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「日本版カジノ」導入 ギャンブル依存症対策が急務

(リベラルタイム2018年8月号掲載)
日本財団理事長 尾形 武寿

カジノを含む総合型リゾート施設(IR)実施法案をめぐる国会審議が大詰めを迎え、西日本豪雨対策など流動的要素があったものの、七月二十二日まで延長された今国会で可決・成立し、関連法などの整備を経て注目の候補地決定に進む見通しとなった。

これに先立ち、二〇一六年末にはIR整備推進法、七月にはIR実施法の前提となるギャンブル依存症対策基本法が成立し、日本版カジノ導入に向けた流れが加速してきた。

この間、政府がIR誘致による地域振興や雇用効果を訴えたのに対し、野党は地域活性化やギャンブル依存症対策の効果に疑問を投げ掛け、与野党ともに内部の意見割れもあって国民には分かりにくい経過となっている。

最大の原因は、焦点となっているギャンブル依存症の定義。「賭け事にのめり込み、日常生活や社会生活に支障が生じ、治療を必要とする状態」、「ギャンブルに心を奪われ、やめたくてもやめられない状態」といった解説が多く見られるが、これでは具体的にイメージするのは難しい。

厚生労働省が一七年に成人一万人を対象に行った調査(有効回答率四七%)では、生涯にギャンブル依存症が疑われる状態があった人(生涯有病率)は三・六%、直近一年のギャンブル経験から依存症が疑われた人は0・八%。二十〜七十四歳の全人口に当てはめると、生涯では三百二十万人、直近一年では約七十万人に依存症の疑いがある計算となる。

生涯有病率はフランス、オランダの一%台に比べ高い数字となるが、最も金が使われたのは全国で一万を超すパチンコ・パチスロ店で一概に比較するのは難しい。治療面も「問題を抱えて人の八割が自然に回復した」といったデータから「治らぬ病」とする見解まで幅がある。

全国モーターボート競走施行者協議会では東京・新橋にギャンブル依存症予防回復支援センターを設け、昨年十月から専門のカウセラーが二十四時間態勢で電話相談を受け付けており、三月までの半年間に計二百六十三件の相談が寄せられた。うち百五十五件は本人からで、センターの勧めで実際に診断を受け、センターが初診料を負担したケースは一件にとどまり、実態が見えてくるのはまだ先になる。

もう一点、よく分からないのがカジノのほか国際会議場、ホテル、劇場・映画館などが一体となった複合観光施設IRの効果。国会審議で政府は、一一年に二ヵ所のIRが開業したシンガポールでは、〇九年に九百六十八万人だった外国人旅行者数が五年後、千五百十万人に拡大したほか、外国人旅行者消費額も一兆円から一兆八千六百億円に増えたと報告している。

これに対し野党は、過当競争からカジノが倒産した米国の例を引き合いに反対しており、日本でIRが導入された場合の姿は、実際に出来てみないと分からないというのが実感だ。

各メディアの世論調査によると、概ね六〇%前後がカジノ解禁に否定的な回答を寄せ、有力な候補地とされる横浜など自治体の議論も事態を静観する傾向にある。調査結果の数字は積極的な反対というより、依存症やIRの姿が見えてこない現状に対する不安が投影した結果のような気がする。

我国は刑法で賭博を禁じている。ただし競馬、競輪、オートレース、ボートレースに関しては収益金を社会福祉などに還元するのを条件に、特別法で開催を許可している。運営主体はともに公共団体、これに対しカジノは民間業者が運営主体となる。

個人的にはカジノの導入に問題はないと思うが、健全な遊技場となるには公正と透明性が不可欠。ボートレース場も例外ではなく、改めて、その思いを新たにしている。

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