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こんな日本に誰がした(1)― 日本の新国技「おもらいさん」

2012年02月09日 08:12

北村隆司

共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、橋下大阪市長が1月27日の記者会見で「3年連続定員割れの府立高校の統廃合で、経済的に困難な家庭の子どもが遠距離通学になっても、通学定期代くらいバイトして稼げばいい。授業料までただにしてるのだから、通学代が出せないから地元に高校を残さないといけないなんて、そんな理屈は通らない」と述べた事を取り上げ:
「通学代、バイトで稼げと暴言!」
と言う大きな見出しを掲げ橋下市長を非難した。

これが「働かざる者は食うべからず」の原則を掲げ「労働能力あるすべての市民の義務であり名誉である」と労働の義務を憲法で定めていたソ連を、世界の共産党の中で最後まで支持して来た日本共産党の機関紙の主張だと言う事に、隔世の感を禁じ得なかった。

日本国憲法第27条でも「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」と労働の義務を定めている。第3項で「児童は、これを酷使してはならない」と言う規定は設けているが、中卒で勤労にいそしんでいる若者も沢山いる事実からも、高校生がアルバイトする事をさまたげている訳ではない。

共産党が、義務教育でもない高校教育で教科書代を無料にした橋下市長の政策に「貧困者救済を優先すべきだ」と抗議するなら理解出来ても「通学代くらいバイトで稼げ」と言う発言が暴言だと言う主張は理解に苦しむ。

学生時代のバイトは当然で、最早戦後ではないと言われてから社会に出た我々の世代は「エコノミック・アニマル」と世界から揶揄されながら、馬車馬みたいに働いてしまった。その為に、次の世代に多くの文化的、教育的な問題を残してしまった事は認めざるを得ない。

「稼ぐに追いつく貧乏なし」をまともに信じて働き続けた弊害の一つが、親の世代から伝えられてきた「たしなみ」の大切さを、次世代に教える事を忘れてしまった事である。この失敗が「懐は豊かだが、心の貧しい」日本人を作って仕舞った。

「たとえ貧しい境遇にあっても、貧しさを表に出さず、気位を高く持って生きるべき」と言う「たしなみ」を教えた「武士は食わねど高楊枝」と言う諺は、今や「やせ我慢」や「見栄っ張り」を意味する言葉に身を落として仕舞った。

「乞食は三日やったら止められない」と言う表現も、「物乞いが楽だと言うより、自尊心を失うには三日を要しない」と言う警句と解釈するべきだが、自尊心を捨てざるを得ない「乞食」の心中の悔しさも教えず、「乞食」を差別用語だとして使用を禁じ、「ホームレス」と言う誤訳を宛てるなどは、本当の思いやりとは程遠い形式主義の冷淡な考えである。

麻薬や八百長問題などで国技と言われた大相撲の将来が危ぶまれているが、この侭では「おもらいさん(乞食商売)」が、大相撲に代わる日本の新国技になるに違いない。

「おもらい文化」の典型が、赤旗の記事にもあるような「行政依存権利論」である。「お貰い権利論」は共産党に限ったことではない。最近の報道に見る沖縄、福島両県知事の言動は、知事として県民の自助努力を主導する事すら忘れた「職業的なおもらい屋」とさえ思いたくなる堕落ぶりだ。

日本語自身も「お貰い型」に変わってしまった。我々の世代では「勇気」や「元気」「パワー」を他人から貰うなどとは想像した事もなく、これ等は自ら絞り出す物で、出来れば人様に授けられる人間になれと教育されたものである。

ところが、最近の日本、特に東日本大震災後は「勇気」も「元気」も「パワー」も「貰う」のが当たり前の、受け身な日本になってしまった。

受身や形式主義がはびこる国は、必ず他人に依存する国柄を生む。こうした「おもらい文化」の蔓延する日本が、競争の激化する世界でどの様に生き延びる心算なのだろうか?心配でならない。

以前にも引用したが、日本は今こそ福沢諭吉が米国で学んだ「独立の気力無き者は、必ず人に依頼する。人に依頼する者は、必ず人を恐れる。人を恐れる者は、必ず人にへつらうものなり。」と言う「学問の勧め」の精神を真剣に考える時期である。

マスコミは勿論、政治家や学者、評論家までが行政保護頼りの「おもらい」政策を当然とする論調を今後も続ければ、「自ら手を汚す」勤勉な日本人が、先ず「おもらいの手をのばす」怠惰な国民性になってしまう事は間違いない。

「エコノミックアニマル」も行き過ぎだが「他人本願」「怠け者」日本人が登場するとしたら、何とも情けない。「格差是正」「弱者救済」の美名に隠れた「お貰い奨励」や「わがまま肯定」の行き過ぎは何としても阻止しなければ、日本の将来はない。

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伊藤忠商事在職中、24年間にわたって米国に勤務する。

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