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05月16日 14:50
日本の法律はガラパゴス

国交省は、関越道で7人が死亡したバス事故を受けて、バスなど公共交通の安全を確保するための「検討チーム」を設置し、どういう方向性で取り組むべきかの協議を始めたと言う。 子供でもあるまいし、今更「ど...
東京電力への政府からの資本注入を巡って、またドタバタがおこっています。東電はすでに原子力損害賠償支援機構から8,900億円の賠償資金支援を受けていますが、2月14日に昨年10-12月期の決算発表を控えており、債務超過ぎりぎりになるのではないかという予測報道がなされています。別に債務超過になったからすぐにどうなるというわけではありませんが、とりあえず一つの時間的な区切りとして考えられていました。東電は6,900億円の追加支援を申請中で、10日には支援が認可されるのでないかという予想がされていました。日経新聞などでも、9日の段階ですら「10日にも認定する方針」と報道していましたが、枝野経済産業大臣は認定を先延ばしにしたようです。大臣は新生東電になるという意思が東電側から伝わってこないという曖昧な表現で理由を説明していますが、東電の支配権を巡って政府と東電の間でなかなか話が詰まらないのでしょう。
皆さんもご存じの話だとは思いますが、今何が問題になっているかを簡単に纏めてみましょう。東電は原発事故の賠償、廃炉費用、そして燃料費の増加などによって経営状態が非常に厳しくなっています。政府は東電が被害者に対して迅速に十分な損害賠償が行えるよう、原子力損害賠償支援機構を設立し、機構を通して東電に資金注入をすることにしています。すでに8,900億円は東電に資金が渡っていますが、今回6,900億円の追加支援を東電は要請してきているわけです。これだけではおそらく足らないだろうと思われますので、おおよそ1兆円の資本注入が検討されています。今回の資本注入がこれまで政府が金融機関などに行ってきた資本注入と大きく異なるのは、優先株ではなく普通株で資本を入れようとしていることです。現在の東電の時価総額は3,200億円程度ですから、1兆円の資本注入をすれば会社の7割以上を保有することになります。
企業が発行する株式は、実は様々なものが可能です。通常は普通株と呼ばれるものだけを発行していますが、海外企業では何種類もの株式を発行する事例も良くあります。株式には色々な意味がありますが、最も重要視されているのは会社が清算した場合の残余資産請求権、利益配当を受ける権利、そして株主総会での議決権です。普通株の他に一番耳にすることが多いのは優先株と言われるものですが、一般に優先株は普通株よりも優先する残余資産請求権や利益配当権を持つ一方で、議決権が一部、または全部制限されることがあります。これに対して普通株は、残余資産請求権や利益配当権は最も劣後(低位)である代わりに、株主総会では完全な権利を持っています。勿論色々なパターンの種類株を発行することは可能ですから、これらの権利を組み合わせた株式を発行する事が出来るのです。優先株の逆に、議決権を多く持つ株を作ることも出来ます。話題になっているフェースブックの上場申請書類によれば、上場後も創業者が議決権の過半数を握り、社外取締役や一部の投資家の持ち分を合わせると8割以上の議決権を「身内」が保有することになるようです。
政府が金融機関に資金注入をする際は、優先株を用いてきました。理由はいくつもあり、それらが複雑に絡み合っていますが、大きく纏めると二つになります。まず、国庫からの資本注入ですから当然資産価値の保全に十分な注意を払う必要があり、普通株よりも優先権の強い優先株が望ましいという、経済的な理由があります。これに関連して、既存株主との関係も重要です。普通株による資本注入であれば、既存株主と同等な立場での資本参加と言うことになりますから、株主を助けることになるとも考えられます。国民感情的にそれは宜しくないということで、普通株よりも優先する優先株で資本参加というのが、政府の基本的な立場です。
もう一つ重要な理由は、会社の経営権に関するものです。株主総会での議決権はすなわち会社の経営に関与する権利です。政府が普通株による資本注入を行って大株主になった場合、経営に参加することになります。これは資本注入を受ける企業の立場から考えると非常に不自由になります。また政府の立場から考えても、大株主として企業経営に関与する事によってその企業の価値を高める能力があるのかという問題があります。また、株主というのは法律上は有限責任で有り、出資金以上の責任を外部に負うことはありません。ところが政府が大株主である会社が預金者や顧客に経済的な損害を与えることになったりすると、恐らく政府は知らんぷりを出来なくなるとも考えられます。これに関連して、政府が大株主になることにより、企業経営に何らかのモラルハザードが発生する恐れもあります。困難な事態になれば必ず大株主である政府が助けてくれるだろうから、少々危ないことでもやってしまおうというような考え方です。
この様な経済的、経営的な理由から政府は優先株による資本注入を常としてきましたが、今回は普通株による資本注入、それも普通株の50%超、あるいは三分の二超を取得することが考えられているようです。株主総会での議決に要する議決権の割合は、決議事項によって異なります。例えば会社の清算であったり、会社の姿を大きく変えてしまうような事項であれば、三分の二の賛成が必要になれます。勿論通常の案件は過半数で議決できます。普通株で三分の二超の議決権獲得につながるような資本注入は、資本注入を受ける東電の側から考えると、箸の上げ下ろしまで政府に指示されることになるわけですから、非常に嫌なものでしょう。従ってこの話には当然反対しており、1月に唐突に発表された大口料金値上げの話も、自分達が自力で収益を増やす力があるということを示したかったのだとも言われています。政府の側も、恐らく一枚岩では無く、大株主になることによる今後の財政負担拡大の危険性を懸念する財務省などは、当然反対でしょう。出来るだけ優先株にしたいでしょうし、普通株ならば少なければ少ないほど良いということになるはずです。但し、先に紹介したとおり現在の時価総額と想定される資本注入量を考えると、6〜7割の資本を政府が保有することになりそうです。実は会社法で、上場企業では議決権に制限のある株は全体の半分以下で無ければならないという規定が有り、全額優先株というのはいずれにせよ難しいのでは無いかと思います。
