◆米アップル社が、苦境に立たされている。中国の裁判所が、『iPad』の商標権を中国の会社が取得しているとして「販売停止命令」を出したからである。記事の詳細は、このブログの最後に参考引用として掲載しておく。
この事件は、明らかに「米アップル社」の失態である。中国に進出している場合、商標権に限らず、無体財産権全体、つまり特許権についても、厳重でなくてはならない。
この点、極めて迂闊であった。
かつて、米ユーエス・ステイールが、日本進出に当り、日本の個人あるいは企業が、同名の商標権を取得しているのではないかと、事前に徹底調査させた。すると、すでに、商標権を取得していた個人がいることが判明したので、それを高額で買い取って日本に進出したという前例がある。アップル社も、しっかりと調査して、中国に進出すべきであった。
◆というのは、米国は、レーガン大統領時代から、米国のパテント政策を強化してきたからである。正確には、「プロパテント政策」という。物づくりではなく、知的所有権が生む価値で利益を得て、国富を増やす政策を重視したのである。「特許制度による保護政策」と「反トラスト制度による競争政策」を常にバランス良く調整し、経済全体が最も発展する条件に保つことを重要視したのである。
このなかで、たとえば、ウォルト・ディズニーのキャラクターに関する商標権や著作権を延長して、米国に利益をもたらせようとしてきた。
10年に一度のサイクルで大戦争を起こさねば、軍産協同体を維持できない米国は、長引くベトナム戦争と、2度の石油危機を経て、反トラスト政策により国際的競争力が極度に失墜し、加えて日本産業がレーザー光線的に進出してきたことなどが原因となり、1979年、ついに米国貿易収支が赤字になった。これに財政赤字が加わり、「双子の赤字」をもたらした。このために米国は、1980年代から現在に至るまで「第二次プロパテント時代」を懸命に築いてきた。にもかかわらず、アップル社は、中国の企業などに、してやられる事態に陥ったのである。これをもって、中国企業が悪いとは、一概には決め付けられない。
◆一方、日本は、知的財産に鈍感だった。従来の日本式技術開発が通用しなくなり、バブル崩壊の不況が長期化した1990年代の後半から、ようやく知的財産への注目が高まった。そして、米国の「プロパテント政策」に遅れること約20年を経て、小泉純一郎首相が2002年の施政方針演説で知的財産について触れたのである。これに始まり、「知的財産戦略大綱」には知的財産立国」実現に向けた政府の基本的構想が出された。
米国のバイ・ドール法(1980年)に対し、日本版バイ・ドール制度といわれる産業活力再生特別措置法第30条により、産学連携及び発明の商業化が促進された。また、米国のCAFC設立(1982年)に対応し、日本でも2005年、知的財産高等裁判所が設立された。
それでも、中国企業が「青森リンゴ」「コシヒカリ」などの名前を商標登録したのをはじめ、有名ブランドのみならず、富士山などの名所、果てには、日本の県名、地名、有名人の名前、芸名まで商標登録する始末である。始末に悪いと言えば、ミもフタもないけれど、日本政府は、懸命に知的財産の知的活用を推奨、普及した。それでも、中国の貪欲な「物真似づくり」「ニセモノづくり」の達人に出し抜かれること、しばしばである。
【参考引用】
「FNNが2月22日午前零時46分、「『iPad』の商標権をめぐり中国の一部地域でアップル社に販売停止命令」という見出しをつけて、以下のように報じた。
「中国・深センのIT企業が、『IPAD』の商標権はすでに取得していたとして、アップルの「iPad」の販売差し止めを求めていた裁判で、裁判所は、この要求を認め、市内の店舗に販売を停止するよう命じた。偽キティーに偽ドラえもん、そして偽ガンダム。あらゆるものをパクり続け、バレたら即撤退という戦術を繰り返す中国。今回はiPad販売禁止令という反転攻勢に打って出た。上海でも商標権の訴訟が起こされていて、その結果いかんでは、アップルが大打撃を受けるおそれもある。中国・深センのIT企業「唯冠科技」は、IPADの商標権はすでに取得していたとして、アップルのiPadの販売差し止めを求めていた。
裁判所は、この要求を認め、市内の店舗に販売を停止するよう命じた。
唯冠科技の債権者は「アップルは商標を違法に使用しているので、3800億円(300億元)の賠償金を支払うべきだ」などと話した。唯冠科技は事実上、経営破たんしている。『転んでもただでは起きない』を地でいく中国企業。さらに、『転ばぬ先のつえ』も。中国の新聞によると、iPad関連の商標登録は1,000件にものぼるという。『APAD』から『ZPAD』まですべてのアルファベット。さらには『RedPAD』や『BluePAD』など色の名前、果ては『Mr.PAD』、『かっこいいPAD』と、こうなったらなんでも登録してしまえという、なりふり構わない状態になっている。『iPhone』の商標権を主張する企業も現れた中国。知的財産ビジネスでは、先手必勝が定石となりつつある」
この記事を筆者のブログで読む