意見をつなぐ、日本が変わる。

Old man at work.

2012年02月13日 09:00

南部 竜介

年金の給付開始年齢は徐々に上がっていて、支給額も減らす話が進むのだろう。そうすると高齢者が働く方法を考える必要がある、実際にそんな話を聞くようになった。年金システムについての賛否はあるだろうが、元気な高齢者が働くのは、個人的には賛成。


Men working / Fylkesarkivet i Sogn og Fjordane

労働人口が増えると経済が活性化するし、自分の意欲で収入を増やせると、趣味や贅沢を考えられる。「決まった収入で細々暮らす」以外の選択肢はあって良いと思う。

働く高齢者

既にテレビでも新聞でも、「働く高齢者」はいろんなところで取り上げられている。そのまんまの所では、高齢者のみを対象にした人材派遣サービス「高齢社」なんてのもある。

・リンク → 株式会社 高齢社

f:id:roy:20120213082121j:image

もちろん派遣される方だけで無く、会社自体が高齢者で構成されている。「高齢社」では「『社員≧顧客≧株主』(人本主義)を徹底する。」と明記しており、高齢者各個人の知識や体力に合わせた仕事を提供することを大事にしているらしい。これからは、このように高齢者をターゲットにし、仕事の斡旋や調整を行う会社も当然増えるだろう。

ただ、この会社は今まで働いて、これからも働ける人や、ノウハウのある人を主な対象にしている。ところが、実際には専業主婦で働いたことのない方もいるし、普通の仕事は体力的に厳しい人もいるだろう。こんな人に、60歳、70歳になって初めての派遣というのはかなり難しい。他の若い人達と同じペースで仕事を出来ない、という前提での職業斡旋も、考えられないだろうか。

山に入って歩くお仕事

例えばこういう仕事がある。

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生
そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生
  • 作者: 横石知二
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ

徳島の過疎の村で、「葉っぱを売る」ビジネスを興し、年商2億円をたたき出している、「株式会社いろどり」

既に各種ビジネス誌やニュースでも取り上げられ、有名ではあるが、その良さを分析するとともに、高齢者自身が稼ぐビジネスの形を考える。

葉っぱビジネスを分解する

葉っぱビジネスを簡単に要約すると「高級料理店等で飾りつけに使用される、料理に添える葉っぱ・枝を、山で取ってきて売る」というビジネス。お店は個人を選んで依頼するのではなく、必要な枝や葉の種類・本数などを「株式会社いろどり」に依頼する。

綺麗なお皿に季節の料理を載せても、そこに合わせる美しい紅葉の葉、というのは今まで売っていなかった。


Maple Leaf / BRAYDAWG

なんと以前はこの葉っぱを探すために、見習い調理師が近所の山に入っていたらしい。

タダの葉っぱが価格の付いた商品になる、という意外性が話題を呼び「売れない物を売る」「価値がないと思ってた物に、価値を付ける」

という側面が取り上げられることが多いが、高齢者の働き口としても優れた点が多い。

例えばこんな点。

  1. 連絡手段はFAX
  2. 完全成果給

なぜ今どきFAXなのか

レストランや料亭からはメールやFAXで連絡が入り、それを「いろどり」が各個人の家にFAX送信する。高齢者はメールや新しい機器の操作は苦手だが、FAXは使える。


Dinosaur Act / Sapphireblue

高齢者の力をビジネスにしようとか、過疎の村でも都会と同じサービスを導入しよう、といった掛け声はいいが、最新の機器を使いこなせず、今ひとつ浸透しなかったという例は多い。FAXはみんなが使えるシステムだという点と、導入に機器コストがかかっていない点が素晴らしい。

もちろんFAXでなければいけないわけではない。希望の住民全員にスマートフォンを配布し、バスの予約システムを作った自治体もある。


an evening playing 'smartphone' pub quiz with the exeter twitterati! / philcampbell

この場合は専用アプリを作成し、導入時にはかなりの時間をかけて説明会を行ったらしい。要は、高齢者をターゲットにするなら、高齢者に合わせた仕組みが必要だと言うこと。「そんなこと、当たり前じゃないか」と思うかもしれないが、既存の仕組みの中で高齢者を雇おうとすると、みんなにとっては当たり前の事が出来ずに引っかかる事がある。

自分も両親や祖母を見ていて思うが、高齢者になるほど新しい物を憶えるのは難しくなるし、難しいからこそ、憶える意欲がなくなる。視界が狭くなり、小さな文字が読めず、音も聞こえにくく、指先の細かな操作ができない。そうなった状態を想定し、「それでもこれなら使える」と思える仕組みを作れるか。決して既存のシステムの「簡易版」「ローコスト版」では済まない、新しい仕組み作りが必要になる。

