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日本人はドーナツに飽きたのか コンビニ失敗、専門店も不振

コラボ商品などの展開で集客増を狙うミスタードーナツ

デイリーヤマザキはコンビニの中でもドーナツ販売が堅調

 今から3年前にコンビニエンスストアがレジ横に専用什器を設置し、大々的に売り出したドーナツ。「ミスタードーナツ」をはじめ専門チェーンの牙城を脅かすのでは? と注目されたが、今ではすっかり影を潜めてしまった。とはいえ、専門店の業績も決して堅調とはいえない状況だ。もうドーナツは日本の消費者に飽きられてしまったのか。フードアナリストの重盛高雄氏が現場レポートする。

* * *

ほぼ毎日のように通うコンビニエンスストア。「セブン-イレブン」や「ローソン」などブランドは異なるとしても、1日1回以上通っているという顧客は多いのではないだろうか。そのコンビニの棚に大きな変化があることに気づいているだろうか。

「ドーナツ戦争」と呼ばれた戦いがあった。3年前の2015年、ドーナツといえば「ミスタードーナツ(以下ミスド)」という時代に、コーヒー戦争でマクドナルドを凌駕したコンビニチェーンが新たなる市場拡大を狙いドーナツで仕掛けたのだ。

 レジカウンター脇に場所を確保し、専用什器で様々な種類のドーナツを販売した。折しもミスドや「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の戦いに割って入ったこともあり、一段と話題を集めた商品だ。

 しかし、いつの間にかカウンター脇のスペースではドーナツを見かけなくなった。

 実際にコンビニドーナツを探してみると、多くの店舗において、当時レジカウンター脇の“好立地”に確保していたドーナツケースは見当たらない。近隣でようやく見つけたのは、有楽町ITOCIAの地下1階にあるセブン-イレブン。

 ケースの中にあったのは、〈口どけチョコのオールドファッション〉〈シフォンケーキ〉〈チョコマフィン〉〈沖縄黒糖のオールドファッション〉という4種のラインアップ。ホームページによると、一部店舗では全部で6種類の商品展開は継続しているようだ。

 だが、個包装され、コーヒーのお供というよりは単品販売の商品。発売当初とは大きく姿が変わったという印象を受けた。

 結局、ドーナツは戦略商品としての位置付けを失い、売り場における存在感をも喪失していった。今ではおやつやスイーツコーナーではなく、POPの都合上パンコーナーの一角に位置している単なる1商品に過ぎなくなった。

 コンビニドーナツが失敗した原因のひとつとして商品自体の設定を挙げる声が多い。

 今までコンビニはナショナルブランドを模した商品をPB(プライベートブランド)として開発、商品化していった。金の食パンなど価格は多少高いながらも独自の機能を持ったPB商品は、消費者から支持されコンビニの売り場におけるPB比率は高まっていった。

 コンビニドーナツも発売当初から、ミスドの商品と酷似していると評判になり、何かと比較される場面が多かった。コンビニのPBドーナツがミスドというNB(ナショナルブランド)商品の価値を上回る商品を提供できなかったのが、敗因のひとつとみる。

 もうひとつ敗因があるとすれば、消費者の購入スタイルの読み違いだろう。発売当初は、ドーナツの本場・ニューヨークで働くビジネスマンのように、「片手にコーヒー、片手にベーグル」というスタイルを模した販売イメージを持っていたに違いない。コーヒー戦争に勝ち抜いた余勢を受けて、“ついで買い”の効果を狙っていた。

 手に持つこと、食べ歩きを前提としたため発売当初は袋に入っておらず、購入時に2つ折りのペーパーで挟んで提供されていた。しかし、コンビニが誤算だったのは、日本の消費者の片手はすでにスマホで埋まっており、コーヒーとドーナツを両手に持つスタイルが確立できなかった。スマホとコーヒーですでに両手がふさがってしまう──このイメージが崩れたことから、コンビニドーナツの迷走は始まった。

