『環球網』が「
社评:面对西方话语权,中国应自信从容」(社説:西欧の発言権に直面して、中国は自信を持って余裕のある態度で臨むべきだ)という記事を掲載しており、いろいろ思うところがあったので、これについて少し。
1シリアに対する制裁決議
シリアが国内の反体制を弾圧していることを受け(「
シリアと地政学」参照)、シリアに対する制裁決議が安保理の議題となりました。中国とロシアは当初かなり強硬だった制裁決議案の文言を3回も改正させた上に、最後には揃って拒否権を行使し、決議案を廃案に追い込みました。
その上、国連総会でも反対票を投票したことは、反体制に対する武力弾圧をかばっているのかと世界各国(特に西側諸国)から批判を受けることとなったわけですが、この記事が書かれた目的は明らかで、そうした批判に対する反論です。
2『環球網』の社説
最初に記事の概要を紹介させていただきます。
国連総会で反対した国は12ヶ国しかいなかったことから、これらの国に対し「見捨てられた国家」という名称までつけているが、こんなのはマヤカシだ。
昨年11月25日のキューバに対する国連総会の決議では、アメリカとイスラエルだけが反対した。12ヶ国はこの時より多いではないか。
中国はアメリカの覇権主義を踏襲するつもりはないし、国際社会の平等原則も堅持するが、中国は世界人口の1/5を抱えているのだから、投票結果は尊重されるべきだ。
中国を西側諸国(彼らの言う「普遍的価値観」)と同じ投票行動をさせようとするのは間違いだ。中国が上に行こうとすると圧力がかかり、西側世論に言わせれば中国は何をしても間違っており、”孤立化”する。
実際、中国が”孤立化”していた期間は長く、朝鮮戦争の時も新中国が成立した時も、味方は少なかった。西側の批判に惑わされる中国人もいるが、国家がきちんと前に進んでいけば、そうした迷いも無くなる。
西側諸国は中国に対するいろいろな手段を使ってくるので、中国はそれに対抗する手段を学ばなくてはならない。彼らは中国に対し”傲慢”とか”強硬”といったイメージを押しつけるが、どうでも良い。我々は平和を愛する国だ。
実際ここ20年中国は一度も戦争をしていない。それに引き替えアメリカは10数回も行っている。イギリスやフランスも同じだ。西側諸国はどういう資格があって、国際正義などといって我々に教訓を垂れるのか。
3社説の検証
なかなか見事な論旨だと思います。むろん、私は中国がシリアの制裁決議に対し反対票を投じたことを弁護するつもりは毛頭ありません。しかし、国際政治の舞台で言うべきことはしっかり筋道を立てていう、この態度は日本も見習うべきだと常々考えております。
中国の主張を少し検証してみたいと思います。昨年11月の国連決議というのは、アメリカがキューバに対して行っている制裁を中止するように求める決議です。これは20年連続で採択されており、昨年も日本などを186ヶ国が賛成し、反対はアメリカとイスラエルだけでした。
実際、アメリカの国連軽視はこれだけに留まらず、アメリカ国内にいるユダヤ人問題のために、中東問題ではことごとくイスラエルよりの立場を表明しており、国際世論とはかなり異なる行動をとっているのは周知の事実です。
こうした欧米のダブルスタンダードについては「
中東民主化運動が与える影響(概観)」を見ていただければと思います。
アメリカが中国の人権問題について批判すると、中国はアメリカの黒人などに対する人種差別で応戦してきました。今回もある意味同じようなパターンとなっております。
「20年中国は一度も戦争をしていない」と述べておりますが、これはおそらく1984年から1989年まで続いた中越国境紛争を最後の戦争と見ているのかと思います。これはそれ以前はかなり派手に戦争をしていたからです。
4「平和を愛する国」中国?
「平和を愛する国」である中国は、1962年にはインドと、1969年にはソ連と国境紛争から軍事衝突を起こしております。1979年に至ってはベトナム侵攻を起こしており、先の1984年の国境紛争も中国軍による老山・者陰山の占領が事の発端です。
1989年の天安門事件はどうだったのか、中国は国内問題としているが、ウイグルやチベットなどの少数民族(独立運動)に対する「弾圧」をどのように考えるのかという問題もあります。
そういう意味でいくらでも論理の矛盾はあるわけですが、自分に都合の良い様に主張することは国際政治の舞台においては極めて重要なことです。中国だけでなく、アメリカなど欧米諸国もダブルスタンダードを平気で使用しているのは先に述べた通りです。
国際政治の舞台において、こうした自国の国益を主張することは極めて大事であり、国益を守るためには、日本の政治家、官僚にも必要な主張ができるようになってもらいたいと考えております。
この記事を筆者のブログで読む

中国ニュースをウォッチし、日本との関係を中心に考察。