はっぱ拾いにノルマはない

葉っぱビジネスにはノルマがない。各人の自己申告で、今日の成果は自分で決められるらしい。このメリットは二つ考えられる。

  • 競争を促進する
個人ノルマが決まっていないので、頑張ればたくさんの数をこなせる。この「頑張れば」が重要で、競い合うことで、元気になる。この事業がこれだけ取り上げられるのも、これが地域の活性化として役に立っているという側面がある。

何せ過疎の村で、仕事中は山の中に入ったっきりになる。

それでノルマをこなしているだけでは楽しさがない。「自分はこれだけやった」という指針があり、他の人と比べられることで繋がりができる。やはり人と繋がりができることが、仕事をする上では重要なのではないか。

  • 自分のノルマを調整できる
高齢者ばかりのため、どうしてもその日の調子にバラツキが出る。時給制ではどうしても忙しく動かなければ事業として成り立たないので、高齢者相手には難しい。自己申告でその日の成果を決められるのは、体力の調整弁としても非常に優れた制度だと言える。要は、「自分のペースで、好きなときに働ける」ということ これでお店からの依頼をきちんと処理できることは驚異だが、働く側としては自分のペースで仕事が出来る。

収入は完全出来高制なので、調子が悪ければ一日寝ていたって良いし、ゆっくり歩いて一つだけ良い葉っぱを見つけても良い。

完全出来高制は、むしろ体力のない高齢者にこそ適した制度だと言えるのではないか。

稼ぎたい分だけ稼げる仕組みを

葉っぱビジネスでは、自分の動ける範囲で、好きなときに働ける。でも実際、今まで自分で働いたことの無い人に、突然「自分で稼いだら?」と放り出されても呆然とするだけだろう。「葉っぱを拾って欲しい」というような、かなり明確な目的か、よほど簡単な仕組み作りが必要になる。

ネットでも、少額で簡単な仕事を依頼・受注するサイトが多数ある。

たとえばこちら。

・リンク → Lancers
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実際の仕事は、新商品などのネーミングアイデアの募集から、体験談の作成、入力作業など多岐にわたる。こんなイメージで、各種依頼を受けて作業して貰えば良いのではないだろうか。文字入力・書道・イラスト・音声書き起こし・裁縫・千羽鶴、なんでもいい。

七夕祭り / yuzuki

仙台七夕祭りの飾りとか、作るの大変らしい。
金を払って作って貰う物ではないという意見はあると思うけど、こういうのを作って貰うのとかどうなのかなぁ。
ネットやパソコンの作業ではなく、手作業ありきなら場所の提供ぐらいは自治体がやってもいいんじゃ無いか。遊んでいる公民館や会議室ぐらいはあるだろうし、元気になってくれれば医療費も安くなるし、もしかしたら税収が見込めるかもしれない。高齢者向けハローワーク、あるいはサロンとして。また仲介業者や自治体がその維持管理に人を割いても罰は当たらないだろう。

現在でも「シルバー人材センター」という非営利の公益法人社団があるし、折しも「ガイアの夜明け」では埼玉県・秩父市の「みやのかわ商店街」が高齢者を高齢者がサポートして、商品券を流通させる仕組みを紹介していた。この良いとこ取りはできないだろうか。

「繋がり」作り

高齢者が働くインセンティブには、利益だけでなくその作業を楽しんで頂くことが大事だと思う。それには次のような仕組みが考えられる。

  • 働いている人同士が繋がる「社交場」の役目を果たす
  • 働いている人同士を競い合わせる
  • 顧客と繋がる仕組みを設ける

「葉っぱビジネス」はBtoB(業務用ビジネス)なので顧客との繋がりはない。また働く場所が山の中ということで、作業中の交流もない。このため作業者同士を競い合わせる仕組みを取らざるを得なかったが、本当なら顧客と繋がるのが一番良い。
ビジネスではないが、人にとって「繋がる」事が大切なんだよ、という記事でこういうのがあった。
・リンク → 【特集コラム】親父にフィギュアSNS「fg」をやらせてみた « VSmedia
・リンク → 【特集コラム】親父にフィギュアSNS「fg」をやらせてみた、その後… « VSmedia
全くネットに興味の無い父親、そもそもネット環境に非常に制限がある田舎。
でも、そんな父親の趣味のペーパークラフトをSNSで投稿すると反響があり、父親も俄然のめり込むことに。
人から反応があるとやる気が出るし、力も入り作品のレベルも上がる。
このブログだってそう。

良い反応を貰えば嬉しいし、批判があれば何が悪かったか反省する。

ロクに反応のなかった一年、二年前より、今の方が書いていて楽しいし、書く内容も練るようになった。

独居老人や孤独死が問題視されて長いが、地域のコミュニティを作ろうとしても成功している例も、成功していない例もあり、まだまだ「これが正解」という段階にはないように見受けられる。

極論だが 年金を減らす → 働く必要性 → 働く場としてのコミュニティ形成
というストーリーはあり得ないのかな。

毎日病院に行って、「あの人今日来てないわね。調子悪いのかしら」

なんて笑い話になる状況よりはむしろ健全な気もするんだけど。

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