 一方、長年日本のドーナツ市場をけん引してきたミスドも、コンビニとのドーナツ戦争に勝利したとは言い難く、経営的には苦しい様子がうかがえる。

 ミスドの親会社であるダスキンのセグメント別売上高・営業利益を見ると、2015年3月期の売上高482億円をピークに年々右肩下がりとなっている。直近の2018年3月期では376憶円とピーク期よりも約100憶円も売上高が下がっている。

 だが、営業利益では2015年約2憶円マイナスから2018年3.5憶円プラスと数年ぶりに赤字を脱した。2018年は客単価(全店ベース)、客数(同)、稼働店舗数ともに減少と明るい材料がなかったが、減価償却など経費減少の結果、営業利益のプラスを何とか捻出した格好だ。

 ミスド店舗に足を運んでみた。最近は集客の軸としてコラボ商品に力を入れている。例えば7月20日より発売となった『チーズタルド』は、ドーナツにPABLO(パブロ)のレアチーズホイップを乗せて商品展開している。

 また、コラボ商品と併せて昨年よりホットドッグやパスタなどを提供する「ミスドゴハン」を展開している。これはカフェタイムが主であったミスドにおいて、今まで来店していない客層の取り込みを狙った商品戦略だ。

 来店客の少なかった朝、そしてランチタイムの来店促進に向けて、ドーナツより少しボリューム感のあるサイドメニューを組み合わせることによる「ドーナツでは物足りない」層の取り組みも狙っているのだが、まだまだ周知の不足感が否めない状況だ。

 ドーナツ専門店として、もうひとつ気になるのが、アメリカから2006年に日本に上陸したクリスピー・クリーム・ドーナツの動向だ。

 上陸後、常に行列のできドーナツ店として話題になり、日本中に店舗を広げていったが、近年は撤退する店も増えた。事実、2016年には戦略の見直しと称して店舗を大量に閉鎖、そして店舗改装を実施している。

 店舗を訪れてみると、家族の構成人数が少ない日本で12個入りダズンボックスで販売していたり、数多く購入しないとおトクにならない価格設定があったりと、上陸当時はもてはやされた新奇性も武器にはならなかったというわけだ。

 味も日本人には甘すぎる。同社のドーナツを食して、改めて日本人はドーナツに繊細な味わいを求めていることに気づかされた。

 いずれにせよ、コンビニ売り場の縮小、ミスドの不振などを見る限り、ドーナツという商品の魅力は次第に薄れていることがうかがえる。健康志向の高まりにより、敬遠されがちな間食の代表になってしまった感もある。

 だが、このまま日本人の消費者に完全に飽きられてしまうのかといえば、そんなことはないだろう。子供のおやつの定番、小腹が空いたときの“鉄板スイーツ”として長年好まれてきた歴史もある。

 ドーナツは五感を刺激する素敵な食べ物である、と私は感じる。まず形や色合いを目で楽しみ、においを感じる。そして、口当たり、噛むときの音、日本人の繊細さにとても合う食べ物のひとつだ。

 そもそも、ドーナツには出来立てのよさと、時間経過のよさの2つのよさがある。

 揚げ物の一種であるがゆえに揚げたてが美味しいのはいうまでもないが、一方で時間が経過してから旨い状態になる商品も存在する。カリカリの外側が多少水分を吸収し柔らかさが増し、しっとり感が強調される時間帯。例えば焼きたてのさっくりした食感のカステラと日にちをおいて蜜が全体に染み渡ったカステラの違いを思い浮かべると分かりやすいのではないだろうか。

 そういう意味では、店舗でひとつひとつ手作りされ、出来たてを提供しているミスドのドーナツ。そして、時間がたっても熟成(食べ頃)の時間帯に食べてもらうスタイルのコンビニドーナツは十分に棲み分けができる。その他、カロリー控えめの商品や原材料を変えた新商品など、新感覚ドーナツを提供することも可能だろう。

 今後、再びドーナツが魅力的な「定番おやつ」としてクローズアップされる日が来るか。各社の商品展開に注目したい。

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