「75円63銭で介入し、78円20銭でやめた」
大胆というか恐いもの知らずというか、或いは国際オンチなのか。
いずれにしても、唖然としたというのが第一印象。でも、そこまで言うからには覚悟があったのかもしれない。
こんなに超円高で日本経済が危機に瀕しているのに‥そして、自分は為替をコントロールする立場に今や就任しているのに、何もできないなんておかしい。介入をして何が悪いのだ。無制限に円安に誘導してズルをしようというのではなく、余りにも急激な円高を少し静かにさせようとしているだけではないか。それなのに海外から文句を言われなければいけないのか、と。
ひょっとしたら、欧州中銀のドラギ総裁が、日本は単独介入をすべきではないと批判したことにムカッときたということなのか?
私は思ったのです。そこまで具体的な数字を示して介入の事実を世界に明らかにすることになると、後々米国の財務省などとの間で問題にならないのか、と。何故ならば、そこまで具体的な数字を示して介入の事実を明らかにするということは、日本がある目標値に為替レートを誘導したということの証拠になる訳ですが、それは国際間の約束事に反するからです。
先日、トヨタが、ドル円が78円だと利益を挙げることができると言ったばかりです。偶然の一致かもしれませんが、78円20銭で介入を止めたなんというと、憶測を呼ぶと言っていいでしょう。
では、国際間の約束事とは?
第一に、為替レートの決定は、基本的には市場に任せる。
第二に、仮に為替レートが経済ファンダメンタルズを反映しない状況が発生した場合には、各国が協調して介入することはあり得る。
第三に、協調して介入する場合でも、介入は市場の乱高下を正すために行うものである。
まあ、以上のようなことが国際間で合意されていると考えていいでしょう。だから、仮に日本が介入に踏み切る場合でも、以上の原則からなるだけかい離しないことが必要になるのです。逆に言えば、以上の原則を無視すればするほど、関係国から日本が批判される可能性は大きくなる、と。
で、案の上欧州中銀が批判をしたという訳なのです。そして、それに安住大臣が軽率に反応して、数字まで示してしまった、と。
でも、物語はそれで終わりではないのです。何とそれほど強気の安住大臣が次のように言っているのです。
「水準なんて一切言っていない」
ああ、政治家の言葉の何と軽いことか。寂しくなってしまいます。
でも、何故、安住大臣は、前言を翻すようなことを言っているのか?
つまり、安住大臣は、単なる内弁慶に過ぎないということです。家のなかではどれだけでも威勢のいいことは言える。或いは、国内では幾らでも威張ることができる。しかし、いったん外に出ると‥すっかりおとなしくなって。
安住大臣は、自分がとんでもないことを国会で言ってしまったことを、後になり事務方から指摘され‥そして、水準に言及したのではないと言っておかないと、今後国際舞台で追及されることになると知らされたのでしょう。
もちろん政治家ですから、「従来のルールはルール。しかし、私はそんなことに関知していないのだから、今後は好きなようにやる。何だったら欧米を説得する」なんてところまで行けばむしろ格好いいのですが、結局内弁慶でしかないのです。
まあ、こんなことですから、語学ができるとかできないとかという以前に、日本の政治家は国際舞台で注目されることが少なくなっているのでしょう。日本の政治家と話をしても、殆ど得るところはない、と。
何と寂しいことでしょう。日本の世界における地位の低下はそんなところでも感じられる訳なのです。
寂しいと言ったら、この前のサッカーの試合。そうシリア戦。寂しかったですね。最後にロングシュートで決められるなんて。まあ、あれは相手が運がよかったというべきか。
「サッカーの試合みた? 悔しいね」
「知りません」
「知りませんじゃなく、見たでしょ?」
「知りません」
「シリマセンではなく、シリアセンだけど‥」
私、あの試合を見ていて、悔しいということ以外に、非常に憤りを感じたのです。どうしてまだ僅かに時間が残っているのに、日本が負けて2位になった紙なんかをテレビで見せるの? まだ、みんな応援してるのに。アホか!
やっぱり、負ける時とはこういうものなのでしょう。
で、ついでと言っては何なのですが‥あの試合をみて私は感じたのです。サッカー場にスポンサーの名前が掲示されていましたが、1社だけ日本語の表記だったのです。
私たちは日本人ですから、ローマ字のなかに日本語を見つけると、嬉しいというか、すぐ反応してしまうのです。
でも、私は思いました。試合が行われているのは外国の競技場じゃないのか、と。だったら、日本語の表記では外国人には理解できないだろう、と。
どうしてなのでしょう。他は皆、ローマ字表記で外国人でも一応読むことができるのに、一社だけ日本語なんて。よっぽどライトウイングの会社なのか?
実は、その会社は朝日新聞社。
何故、朝日新聞社は漢字表記を採用したのか?
第一の理由は、サッカーの試合をテレビで見ているのは、殆ど日本人だからと思ったからでしょう。でも、海外の人もひょっとしたら見るかもしれないのに‥。
結局、その大新聞社は、海外での知名度がないことを認めたことに他ならないのです。幾らローマ字で表記しても、海外の人が朝日新聞を読んでくれることはないだろう、と。
まあ、朝日に限らず読売も日経も、海外でどれほどその名が知れ渡っているというのでしょう。我々日本人は、フィナンシャルタイムズやウォールストリートジャーナルやワシントンポストと言えばすぐ分かる。そして、日本のことが書いてあれば、大変気になる、と。しかし、海外の人は、果たして日本の大新聞に書いてある自国の記事に関心を示すのか?
答えは、ノーであるのです。
日本の新聞社が書いていることなんて、全然関心がない。それに、そもそも日本の新聞社が国際的な出来事について、世界をリードするようなことをどれほど書いているのか、と。もちろん、日本語という特殊な言語を使用しているということも少しは影響しているでしょうが、いずれにしても日本のマスコミは世界で認められているとは言えないのです。
で、その結果が、正直にサッカー場の看板に表れたということなのです。
結局、日本の新聞社も内弁慶でしかない。
高学歴な人々が働いている政治の世界と新聞の世界が、もっと国際化する必要があるのではないでしょうか?
フィナンシャルタイムズがああいったこういった、なんて記事を書くより、もっと現在のユーロ危機に
ついても、日本の新聞社は有益なアドバイスをすべきであるのです。
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くだらない官僚ではなく、天下らない元官僚。経済コラムニスト