経産省や機構は普通株による大量の資本注入で経営権掌握を目標とし、一方で東電と財務省は出来るだけ額を少なくするか議決権の無い優先株にする事で、政府の経営関与を抑えたいと考えている、そんな構図が見えてくるわけです。両者の駆け引きはある意味どうでも良い話なのですが、普通株による経営権掌握というのは非常に重要だと私は思っています。
今回の資本注入の目的は大きく分けて二つです。一つは東電による損害賠償を迅速、確実にすること。つまりキャッシュフローを確実にすることです。これは増資による直接の資金注入だけではなく、併せて行われるであろうメガバンクからの融資、さらにいずれ再開されるだろう電力債再発行に向けての、信用力補完を目指しています。もう一つが、経営権を握ることによって、電力改革を東電から、つまりトップ企業から始めてしまうということ。私はこれが非常に大きな意味を持ってくるのではないかと思っています。
これらを考えると、持ち分比率は三分の二を超えることが望ましく、少なくとも過半数は必要になります。その場合には、どの値段で普通株を政府が購入するかを十分に考えなければなりません。既存発行株の何倍もの株式が発行されるわけですから、当然今と同じ値段になるはずはありません。ベンチャー投資での議論のように、資本注入前と後では会社が全く別の姿になるからです。価格を決める上でまず考えなければならないのがこの点で、注入される資本と刷新される経営構造をもとに、今後どの様な形に東電を変えていくかをまず考える必要があるということです。これは、どの様な形で資金回収をするのかという話にもつながります。例えば発送電分離や原子力発電の今後を考えた時、送電網と原子力発電、揚水発電などを国有化し、配電と一般的な発電を自由競争市場に委ねるということが考えられますが、そうすると将来の東電のキャッシュフローがどんなものになるのか、売れる資産は何なのかなどが見えてきます。
二番目に考えなければならないのは、既存株主の取り扱いです。マスコミ、世論的にはこれが一番の問題になりそうですが、これに関しては、とりあえず今回の増資を議決権のある種類株にしてしまえば良いでしょう。既存株主が保有している普通株とは別種の株式で資本注入をしておけば、ゆっくり時間をかけて既存株主との調整を行うことが出来るだろうということです。優先順位の低い問題に大事なことの邪魔をされるわけにはいきません。会社法を少し変更しなければならないかもしれませんが、全て技術的な問題です。
三番目は、政府が三分の二以上、あるいは過半数を保有するということで、実質的には損害賠償責任を政府が負うことになり、必要に応じて今後も追加出資を行う流れになるであろうことです。先にご説明したとおり、株主は有限責任ですが政府が株主の場合は一般にそうとも言えなくなります。大株主として経営に関与し、企業としての東電に出来るだけの賠償を行わせた後にそれでも足らなかったとしたら、原賠法とこれまでの原子力行政の欠陥を考えた時、政府がその後の賠償責任を負うのは必然的な結論だと私は考えています。従ってこの点に関しては、価格に特に反映させる必要はないと考えています。
枝野経済産業大臣は2月10日の記者会見ではっきりと、今回の支援は決算対策の資金ではないと話しています。これは非常に正しい、重要なことです。2月7日現在、東電が支払った賠償金は仮払い補償金と合わせても、3,700億円にとどまっています。一時的に債務超過になっても何の問題もありませんから、政府としてこれから東電の賠償責任をどのように果たさせていくつもりなのか、東電を通して電力産業の改革をどう進めていくつもりなのか、熟慮してぶれずに進めていかなければなりません。
昨年5月の「目ヂカラ」にも書きましたが、私は政府が超法規的措置を執るのではなく、あくまでも現存の法律、市場ルールに則った対応をすべきだと考え、東電に対して極めて安価(例えば1円)での増資を行えば良いと主張してきました。まず政府としては東電の自主再建に任せ、東電がそれを不可能だと判断した場合には株主総会が自主的に会社清算を決める、あるいは政府からの出資を仰ぐ形にすれば良かったということです。ところが政府は東電を債務超過にはさせない、潰さないと決め、支援機構を作ってしまいました。その為に、本来はもっと下落していてもおかしくない東電の株価が200円程度の水準にとどまるという、おかしなことが起こっています。この状態で政府が普通株で出資をすると、既存の株主が政府の支援機構設立という決断から利益を受けた形になってしまいます。しかし今回ご説明した様な種類株を用いれば、必要な額の資本注入と、政府が求める議決権割合を自由に達成することが可能です。東電は資本も資金も足らないから政府、支援機構に援助を求めているのであり、東電に選択の余地はありません。支援の前提として例えば自力で債務超過の解消を求め、出来ないならば政府が政府が定める条件で種類株を用いた出資を行うと、断固たる態度で通告すれば良いだけの話です。あくまでも正攻法で、しっかりとした対応が必要だと思います。話題の記事をみる - livedoor トップページ
みんなの党参議院議員。元JPモルガン証券取締役。





