頂きたいものである。

日本経済新聞はこの社説でさらに「緊縮を強いる欧州連合(EU)とドイツへの怒りは、修復できないほど高まっていると考えるべきだ。(中略)ぎりぎりの交渉で当面のデフォルトは回避したが、その代償として、欧州内に不信感の渦と深い亀裂が生まれてしまった」と主張している。

「財政再建原理主義者」は、ギリシャのソブリン危機を「対岸の火事」だと騒ぎ立てる一方、それ以外の政治的混乱は「他人事」だと考えているようだ。

しかし、ギリシャの混乱に学ぶのであれば、「緊縮を強いる欧州連合(EU)とドイツへの怒りは、修復できないほど高まっていると考えるべきだ」という部分は、「緊縮を強いる野田政権への怒りは、修復できないほど高まっていると考えるべきだ」と捉えるべきであるし、「欧州内に不信感の渦と深い亀裂が生まれてしまった」という部分は「国民と政府の間に不信感の渦と深い亀裂が生まれてしまった」と考えるのが「真摯な態度」のはずである。

日本の経済状況はまだ「ギリシャ化」はしていないが、政治状況はすでに「ギリシャ化」している。

与野党は、最高裁が2009年の前回衆院選での「1票の格差」を違憲状態と指摘した衆院選挙制度改革をめぐり、25日に迫った区割り案の勧告期限を無視したまま「違法」な状況を放置する方向となった。

これによって、17日に閣議決定した社会保障と税の一体改革大綱の前提条件となる「衆院議員定数を80削減する法案を早期に国会に提出し、成立を図る」と明記した「政治家自らが身を切る」部分はお流れとなることが決定的になった。

「一票の格差」の「違法状態」を放置し続ける野田政権が、「所得税法の附則」の遵守を掲げて消費増税に固執する姿勢は、「国民の政府の間に不信感の渦と深い亀裂」を増長するものでしかない。

「政治家自らが身を切る」ことが事実上困難になった以上、野田総理には「自ら首を切る」選択をすべきである。

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ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つ

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