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福祉避難所が機能せぬ日本に「超高齢化社会対策」など出来るのか


阪神淡路大震災がきっかけとなり設置された「福祉避難所」をご存知でしょうか。被災した高齢者や障害者を受け入れることができる避難所ですが、様々な問題のため、その運用は当初想定していたものとは大きくかけ離れたものとなってしまっています。健康社会学者の河合薫さんは、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の中で今回、この「福祉避難所」の実態を紹介するとともに、日本が「超高齢化社会対策ができている国」となるために国民一人ひとりが意識すべきこと、実践すべきことについて話し合わなければならない時に来ていると記しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

介護は介護の問題にあらず。「福祉避難所」とは何か?

みなさん、福祉避難所って知ってますか?

これは災害などで避難する際に、高齢者や障害者を受け入れることができる避難所で、一般避難所に避難したのち、必要に応じて移る二次的な避難所です。

福祉避難所設置のきっかけは、1995年1月の阪神淡路大震災でした。

当時、体調の悪化や周囲となじめないなどの理由で避難所から出て行ってしまう高齢者や障害者が相次ぎ、「災害弱者を守る避難所を作ろう!」と気運が広がりました。

しかし、「うまく機能させる」難しさは、実際に災害にあわないとわかりません

例えば、東日本大震災で被災した高齢者や障害者は、施設から施設へ、地域から施設へと移送され、たらい回しにあいました。環境の変化は被災した人たちにとって最大のストレスです。

そのストレスが引き金となり、せっかく災害で守られた命が奪われる。いわゆる「震災関連死」が後を立たず大きな問題となってしまったのです。

そこで東北の教訓を生かそうと、全国の地方自治体が福祉避難所設置を積極的に進め、2014年10月時点で全国の7,647施設まで増加しました。

「福祉避難所が近くにあれば震災関連死を減らすことができる」

そう多くの自治体は考えていたのです。

しかしながら、2016年に起きた熊本地震では、地震発生から1週間後、福祉避難所に避難できた高齢者はわずか70人要支援者は1,700人と予想されていた)。

理由は施設も施設で働く人たちも被災し、「受け入れたくても受け入れられない」という厳しい現実でした。

福祉避難所に入れない人たちは一般の避難所での生活を余儀なくされ、学校の先生たちがケア。その負担は大きく、介護経験のない先生たちにとっても、また介護を受ける高齢者たちにとってもストレスになってしまったのです。

当時は「1週間後にわずか70人」という衝撃的な数字であったため、新聞やテレビも報道。話題となりました。

私自身、出演していた番組で「福祉避難所の実態」を取り上げ、問題提起。反響も大きかった。誰もが「そうだよね。どうにかしなきゃ」と“その時は共感したのです。

そして、今回。西日本豪雨では、岡山、広島、愛媛の3県の「福祉避難所」は46カ所で開設され、計253人が利用。熊本地震より増えたとはいえ、避難をあきらめ、在宅で生活している人も多いのでは? と懸念されています。

つまり、相当数の災害弱者が孤立している可能性」があると指摘されているのです。

ところが、この大切なニュースを報じたのは一部の新聞のみ(毎日新聞)。私が知る限りテレビではあまり取り上げられなかった

数年後に待ち受ける超高齢化社会と、いつ、どこで、災害が起きてもおかしくない災害大国であるにもかかわらず、です。

こういう時こそ、もっともっと大々的に報じる必要があるのに、残念です。本当に残念です。

介護の問題って介護だけの問題にしておいてはダメだと思うんです。

一般の人たちがどうやって助けるか?が大切で、普通の人たちでも介護ができるようにする。介護の専門家が一人いれば、すべての人たちがそのヘルプをできるくらい介護の知識と経験が国民全員にあればいいんじゃないかと。

介護といっても、身の回りのお掃除もあれば、食事を出す、話すということも介護だしトイレのタイミングやトイレに行きたがらない高齢者の促し方をみんなが「当たり前」に知ってるようにする。そんな「超高齢化社会対策ができてる国」にするにはどうしたらいいのか?

それを「今」議論する必要があると思うのです。

参考になるのが北海道の当別町です。

当別町では平成14年から地域福祉計画で「北海道医療大学との連携促進」が掲げられ、地域の大学・学生とともに地域福祉に取り組む方針が示されました。

学生たちが高齢者と触れ合い、ボランティアが日常的に高齢者を支える。そうすれば必然的に介護を経験できます。

また、高齢者自身もボランティアに参加するなど、地域のメンバーの一人として活動する。そこで暮らす全ての人たちが年齢や障害に関係なくつながる取り組みを進めているのです。

昔から「村祭りの多い地域は災害に強い」と言われてきましたが、これからは「介護を軸に地域で繋がっていく地域が災害に強い地域になっていくと思います。

みなさんの町は? 市は? どうですか? みなさんのマンションはどうですか?

この機会にぜひ、確認してみてください。

image by: Shutterstock.com

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