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変わる米韓同盟?日本への影響は 「米韓合同軍事演習中止」は東アジアに何をもたらすのか - 伊藤弘太郎 (キヤノングローバル戦略研究所研究員)

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先月12日に行われた史上初の米朝首脳会談では、共同文書に完全・検証可能・不可逆的な非核化を意味する「CVID」の文言が盛り込まれなかったことが批判された。更に、トランプ大統領自身が記者会見の場で、「今夏からの米韓合同軍事演習を中止する」と表明したことも「一方的な譲歩でないか」と大きな波紋を呼んだ。

首脳会談前、多くの専門家は対北譲歩策の一つとして「B-1B爆撃機などの戦略兵器の展開中止」までは予測しており、米韓合同軍事演習に関しても、あくまで「非核化の最終段階で演習規模縮小などを段階的に行っていくだろう」といった観測が有力だった。ところが、トランプ大統領の発言を受けて行われた米韓国防当局による協議を経て、6月18日、今夏の合同軍事演習の中止が正式に発表された。翌19日には金正恩国務委員長の3度目となる中国訪問が行われた。同委員長は「米韓合同軍事演習中止」という手土産を持って、習近平国家主席との会談に臨むことができたのである。

多様な危機を想定してきた米韓合同軍事演習

米韓合同軍事演習は二種類ある。北朝鮮との全面戦あるいは局地戦を想定した米韓連合軍の作戦計画に基づき両軍の陸海空・海兵隊の4軍によって行われる大規模なものと、米韓の同じ軍種間で行われる小・中規模な演習・訓練の二つだ。

前者の大規模演習には、毎年3月に行われるコンピュータによる指揮所演習「キー・リゾルブ(略称:KR)」、毎年3月から4月にかけて行われる野外機動演習の「フォール・イーグル(FE・韓国名はドクスリ)」に加え、毎年8月中旬から行われる「乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン(UFG)」の3つがある。北朝鮮が事あるごとに「北侵戦争騒動」と非難し、中止を求めてきたのがこれら3つの演習なのだ。一方、後者の小・中規模の訓練には、5月に米韓両空軍が実施した「マックスサンダー」等、米韓両軍の同じ軍種間で行われる定期訓練が主体である。

当初、北朝鮮の非核化を推進するために中止となるのは、前者3つの大規模演習だと予想されていた。しかし、今回はUFGに加えて、米韓海兵隊による合同演習(KMEP: Korean Marine Exchange Program)も中止リストに加えられた。また、来春のKR&FEは、「北の非核化の進展状況を見ながら実施の可否を判断する」とし、「必要に応じていつでも再開できる体制を整える」ものとされた。

今回中止が決まったUFG演習は、韓国政府の国内危機管理担当官庁である行政自治部主管の軍官民による共同演習(乙支演習)と、米韓の軍事指揮所演習(フリーダム・ガーディアン演習)の二つで構成される。後者は、北朝鮮による局地挑発に対する韓国軍単独または米韓共同の対応能力の向上を目指し、全面戦における米韓連合軍の作戦計画に基づき、コンピュータによるシミュレーションを使用して行われる。

通常韓国大統領は乙支演習初日に、青瓦台・地下バンカーにおいて国家安全保障会議(NSC)を招集し、関係閣僚や大統領府スタッフは同会議に出席して、緊急事態対応の手順を各自確認することになっている。ここでいう緊急事態には、北による軍事挑発にとどまらず、韓国国内で発生した重大な自然災害なども含まれる。乙支演習の目的には軍事以外の多様な危機に米軍と合同で対処する能力を訓練することも含まれるのだ。

北朝鮮にとっては量・質ともに驚異

米韓合同軍事演習の効果は、米韓連合戦力の連携強化だけでなく、在韓米軍以外の米インド太平洋軍隷下の部隊、特に在沖海兵隊を中心にした在日米軍部隊の練度向上にも重要な役割を果たしている。近年の例を見ても、岩国基地所属のF-35Bや普天間基地所属のオスプレイのような最新装備品が実戦配備後に米韓合同演習に参加している。陸海空・海兵隊の四軍を統合戦力として訓練できる絶好の機会だからだ。

韓国軍自身も演習による大きなメリットを享受している。6月14日付朝鮮日報では元韓国軍将官の「連合訓練は韓米戦闘体制を固めることはもちろん、我々がとても安い授業料を出して、世界最強の米軍から戦争ノウハウを学ぶ機会1」というコメントが報じられた。この言葉が端的に示すように、統合軍事演習は韓国軍四軍の戦力強化に大きな役割を果たしている。

また、最近の米韓合同軍事演習の特徴としては、戦略兵器である米空軍のB-1B爆撃機や海軍の原子力潜水艦が頻繁に参加するだけでなく、米韓両軍の特殊作戦部隊による合同訓練の様子を公に「見せる」ようになったことが挙げられる。昨年まで米韓両軍は「北の指導部除去」を高らかに掲げており、昨年春のKR&FEには過去最大規模の米特殊戦力が参加したとされる。北朝鮮にとっては、米韓合同軍事演習のために圧倒的な米軍戦力が朝鮮半島に集結するという「量的な脅威」だけでなく、米軍戦力の種類が多様化したことで「質的な脅威」も増すという、より深刻な状況になりつつあったのだ。

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