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参院6増で導入、分かりにくい「特定枠」 坂東太郎のよく分かる時事用語

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 来年夏の参院選から適用される公職選挙法の改正案が、先月閉幕した通常国会で可決、成立しました。結論は何と定数「6増」。このご時世に議員「増」はないだろうと非常に評判が悪いようです。しかも比例代表には「特定枠」なる謎の仕組みが混じっています。言葉にすると「現在の『非拘束名簿式』に『拘束名簿式』を一部または政党によっては全部導入可」という有権者にとって分かりにくい……というより、ほとんど意味不明な代物が出現したのです。制度の肝になる部分をざっくりと解説してみます。

参院の選挙制度はどう変わる?

[写真]総定数が6増えることになった参議院。国会議事堂を正面から見て右側が参議院 (Natsuki Sakai/アフロ)

 現在の制度では、参院議員は選挙区(主に都道府県)と比例代表区(全国)から「242」人を選んでいます。それを今回、選挙区(埼玉県)2増、比例代表4増の合わせて6増とし、総定数を「248」とする改正が行われたのです。参院は任期6年で3年ごとに半数が改選されるため、1回の選挙で3増(埼玉県1、比例2)となります。

 少子高齢化に伴う社会保障費(年金や医療など)の増加や国債(国の借金)返済などで国民へ負担増をお願いする側が、よりによって「定数増」とは……とあきれる声が出るのは当然でしょう。

 参議院の総定数は、第1回の1947(昭和22)年選挙以来「250」で続いてきました。72年の沖縄本土復帰に合わせ、沖縄選挙区を定めて定数2とし、合わせて「252」に増えましたが、これは当然の処置とみなされましょう。2001(平成13)年選挙から定数10減が適用され、そして現行の「242」となりました。つまり参議院では単純な定数増は一度もなかったといえるのです。

比例代表の「特定枠」はどんな制度?

 なぜ「6増」なのか。理由は2つ。

(1)「1票の格差」を是正するため
(2)2016年参院選から導入された2県を1つの選挙区とみなす「合区」候補を救済するため

です。

 (1)に関しては、埼玉選挙区の増加が当てはまります。比例代表は全国共通なので1票の格差は存在せず、関係ありません。

 (2)は自民党の宿願でした。そもそも合区(徳島と高知、鳥取と島根の2選挙区)をしたのは2010年と13年の選挙を最高裁判所が「違憲状態」と判断したから。2010年選挙に対する2012年の判決では、「都道府県を選挙区単位とする方式を見直せ」と改革を求めてきました。例えば、人口最小の鳥取県に定数2(改選数1)を割り当てていたら、何をどうしたって劇的な格差是正は望めないからです。そこで人口の少ない順の4県を2つずつ一緒の選挙区としました。

 これが自民党内で該当する県連を中心に大変評判が悪いのです。4県とも概して自民党が強く、2019年改選組の13年の当選者は全て自民。合区は議席減とイコールです。

 といって「合区はやめました」では済みません。合区後の2016年選挙を最高裁は合憲としたからです。合区による格差縮小と、それを決めた15年の公職選挙法改正で、19年選挙では「選挙制度の抜本的な見直しを引き続き検討し、必ず結論を得る」と付則で明記した点を評価した結果でしたから。

 「必ず結論を得る」と約束しておきながら、何もしなければ最高裁も厳しい結論を出す可能性大。しかし1票の格差を抜本的に見直すには、さらなる合区か都道府県単位を原則とする選挙区のあり方そのものを改めるしかありません。自民としては2合区でさえもめているので、到底飲めない「見直し」です。

 そこで自民は当初、憲法改正による合区解消を考えました。党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は2017年12月「憲法改正に関する論点取りまとめ」を発表し、憲法47条を改正して、「都道府県をまたがる合区を解消し、半数改選(3年)ごとに都道府県から少なくとも1人が選出可能となるように規定する」という趣旨の提案をします。

「非拘束式」に「拘束式」が混ざる?

 とはいえ、憲法改正は簡単でないし、2019年選挙が迫る中で現実的でもありません。そこで持ち出したのが「比例4増(改選2)+特定枠」設置です。

 この「特定枠」とは比例代表に導入され、政党が事前に定めた順位に従って当選者が決まる仕組み。各党の判断で使っても使わなくてもいいし、何人に適用するかどうかも自由に定められるのです。

 これが実に分かりにくい。現行の選挙制度では、参院の比例が「非拘束名簿式」を採っているからです。この制度では、各政党が準備する名簿には、1位はAさん、2位はBさん、3位はCさんというふうには順位はなく、記されているのは候補者名だけです。有権者は投票の際、「候補者名」か「政党名」のどちらかを書いて投票します。名簿に順位がないのにどうやって当選者を決めるのか。まず政党の議席数を決めます。母数は「政党名+政党名簿に載っていた候補者の個人名」となります。「ドント式」という方法で各政党の議席配分を決めた後、得票が多い候補者から順に当選させていくのです。

 一方、「特定枠」とは、いわば「非拘束名簿」に「拘束名簿」を混じり込ませるような仕組みとなります。非拘束だけであれば、その党で候補者名をたくさん書いてもらった順に当選します。そこに特定枠をはめ込むと極端な話、ほとんど名前を書かれなかった人物が、特定枠であるがゆえに、候補者名で最多票を得た候補より優先して当選してしまう可能性があるのです。

 ならば、分かりやすい拘束名簿式へ改めればいいと思われるかもしれません。実際に1983(昭和58)年選挙から採用されたこともあり、投票は政党名のみというシンプルな形でした。しかし当時の自民党が、この方式だと名簿上位にランクされた候補者が安心して、逆に下位の候補者が落胆して、いずれも選挙運動に熱心さを欠き、票が掘り起こせないと不安視して、2001年選挙から今の制度になった経緯があります。

 自民党が、特定枠を合区で弾かれてしまった候補の救済に用いてくるのは確実です。非拘束のままだと当選が確約できませんから。2013年選挙で自民党の比例最下位当選者の候補者票は約7万7000票。人口最小の鳥取県でも有権者は約48万人なので楽々当選できそうですが、棄権と野党投票者を除き、さらに政党名ではなく個人名で投票された数だけで超えられるかというと、意外と高いハードルかもしれません。

 「定数増など言語道断だ」という世論を気にするならば、比例代表の定数は変えずに特定枠を設置するだけにしたらいいという考えもありましょう。でもそうしたら、比例議員の当選者が特定枠分だけ減るので、それはそれで自民党内は収まらないでしょう。結果、今回のような改正に至ったと推測されます。

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