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本間龍 東京五輪 ボランティアを殺す気か

東京五輪のボランティアが集まらない理由

 8月16日付の日経新聞に、2020年の東京五輪のボランティアとして学生を十分に確保できるかどうか、関係者の間で懸念が広がっているとの記事が掲載されています。文部科学省とスポーツ庁は大学などに対して、学生がボランティアに参加しやすいように授業や試験日程を弾力的に変更できることを通知するなど、何とかしてボランティアを集めようと躍起になっています。

 東京五輪のボランティアが集まらないのには明確な理由があります。それはあまりにも条件が悪いからです。ここでは弊誌9月号に掲載した、作家の本間龍氏のインタビューを紹介します。全文は9月号をご覧ください。

月刊日本2018年9月号
posted with ヨメレバ
ケイアンドケイプレス 2018-08-22

11万人をタダ働きさせる

―― 先ほどからお話を伺っていると、本間さんは東京五輪のボランティアに強い問題意識を持っているようですね。

本間 ボランティアの問題は、カネやメディアの問題よりも深刻です。これが東京五輪最大の問題だと思います。

 東京五輪はボランティアの存在を前提にしていますが、東京都は3万人、組織委は8万人、合計11万人のボランティアを首都圏から募集しています。五輪の試合会場は地方にもあるので、そこでも数千人単位でボランティアを募集しています。東京五輪全体では14~15万人のボランティアを動員することになるはずです。

 しかし、五輪ボランティアは無償です。東京五輪ではスポンサーから4000億円以上のカネを集めておきながら、10万人以上ものボランティアをタダで使おうとしているということです。11万人を日給1万円で10日間雇っても、110億円にすぎません。一体、いくら「浮かそう」としているのか。

 そもそもボランティアという言葉には「無償」という意味はありません。何より東京五輪の実態は「巨大商業イベント」にすぎず、公共性も非営利性もないのだから、ボランティアが無償である必然性は全くない。そこで私は組織委に「なぜボランティアが無償なのか」と質問しましたが、「一生に一度の舞台を提供し、多くの人々と感動を分かち合えるから」「一丸となって五輪を成功させ、世界中の人々と触れ合える場だから」など、意味不明な回答しかありませんでした。

 要するに、五輪ボラティアの実態は、美辞麗句で善意の人々を騙してタダ働きさせる「感動詐欺」「やりがい詐欺」だということです。

―― 善良な国民が食い物にされようとしている。

本間 いや、文字通り犠牲にされようとしているのです。五輪ボランティアは過酷です。参加条件は1日8時間、10日間以上従事できる人(今年6月に5日以上に変更)、本番までに行われる研修に参加できる人です。交通費、宿泊費は自己負担です。

 いいですか、真夏の炎天下で10万人以上のボランティアが5~10日間も1日8時間以上も活動したら、必ず熱中症で倒れる人が続出します。最悪の場合、死者が出ます。

 しかも、組織委にはこの危険性が分かっているのです。その証拠は、組織委が公表している「ボランティア戦略」です。ここでは、ボランティアの募集対象として「シニア・高齢者」は挙げられていません。なぜか。

 総務省の統計によると、熱中症で救急搬送される人と熱中症で亡くなった人の半数は65歳以上の高齢者です。組織委がこのことを踏まえた上で、積極的に高齢者の募集を呼びかけなかったのだと思います。

 最大の問題は、組織委は東京五輪では熱中症の危険性が高いと認識していることです。事実、東京五輪の開催期間(7月24日~8月9日)は日本が最も暑い時期で、選手、観客、ボランティアの人々が危険に晒されます。それを百も承知の上で、彼らは国際オリンピック委員会(IOC)に「この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」(立候補ファイル)と大嘘をついて、五輪招致を騙し取ったのです。そして10万人以上のボランティアを危険に晒してタダ働きさせようとしているのです。

 この事実はすでに批判の対象になっています。しかし、それでも組織委はボランティアにこだわり、アルバイトにしようとしない。その最大の理由は、アルバイトとして雇用契約を結ぶと、重症者や死者が出た場合に法的な責任が発生するからだと思います。ボランティアならば、重傷者や死者が出ても法的な責任は問われずに済むと。本当に汚いやり方です。

 社員の扱いが酷い企業を「ブラック企業」と呼びますが、五輪ボランティアはまさに「ブラックボランティア」なのです。……

ブラックボランティア (角川新書)
posted with ヨメレバ
本間 龍 KADOKAWA 2018-07-07

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