最近再び東シナ海での中国によるガス田の採掘の問題が取り上げられています。
今回話題となっているのは「樫」(中国名:天外天)というガス田。2008年6月に日中間で政治合意した文書では、「4.双方は、東シナ海のその他の海域における共同開発をできるだけ早く実現するため、継続して協議を行う」とされている「その他の海域」に含まれています。
そのため、我が国では、明確な合意違反なのだからきちんとした対抗措置を打ち出すべきだといった議論がある一方で今の政治は非常に動きが鈍い感じを受けますし、メディアも今ひとつ積極的ではない印象を受けます。
おそらくその理由は、この「樫」が以前議論の中心となっていた「白樺」と異なり、東シナ海における我が国の主張する日中中間線よりも中国側に明確に位置しており、油層についても白樺のように我が国の排他的経済水域(EEZ)にも広がっているといった見解もさほどないことによるものと思われます。
しかしここで一つ、日中の東シナ海における境界問題で明確にしておかねばならないポイントがあります。政治家、行政、メディアを通じて認識を共有せねばならないものです。
私も議員当時は任期を通じて外務委員会の委員でしたので、ずっとこの問題に取り組んできましたが、平成21年5月21日の衆議院外務委員会(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/171/0005/17105220005011a.html)における私の質疑に対する外務省の答弁で明確にされている点です。
それは「(委員御指摘のとおり、)我が国としましては、日中間においては、今、境界画定がなされていないという現状におきまして、国連海洋法条約、この関連諸規定を解釈しますれば、日本側からいいますと領海基線から二百海里までの大陸棚及びその排他的経済水域に対する権限を有している」という点です。
今なぜこの海域で、いろいろとここまで日本と中国の間でもめているかと言えば、通例領土から200海里の範囲で認められているEEZの範囲が、東シナ海においては両国間の距離が200海里に満たないので、重なってしまっているからです。そして、そこで折り合いを両国で見つけねばならないのですが、我が国が国際的な通例である両国の中間で線をひくという中間線を主張している一方(実は中国も南シナ海でベトナムに対しては「国際的な通例」ということで中間線を主張している)、中国側は、大陸棚は陸地の延長であるから、大陸棚が続く範囲、つまり沖縄トラフまでが中国のEEZだという主張をしていて合意ができていない、というのが今の状況です。
そうした中で、中国側は、既成事実の積み上げの目的もあって中間線よりも日本側の海域を係争海域として、調査を行ったり様々な行動をとっています。その一連の流れの中にあるのが今回の東シナ海のガス田問題です。
本来であれば外務省が国会で私への答弁で明らかにしたように、日中間で合意ができていない以上は、我が国が我が国の領土から200海里のEEZの権利を放棄していないわけで、我が国にとっての「係争海域」は当然中国が盛んに主張しているような日中中間線の日本側ではなく中間線よりも中国側の海域になるわけです。どうもここのところの民主党政権や政府の対応を見ていると、我が国までも日中中間線よりも日本側が係争海域と捉え、それよりも中国側の海域については権利の主張を控えているような気がしてなりません。
例えば今回の「樫」ガス田などは実はその係争海域の中にあるわけです。従って、境界の画定合意ができていない段階では、我が国の排他的な権利を主張すべきものであり、開発を進める権利も(反古にされつつある日中合意で自発的に留保してはいますが)存在しています。そうした主張をキチンと国際社会に対しても行いつつ、係争中の海域での調査、あるいは場合によっては試掘などの具体的な行動も中国側の中間線への態度を見極めつつとっていくことが今こそ必要とされています。
またもし、政権や政府がこうした態度を中国への過剰な配慮の結果とれていないとすれば、中国海軍の急激な軍拡・近代化も明らかになっている状況では、この東シナ海の境界問題は大きな禍根を将来に残しかねないわけですから、我々一人一人が声を大にしてこうした要求をしていかねばなりません。
今年は中国でトップリーダーの交代が予定されています。最初が肝心です。はじめの対応で配慮しすぎれば、おそらくそれ以上に強硬な態度を中国側は今後とってくることになる可能性が高い。それが歴史の教訓でもあります。
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