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焦点:暴落後も個人に人気のトルコリラ、東京市場で主要通貨入り


[東京 14日 ロイター] - 8月の大暴落にもかかわらず、日本の個人投資家の間でトルコリラ<TRYJPY=R>が引き続き人気だ。主要国通貨を大きく上回る高金利が魅力だが、外国為替証拠金取引(FX)業者の積極的な営業姿勢も見逃せない。東京外為市場の対円取引高では5位に浮上。もはや主要通貨の一角だが、リスクも大きいだけに売買には注意も必要との指摘もある。

<東京市場「第5の通貨」>

東京外国為替市場委員会によると、今年4月中に東京市場で行われたトルコリラの対円取引高は、1営業日平均で39億8000万ドル(約4450億円)。対米ドル<JPY=>の2469億ドル、対ユーロ<EURJPY=>の332億ドルには及ばないが、対豪ドル<AUDJPY=R>の108億ドル、対英ポンド<GBPJPY=R>の103億ドルに次ぐ5位となった。

2017年4月は10億6000万ドルで、1年で約4倍に膨らんだ。主要通貨と位置づけられているカナダドル<CADJPY=R>やスイスフラン<CHFJPY=R>、NZドル<NZDJPY=R>などを上回る規模となっている。

その売買の大半は、証拠金取引と投資信託を経由した個人マネーとされる。貿易統計によると、2017年の対トルコ貿易は輸出が28位の3546億円、輸入は59位の711億円。1年分の輸出入を合計しても1日当たりの取引高にすら及ばない。

市場では、東京の実際のリラ取引額はもっと巨額との声が大勢。特に証拠金取引は業者と金融機関が運営する為替売買システムが直結していることが多く、「日本の個人の売買の一部が(売買システムが実在する)ロンドン市場で計上される」(外銀幹部)ことが少なくないという。

<FX業者側の事情も>

人気の理由は無論その高金利。10年国債利回り<TR10YT=RR>はピークから下がったとはいえ足元で約18%。米国の2.9%、日本の0.11%とは雲泥の差だ。

トルコリラで人気を集めるトレーダーズ証券が運営する「みんなのFX」。1万通貨単位、現在のレートで18万円程度投資すると、スワップポイントと呼ばれる金利差収入が日々100円前後得られる。米ドルでは113万円投資しても44円にとどまる。

南アフリカランド<ZARJPY=R>等それなりに高金利の新興国通貨もある。その中でトルコリラ人気が一歩リードしているのはFX業者側の事情もあるようだ。

外為市場では2月に米国株が過去最大の下げを記録した後、年央にかけて変動率が次第に低下。ドル/円は4月以降、108─113円のレンジ内で値動きが鈍り、主要通貨の合成予想変動率を示す指数も年初来最低水準で推移し続ける「なぎ相場」が続いた。

頭を抱えたのがFX業界。値動きが見込めないと個人が取引を控えれば収益源が失われるため「動かないなら高金利」と顧客にPRした。

「FXは自転車操業。新規の顧客をどんどん入れないといけない。そのためには具体的な商品性を訴える必要があり、南アランドやメキシコペソ<MXNJPY=R>といった既に知られている高金利通貨とは違ったリラの目新しさが良い訴求ポイントになった」(FX会社幹部)という。

<建玉が再び急増>

8月10日、個人投資家に衝撃が走る。対立する米国との協議が物別れに終わり、トランプ米大統領が追加関税の発動を表明したことで、リラは対円で19%急落。01年の変動相場制移行後で最大の下げとなり、20円台から16円台まで落ち込み過去最安値を更新した。

個人の間では、急落で損失確定に伴う巨額の強制売りが発生。週明け13日にかけて証拠金業者の間では買い持ちから売り持ちを差し引いた建玉が激減。多くの会社で3割超、一部では7割近い建玉が一気に決済される異常事態に陥った。「リラ相場を急変させた一因は、間違いなく日本の個人の取引」(別の証拠金会社関係者)という。

しかしその後、トルコ当局の相次ぐ政策対応が奏功し、リラは16日に19円台へ反発。中銀による流動性供給策もあり下値不安がいったん後退し、個人が再びリラを買い増す動きも出始めた。

FX最大手のGMOクリック証券では、建玉が急減した8月下旬の水準から1カ月近くで再び倍増。「投機性が強く経験値の高い顧客が多いようだ」(デリバティブ部長の及川昌弘氏)とされ、同社内でのリラ/円の取引金額は急落後も以前と変わらず上位に食い込むという。

トルコ中銀の大幅利上げを受けてリラが急上昇した13日の海外市場では、上昇局面では個人の逆張りの売りと追随の買いが激しく交錯。「普段の3倍近い取引高」(GMOの及川氏)となり変わらない人気ぶりを印象づけた。

歯止めがかからないリラ人気に、FX業界内からも困惑の声が上がる。トレーダーズ証券市場部長の井口喜雄氏は「トルコは対米関係の改善が明確にならなければ上昇トレンド入りは難しい。今後も下落する可能性があると理解した上でしっかりリスクコントロールをして欲しい」と訴えている。

(基太村真司 編集:伊賀大記)

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