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「自分は何のために働くのか」を常に自問自答し続ける必要があります。幸福に生きることができなければ、働く意味はありません - 「賢人論。」第69回岸見一郎氏(後編)

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アドラー心理学では、人間の悩みはすべて対人関係の悩みであると捉え、人間に対して独自のアプローチを試みる。働き方改革が声高に叫ばれる今日の日本で、人は何のために、どのように働くべきなのか。岸見氏ならではの視点から、働くこと、生きることを考察する。

取材・文/盛田栄一 撮影/岡屋佳郎

「いくら働いても幸福にならない」という人がいたとすれば、その人は仕事内容や働き方を見直す必要があります

みんなの介護 先頃、国会で働き方改革関連法が成立しました。働き方改革では、長時間労働の是正が大きなテーマになっているのと同時に、国際競争力を高めるために、いかに労働生産性を上げるかが課題となっています。今話題になっている働き方改革について、岸見さんはどのように見ていますか?

岸見 私たちは、働くために生きているのではありません。生きるため、幸福になるために働いているのです。もしも、「いくら働いても幸福にならない」という人がいたとすれば、その人は仕事内容や働き方を見直す必要がありそうです。

国会で成立した働き方改革関連法は、働き方改革ではなく“働かせ方改革”です。企業側の論理で成り立っている法律ですから。ともあれ、今、働き方を改革するのであれば、人間は何のために働くのか、その根本から考え直さなければならないでしょう。

みんなの介護 今の若い人たちの働き方については、どんな印象を持たれていますか?

岸見 数年前のゴールデンウィークに、この書斎に来た青年のことを今でもよく覚えています。彼は、ある大手企業に入社しましたが、なんと1ヵ月で辞めました。

なぜ辞めたかというと、彼の先輩や上司に、幸せそうに見える人が1人もいなかったから。このままこの会社で働いていれば、30歳でマイホームが建てられそうだけど、40歳で墓を建てることになるかもしれない。そんな未来が見えてしまったそうです。

彼の決断を愚かだとはいえる人は、おそらくどこにもいないでしょう。自分の命を削ってまで働く意味など、どこにもありません。それはほとんどの人がわかっているはず。それにもかかわらず、実際に過労の状態が何日も続いてしまうと、人は冷静な判断力を失い、いつの間にか「うつ」や過労死の一歩手前にまで追い込まれてしまいます。

だからこそ、「自分は何のために働くのか、それは幸福になるためである」と、常に自問自答し続ける必要があります。いくら給料が高くても、いくら社会的地位の高い仕事でも、幸福に生きることができなければ、働く意味はありません。

幸福は量を測ることができず、各人にオリジナルなもの。誰かが誰かの幸福を模倣することはできません

みんなの介護 今の若年層の中には、幸福になるために、高い給料やステイタスを求める人もいるようですが…。

岸見 そういう人は、「幸福」と「成功」を同じものだと考え、人生の目標を「成功」に置いているのです。幸福と成功とは、もちろん別のものです。成功とは、「年収1,000万円」など量的に測れるものであり、誰でも模倣することができて、また嫉妬を生みやすいものでもあります。一方、幸福は量を測ることができず、各人にオリジナルなものなので、誰かが誰かの幸福を模倣することはできません。

生産性ばかりが重視される現代社会においては、どちらかというと、幸福より成功を目指している人のほうが多いように感じます。例えば、結婚相手の条件にしても、年収○○万円以上とか、一部上場企業に勤めていなければダメだとか。それらの条件をすべてクリアした相手であっても、幸福な結婚生活が送れる保証など、どこにもないのですが。

みんなの介護 もしかすると、現代社会に生きる人々にとって、「成功より幸福を重視すべきだ」という発想は、なかなか抱きにくいのかもしれません。

岸見 確かにそうですね。私自身、心筋梗塞という大病を経験していなければ、今のような考え方を持てなかったかもしれません。病気になっていいことは一つもありませんが、自分についていえば人生を見直すチャンスにはなりました。

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