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空自F2後継機が試金石 第6世代戦闘機のコンセプトとは 完全ステルス、遠隔操縦も

第6世代戦闘機「テンペスト」の開発を目指す英国

第6世代戦闘機テンペストのモックアップ(筆者撮影)

[英南部ファンボロー発]世界最大級の航空展示会「ファンボロー国際航空ショー」(7月16~22日)初日の16日、英国のギャビン・ウィリアムソン国防相は現在の主力戦闘機ユーロファイター・タイフーンの後継機として2035年までに第6世代戦闘機テンペストの開発を目指すと公表した。

「戦闘機戦略」を発表するウィリアムソン国防相(BAEシステムズのHPより)

ドイツとフランスが今年4月に仏ダッソー製ラファールとタイフーンの後継機(第6世代)の共同開発を宣言。このため、来年3月末には欧州連合(EU)を出ていく英国は独自の第6世代戦闘機のコンセプトを打ち上げる必要に迫られていた。

ウィリアムソン国防相は、英国防・航空宇宙関連大手BAEシステムズの展示会場で公開されたテンペストのフルサイズモックアップの前で「戦闘機戦略」を発表。「わが国はこの1世紀、戦闘機分野で世界の先頭を走ってきた。これからも世界のリーダーであり続けるための戦略だ」

「我々は脅威が増大する未来に、空を守るために同盟国と協力する準備があることをこの戦略は示している。テンペストのコンセプトモデルは未来がどのようになっているかを少しだけ見せるものだ」と力説した。

ウィリアムソン国防相が明らかにした「戦闘機戦略」の骨子は次の通りだ。

(1)英空軍は4大陸22カ国で15のミッションに参画
(2)英国の戦闘機部門の売り上げは年60億ポンド、熟練労働者1万8000人の雇用を生み出す。過去10年間の武器輸出の8割強を占める
(3)タイフーンへの投資
(4)タイフーンと第5世代の米ステルス戦闘機F35の改良
(5)最先端技術の競争力確保
(6)第6世代戦闘機を開発するための同盟国との協力

ファンボロー国際航空ショーで飛行展示されたF35(右上)とタイフーン(筆者撮影)

チーム・テンペストにはBAEシステムズ(戦闘機のシステムと統合を担当)のほか、英航空機エンジン大手ロールス・ロイス(エンジン担当)、イタリア防衛大手レオナルド(センサーや航空電子機器を担当)、欧州ミサイル大手MBDA(ミサイルなどを担当)が参加する。

ウィリアムソン国防相は2025年までにテンペスト開発に20億ポンド(約3000億円)を投じるとぶち上げた。英空軍のタイフーンが実際に退役するのは早くて40年。20年末までに最先端技術の獲得方法を確定し、25年には投資額を最終決定するという。

テンペストの操縦席(筆者撮影)

テンペストは21世紀の技術を集めた”空想の産物”

筆者はテンペストのフルサイズモックアップでバーチャル・リアリティ(VR)のゴーグルを着用し、第6世代戦闘機の感覚を体験した。モックアップ機のダッシュボードは無味乾燥で、VRの中で手や指を動かせば、いろいろな操作ボタンが飛び出してくる。

テンペストのVR(筆者撮影)

これなら実際の操縦席に座らなくても世界中のどこからでも操縦できる。「夢の」というよりテンペストは21世紀に求められる技術のコンセプトを集めただけの「空想の産物」に過ぎないのだ。

ステルス性を高めるため尾翼は最小化され、機体表面の装備は何もない。人工知能(AI)や機械学習で攻撃精度を上げ、指向性エネルギー兵器(DEW)のレーザー光線、マイクロ波、粒子ビームで敵に打撃を与える。

モックアップならフルサイズでも高くつかないが、実際にテンペストを開発・製造するとなると、3000億円どころの話では済まない。

機密性が求められるためコスト削減が難しく、市場も限られている軍需産業はいずこも同じで存続のリスクがつきまとう。ロールス・ロイスのウォーレン・イーストCEO(最高経営責任者)はこう本音を漏らした。

「英政府の長期にわたるコミットメント表明は、国家としての開発能力を維持する上で極めて重要な専門性やキーとなるスキルを弊社が守る助けになる。未来の戦闘機に求められる最先端技術を開発し、提供できることを確実にするものだ」

「最も高価な戦闘機」と揶揄(やゆ)されるF35の開発には4000億ドル(45兆円)強が必要と推計されている。ロイター通信はテンペスト開発に関し、「スウェーデンは興味深い対象国だろう。日本を含め多くの国々と話している」という英空軍幹部のコメントを伝えた。

平べったいテンペストの機体(筆者撮影)

日本のF2後継機の開発は試金石

どうして日本の名前が飛び出したかと言うと、 30年代に退役する航空自衛隊のF2戦闘機の後継機選びが本格化しているからだ。防衛省は(1)国産開発(2)国際共同開発(3)F2改良による延命(4)外国機種購入という選択肢の中から、国際共同開発を選んだ。

昨年3月、防衛装備庁は「将来戦闘機の日英共同スタディに関する取り決めの締結」を発表。日英両国がそれぞれ検討を進める将来戦闘機と将来戦闘航空システム(FCAS)に関する情報交換を行い、将来の協同事業の可能性について意見交換する方針だ。

防衛省は今年3月、BAEシステムズ、米国勢のロッキード・マーチンとボーイングに国際共同開発に必要な情報提供を行うよう呼びかけ、ロッキードは世界最強のステルス戦闘機F22とF35を組み合わせた「ハイブリッド戦闘機」案を非公式に日本政府に打診したと大きく報じられた。

BAEやボーイングも夏までに日本に提案する予定だ。

中国人民解放軍は第5世代のステルス戦闘機J20(殲撃20型)やFC31の開発を進め、ロシア軍もF22に匹敵する性能を持つとされるSu(スホイ)57をシリアに展開している。

「中国が独自開発したJ20は20年までに前線への実戦配備が開始される。米国だけがステルス戦闘機を作戦で運用できた独占状態は失われるだろう」と英有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は警鐘を鳴らす。

第6世代戦闘機の開発は西側諸国の優位性を維持するために喫緊の課題だが、米空軍研究所でさえ今年3月に尾翼のないステルス機でVRを導入した操縦席という大まかなコンセプト動画を出した程度。F22やF35 に比べ、航続距離、兵器の搭載量、ステルス性、電子攻撃の大幅な向上を追求するとみられている。

読売新聞によると、日本政府から米英両政府に伝えられたF2後継機の設計構想は(1)小型ドローンを子機として搭載(2)F35A の倍の空対空ミサイル8発を内装(3)F35Aと同等以上の航続距離・ステルス性・レーダー探知距離――とされる。

ユーロファイター社首脳の1人が筆者に耳打ちした。「第6世代の戦闘機がどうなるかなんて現時点で予言できる人は誰一人いない。日本のように英米の大手3社に打診して良いものを選んでいくやり方が理にかなっている」

おそらく欧米が協力しないと第6世代戦闘機を開発するのは難しい。第5.5世代と位置づけられるF2後継機の開発はその試金石だ。日本としては国際協力の中でいかに自国の防衛産業・技術基盤の維持・育成を図るかも問われている。

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