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TBSドラマ「運命の人」は、ニュース源を守れなかった毎日新聞記者の悲劇にすぎない

板垣英憲

2012年02月21日 01:16

◆「第3回板垣英憲「情報局」勉強会」(2月17日午後1時から4時まで=昼の部と、午後5時から8時まで=夜の部)で、TBSドラマ番組「運命の人」(山崎豊子原作、日曜日午後9時~9時54分)について、質問された。この日の勉強会の演題は「株~為替~金」であったのだが、もう40年前の「西山太吉事件」をテレビドラマ化したこの番組に対する関心の強さを感じさせられた。これに対する私の見解は、以下の通りである。

 (1) この事件は私が毎日新聞に入社した約半年前の1972年3月27日に起きた。衆議院予算委員会で社会党議員の横路孝弘と楢崎弥之助が政府説明と正反対の内容の外務省極秘電文を公開。密約の存在を追及した。同月30日、外務省の内部調査で、H女性事務官が「私は騙された」と泣き崩れて、毎日新聞社政治部の西山太吉記者に機密電信を手渡したことを自白。4月4日、国家公務員法111条(秘密漏洩をそそのかす罪)違反で西山太吉記者がH女性事務官とともに逮捕される。同月5日、 毎日新聞は朝刊紙上で取材活動の正当性を主張。他紙も同調。同月15日、 東京地方検察庁検察官・佐藤道夫(後に民主党参院議員)が起訴状に「ひそかに情を通じ…」と記載。同日夕、毎日新聞夕刊が「本社見解とおわび」を掲載。5月15日、26年ぶりに沖縄復帰。

 (2) 西山太吉記者が、佐藤栄作首相下、「米国との密約」を示す電文を手に入れて、スクープしたのは、素晴らしいことであったが、「ニュース・ソース」である「H女性事務官」を守り切れなかったのは、新聞記者として最低である。私自身、警察回りをしていて、警察官から「毎日さんは、ニュース・ソースを秘匿してくれるのか」と散々嫌味を言われて、迷惑した。部数も50万部減った。

 (3) 電文は、西山太吉記者→政治部I・Y記者(東大文学部卒)→社会党議員の横路孝弘と楢崎弥之助に渡されて、衆議院予算委員会で、その密約の内容が爆弾質問された。問題は、電文にある「担当→係長→課長補佐→課長→部長→審議官→局長→外務事務次官→外務政務次官→外務大臣」と順々に回覧されて、その都度,判子を押す欄があり、それを迂闊にも、切り取らないのまま、衆議院予算委員会でさらけ出してしまった。判子は「審議官」のところで、止まっており、「外部への漏洩」が、ここまでの段階で行われていたことを用意に推察できた。外務省の内部調査の結果、審議官付けのH女性事務官が機密漏洩したのではないかとの疑惑が濃厚となった。

 (4) H女性事務官は、性的不能な夫に不満を抱いており、西山太吉記者の誘いに乗った疑いがある。H女性事務官は、私の初任地である埼玉県浦和市(現在・さいたま市)在住で、

意識的に取材スルこともなく、様々な情報が耳に入ってきた。

 (5) 西山太吉記者は、待合ホテル「石亭」から記事を毎日新聞社政治部に送稿していたが、もう1人記者(時事通信社)がいた。これは、私がこの記者から直接耳にした。

 (6) 西山事件直後の毎日新聞社政治部では、事件の後遺症が続いており、派閥争いもあり、その渦中に入った何も知らない私は、ひどい目にあった。

 (7) 詰まるところ、この西山事件は、気分が悪い事件であり、そもそもテレビ・ドラマ化して、正当性を力説できるようなものではない。

 (8) TBSドラマ番組「運命の人」は、西山太吉記者の行為を正当化するためと、生存関係者に対する配慮から、相当デフォルメされていて、真実とはほど遠く不愉快なドラマである。

◆私がいつも言っているように、「情報」は、「表、裏、陰、闇」という「4重構造」になっていることを知らなくてならない。

 西山事件は、この「4重構造」を知るのに好都合な「スタディ・ケース」の典型的な1例である。とりわけ、「国家の犯罪」とも言うべき「密約問題」を「ひそかに情を通じ…」と起訴状に記載し、「男女関係」に矮小化して国策捜査化した「東京地方検察庁検察官・佐藤道夫(後に民主党参院議員)」の行為は、国民を裏切るまさに悪質な犯罪的行為とも言え る。すでに鬼籍に入っているとはいえ、徹底的に弾劾されるべきである。

 「表の情報」・・・毎日新聞社政治部の西山太吉記者に機密電信を手渡したことを自白。4月4日、国家公務員法111条(秘密漏洩をそそのかす罪)違反で西山太吉記者がH女性事務官とともに逮捕される。同月5日、 毎日新聞は朝刊紙上で取材活動の正当性を主張。他紙も同調。同月ⅰ5日、 東京地方検察庁検察官・佐藤道夫(後に民主党参院議員)が起訴状に「ひそかに情を通じ…」と記載。

 「裏の情報」・・・佐藤栄作政権の「密約」を佐藤道夫検事が、政権の指示により「国策捜査」化して、「男女関係」に矮小化した。宮城県仙台市出身で仙台一高、東北大学法学部卒業。司法試験に合格。1957年検察庁入り。札幌地方検察庁検事、東京地方検察庁特別捜査部検事・同庁刑事部長・最高検察庁検事などを歴任。東京地検特捜部では西山事件の捜査を担当し、起訴状を書いた。

 起訴状に記した「女性事務官をホテルに誘ってひそかに情を通じ、これを利用して」という起訴理由は、世論を国家が密約を結んだことの是非から、西山太吉記者の私的なスキャンダルに誘導した。

 後年、米国側の公文書公開で密約が明らかにされた後、テレビ朝日の「スーパーモーニング」に出演、その際「言論の弾圧といっている世の中のインテリ、知識層、あるいはマスコミ関係者なんかにもね、ちょっと痛い目にあわせてやれという思い」から起訴状の文言を考えたと述べており、検察としての邪道の道を正当化している。

 「陰の情報」・・・米国に従属し、米国の利益に奉仕、このころは、まだ、「同盟関係」(アライアンス)という言葉はなかった。

 「闇の情報」・・・沖縄県民を永続的に犠牲にする。冷戦構造の維持のため、日本はそれ相応にコストを支払わなくてはならない。日本は、奴隷国家である。

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海上自衛隊幹部候補生学校を経て、元毎日新聞記者。

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