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悲観する必要のないGDP成長率

2011年10-12月期の実質GDP成長率が発表になりました。

 「前期比がマイナス0.6%で、年率換算するとマイナス2.3%だよ」

 そうなのです。またマイナスに後戻りしてしまったのです。でも、私は言いたい。決して悲観する必要はないと。

 「タイの洪水の影響や、ユーロ危機のために円高になったことが影響しただけということ?」

 まあ当然そういうこともあるのですが、しかし、それだけでもない。

 「どういうこと?」

 では、最近の実質GDPの推移と内訳をみてみることにしましょう。


<実質GDPの推移>

 単位:兆円
2008/1-3  529.7
2008/4-6 523.8
2008/7-9 517.6
2008/10-12 500.8

2009/1-3 481.2
2009/4-6 489.7
2009/7-9 488.8
2009/10-12 497.7

2010/1-3 505.1
2010/4-6 511.5
2010/7-9 514.4
2010/10-12 513.7

2011/1-3 504.6
2011/4-6 502.8
2011/7-9 511.4
2011/10-12 508.4

さあ如何でしょうか。リーマンショックが起きる前の2008年第1四半期以降の実質GDPの推移を表したものです。

 リーマンショックが起きる前の我が国の実質GDPの規模は530円兆円ほどであったのですが、それがリーマンショックを経て481兆円までにガタンと落ち込み、その後少しずつ回復し、2010年7-9月期には514兆円まで回復していたのでです。しかし、ご承知のように昨年大震災が起こり、また502兆円ほどにまで落ち込んだと。その後、2011年7-9月期には511兆円にまで回復し‥と思ったら、タイの洪水やユーロ危機があり‥ということでまた落ち込んでいるのです。

 2011年10-12月期は、確かにマイナス成長になっている、と。しかし、大きな流れから判断されることは、日本経済は再び回復に向かうということではないでしょうか。

 このように長い流れのなかで物事を判断するということも必要であるのです。

 「でも日本経済はデフレなんでしょ?」

 よく言われるのは、日本経済は消費が弱いと。人々が活発に消費しないから景気が良くならない、と。

 確かに少子高齢化が進展するので消費はかつてのような勢いはないのです。それに、例えば全国の小学生の生徒の数は、ピーク時の半分にも満たない訳ですから、モノの売れ行きが悪くなるのは当然です。

 だから、昔はよく売れていたのに‥なんていう夢を追いかけるのはもうやめましょう。昔は子供の数も多く、その上バブルまで発生したので、景気がよくなっても当たり前で、そんな昔のことをいつまでも忘れることができないから、日本はデフレだなんて必要以上に思ってしまうのです。

 そうではなく、これほど少子高齢化が進んだ日本だから、消費がいきなり活発になることなど、出生率が急上昇することなしには起こりえないと覚悟を決めたら、怖いものなどなくなってしまうのです。むしろ、日本の消費は底堅いな、と。

 では、個人消費の動きをみてみましょう。

 <個人消費の推移>

単位兆円
2008/1-3  298.7
2008/4-6 294.3
2008/7-9 294.0
2008/10-12 290.1

2009/1-3 287.7
2009/4-6 292.4
2009/7-9 292.4
2009/10-12 296.3

2010/1-3 298.7
2010/4-6 299.5
2010/7-9 300.5
2010/10-12 300.9

2011/1-3 297.5
2011/4-6 298.4
2011/7-9 301.5
2011/10-12 302.4

さあ、これが個人消費(民間最終消費)の最近の推移なのですが、どんな風にお感じになるでしょう?

 確かにリーマンショックの後には消費が弱くなっており、また昨年の大震災の影響も垣間見られる訳ですが、でも思ったほどは上がり下がりはないとは思いませんか?

 それに、個人消費の昨年10-12月期の水準は、2008年1-3月期を相当上回っていることも分かるのです。実質GDPの方は、2011年10-12月期は、2008年1-3月期のそれを大きく下回っているのにも拘わらず、です。

 つまり、我が国の個人消費は、思った以上に底堅く、我が国経済を支えているということが分かるのです。

 では、次に輸出の動向を見てみることにしましょう。

   <輸出の推移>

単位兆円
2008/1-3   91.9
2008/4-6 90.4
2008/7-9 90.2
2008/10-12 77.5

2009/1-3 57.8
2009/4-6 63.7
2009/7-9 69.3
2009/10-12 73.8

2010/1-3 78.4
2010/4-6 83.0
2010/7-9 84.0
2010/10-12 83.8

2011/1-3 83.5
2011/4-6 78.3
2011/7-9 85.0
2011/10-12 82.4

さあ、輸出の動向はどうでしょう? 2008年当初は、90兆円を超える大きさであった輸出が、リーマンショックによって60兆円を切る水準まで一時落ち込んでいる訳ですから、輸出は、個人消費と違って大きな変動を示すことが窺えるのです。で、その輸出もこの2年間ほど着実に回復傾向にあることが窺えるのです。

 2011年10-12月期に輸出が落ち込み、それが全体のGDPを大きく引き下げる主因になっているのですが、その輸出の落ち込みも、タイの洪水などによるものということで原因がはっきりしているので、一時的なものだと判断することができるのです。であれば、輸出もまた次第に回復するだろうと期待できるのです。

 こうやって見ていくと、確かに2011年10-12月期はマイナス成長になっているものの、今後も経済がマイナス成長を続けるとはとても思えないことがお分かりになると思うのです。

 でも、言っときますが、国内は、少子高齢化の影響でなかなか景気のいい話は起こりにくいということも事実なのです。ですから、日本の潜在成長率が諸外国と比べて低めに出ても、それを悲観する必要はない、と。そして、そうやって目標を低めに設定しておけば、我々が経済に関してそれほど失望することもなくなるということなのです。

 昔の夢よもう一度というのであれば、少子化の流れを逆転することが先ず必要でしょう。

 そして、私の以上の解説は、実質GDPの話であって、名目GDPについて見る必要があるという人々には次のように警告したいと思うのです。

 確かに、名目GDPの推移をみれば、我が国はおおよそ20年間に渡って伸びが止まっていると言っていいでしょう。しかし、我々の実質的な生活水準が分かるGDPで見れば、確実に成長を続けているので文句を言う必要はないのです。

 名目ベースで測定されるサラリーマンの収入が減っていると文句をいう人々がいることは承知しています。そして、サラリーマンには気の毒であるのもそのとおりです。しかし、そうやって名目賃金の低下を日本人が甘んじて受け入れるので、日本の輸出企業の競争力低下を少しでも食い止めることができているのです。そして、その結果、日本人の失業率はアメリカや多くの欧州諸国に比べると低くて済んでいるのです。

 プロの野球選手もサッカー選手も、ゴルファーも、皆人知れず大変な努力をして、大金を稼いでいるのです。我々日本人全体も、結局努力するかどうかにかかわっていることを認識すべきであるのです。日銀の魔法の杖に一振りでどうにかなるものではないのです。

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