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若い世代に好評「つみたてNISA」 70歳からでも長期投資デビューは遅くない

イメージ写真:アフロ

 「つみたてNISA」がスタートして、若い世代への長期投資が少しずつ定着しはじめています。早めに資産形成を行うことはたいへんすばらしいことですが、50代や60代はもちろん、70代からでも遅くはありません。「つみたてNISA」は投資に不慣れな人こそ、スタートを切るにはふさわしい投資手段なのです。

【連載】金融業界に喝! 中野晴啓と考える、お金と明るい未来

高齢者をターゲットに手数料稼ぐ既存金融業界に、新興運用会社は時間を味方にノーロードで対抗

 既存の金融業界は投資信託など金融商品の販売業務において、まとまった資金を持つ高齢者層をターゲットとし、一度に効率よく販売手数料を獲得するためのモデルに注力しながらしのぎを削ってきました。

 そうした業界常識の中で、セゾン投信をはじめとした小さな新興運用会社が同じコンセプトで参入しても、競争上の優位性は見出すことはできません。そこでブルーオーシャンに成長の活路を求めたのです。

 ブルーオーシャンとは現役層、とりわけ40代以下の資産形成が必要な世代です。相対的に若年世代がなぜブルーオーシャンだったかと言えば、まとまった資金や金融資産の形成に至っていない人たちであり、既存の金融業界の顧客ターゲットの埒外だったからです。こうした業界常識に対するアンチテーゼとして、必然的に積立投資という投資行動への誘導が、同社をはじめ直販系運用会社の事業モデルのメインフレームになったと言えます。

 そして毎月積立投資の資金フローでビジネスを成立させていくためには、時間をかけた投資資産の累積によるストック拡大が事業目的となるため、短期的フロー収入を求めないノーロードの投資信託の提供へと行き着いたのです。

  10年前の投信残高上位ファンドを見てみると、ほとんどが毎月分配型商品です。言ってみれば投信販売=毎月分配型ファンドだったわけです。

 業界挙げて、シニア世代の年金を金利のほとんどつかない預貯金にかわる投資信託の活用に向かわせようとしました。このような業界全体で創り上げた営業コンセプトが浸透して、証券会社のみならず本業で業務純益を伸ばせない銀行までこぞって収益獲得のため、預金から毎月分配型ファンドへのシフト競争に傾注して行ったのです。

 要するにシニア世代の年金補完を目的とした毎月受取りニーズに偏ったまま誘導するのが投信販売のメインストリームだったとすれば長期資産形成も複利の効能も商品コンセプトには必要なく、つまるところ、既存金融機関が積立投資を顧みることは一切なかったのです。

金融資産がない若い世代こそ、コツコツ長期投資で資産形成が必要

 こうした業界常識に抗ったビジネスモデルを貫いてきたセゾン投信の実証データを見ると、現役世代にも投資信託の需要はたしかに潜在しています。

 2008年の同社の顧客属性を見ると、40代以下が75%を占めていましたが、現在も40代以下が70%とその比率は大きく変わっていません。そして世代ごとの積立投資家比率は40代以下でおしなべて70%程度ありますが、50代・60代と世代が上がるに従ってその比率は下がっています。その傾向は10年前と変わっていません。

 金融資産がない若い世代こそ、資産形成が必要となります。現役世代ならば毎月の所得から一定の金額を少しずつ拠出して投資残高を累積させていく積立投資こそが、時間を味方につけて無理なく資産形成できる方法なのです。金融事業者の役割はその機会を提供し、現役世代に気づきを与えることなのではないでしょうか。

 実際、米国の事例を見ても、同国の投信残高は日本の20倍超と生活者への圧倒的普及が見て取れますが、毎月の資金流入フローは、その半分近くが401KおよびIRA経由、つまり実質的には月々の積立投資が占めています。一般生活者層における長期資産形成の普及には「積立投資」が前提条件だと考えても過言ではありません。

「つみたてNISA」は現役世代向けだけではない 60歳超も長期投資に初挑戦のきっかけに

 ところが「つみたてNISA」を現役世代向けと決め付けてしまうのも実は早計です。すでに業界全体に当該制度は資産形成層のためのもの、とデファクト化された常識が定着しつつありますが、これを投資未経験者に向けた効用から考えてみましょう。

 投資による資産形成には関心があるものの、損失を恐れて逡巡している人は世代を問わず結構多いのです。そうした人たちの一歩を踏み出す後押しとなるのが、「毎月積立」という投資行動でしょう。

 ・毎月少額から始められるので怖くない。

 ・値下がりしてもより安く買えるチャンスと思えば、大きく落胆する必要もない。

 ・毎月ずっと同じ行動を続ければ値動きを気にしてそれにとらわれることからも解放される。

 積立投資は長期投資に向けた意欲をサポートする行動規範であり、投資未経験者を投資に導く極めて有効な手段なのではないでしょうか。

 だとすれば、資産のほとんどが預貯金だという60歳超の高齢層にも、投資行動を体験してもらう手段として「つみたてNISA」は大いに威力を発揮するはずです。

 人生100年時代の概念が急速に一般化して来た昨今、たとえば70歳からでも長期積立投資に充分な余命時間があるのです。残存生存期間ずっと積立投資家であり続け、必要に応じて運用資金を取り崩しながら投資を続けることの有効性を説き、ファイナンシャルジェロントロジー(金融老年学)の課題を叶えるカルチャーとして定着させたいものです。

 高齢層が「つみたてNISA」をきっかけに動き出せば、個人金融資産の過半を占める現預金が資本市場へと向かう、マネーフローの大転換が一気に加速されるでしょう。

(セゾン投信株式会社 代表取締役 中野晴啓) セゾン投信株式会社代表取締役社長。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。06年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。

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