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運用に幅を持たせるのは無理なのか!

自立意識阻害する生活保護費基礎控除
低迷する就労継続支援B型事業の工賃

20万人を超す全国の障害者が利用する「就労継続支援B型事業」。このほどまとまった事業者アンケートでは、月額1万5千円前後で低迷する「工賃」と生活保護費の基礎控除との相関が鮮明になった。工賃が基礎控除の下限である約1万5千円を超えると、その分、生活保護費が減額される仕組みになっており、これが自立意識の高揚を阻害する結果になっている。

打開策として厚生労働省は今年4月の報酬改定で、平均工賃がアップすればB型事業所を運営する事業者に対する基本報酬を上積みする方式(目標工賃達成加算)を導入した。平均工賃の引き上げを実現すれば事業者報酬を上乗せし事業所経営者の意欲を刺激するのが狙いとみられる。

筆者は以前、本ブログで平均1万5千円の工賃の低さを「理解に苦しむ」と書いた。今回は報酬改定に疑問を提示したい。第一に何よりも変えるべきは、事業者よりもB型事業所を利用する障害者の意識だと思う。そのためにも基礎控除額の運用に幅を持たせられないか、ということだ。

B型事業所の利用者の多くは障害年金と生活保護費の給付を受け、生活を成り立たせている。生活保護費は地域や家族構成などで決まるが、例えば大都市部の単身者の場合は約13万円。基礎控除を上回る額が生活保護費から減額される現在の方式では、工賃が1万5000円でも、頑張って3万5000円にしても、本人が手にできるのは、ともに14万5000円となる。

これでは就労意欲が高まりにくい。事業者の報酬加算と同様、B型事業所を利用する障害者に関しても、例えば基礎控除額を上回る工賃の半分を本人に還元するような工夫が必要ではないかと思う。自立意識が高まり大幅な工賃アップにつながれば、その先には生活保護費抑制の可能性も出てくる。

今回、3000を超す全国のB型事業所から回答が寄せられたアンケート結果でも、平均工賃は月1万〜1万5000円、平均就労時間は週20〜25時間が最も多く、工賃が基礎控除額前後にとどまるよう就労時間が調整されている現実がうかがえる。

次に、かねて感じていた疑問だが、現在、B型事業所は全国1万800ヶ所にあり、22万7000人が利用している。対象は、一般就労が難しい重度の障害者とされるが、障害の種別は「身体」、「知的」、「精神」、「難病」など多彩で、就労に向けた訓練の場と位置付ける人から、安心して日中を過ごせる「居場所」、「安らぎの場」として利用する人まで幅がある。

障害の程度、利用目的にこれだけ幅がある人たちを「就労支援B型事業所」の名で一つに束ねていくのは無理なような気がする。アンケートには「就労訓練と居場所を別の事業として行うべきだ」、「障害が重い人を受け入れている事業所は生活介護事業に変更すべきだ」といった“苛立ち”も寄せられている。

障害の程度によって「就労支援」と「生活介護」事業に分けるのが現実的だと思う。その上で就労支援に関しては、企業から仕事を受注する際、多くが下請け、孫請けからの受注となっている現状を見直し、工賃単価の高い事業を開拓する必要がある。現在の平均工賃「1時間当たり169円」はやはり低すぎると思う。

「1億総活躍」が叫ばれる中、B型事業所で働く人たちの“待遇”を改善することが、障害の程度がもっと軽いA型事業所や就労継続支援事業で働く障害者の賃金アップ、ひいては社会参加の拡大につながる。

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