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VRシネマ始動! 新しい映像体験として認知されるか? - 多賀一晃

 東映、VAIO、クラフターによるVRCC事業概要、コンテンツ発表会があった。VRCCとはVR Cinematic Consortiumのことで、平たく言うと、ヴァーチャル リアリティ映画のことだ。VR映像はVRゴーグルで観るが、映画館に観客を集めて、VRゴーグルを付けてもらいVRシネマを観てもらおうというモノ。1スクリーンではなく、人数分のVRゴーグルを用意、個人で観ることに違和感を覚える人もいうと思う。

 東映=興行、VAIO=ハードウェア、クラフター=コンテンツ作成と役者は揃っているが、その現状はどうなのだろうか?

新しい映像体験は映画館から

VRシネマの上映中の風景。かなり怪しいとも言える。

 映画は、常に新しい映像体験を提供してきた。「動く絵」からしてそうだ。初めての映画を観た人はビックリしたことと思う。それからすぐできた映画が「月世界旅行」。特撮映画である。今となっては微笑ましいレベルだが、ここに映画の本質を見ることができる。それは、映画の惹句で使い古された表現だが「見たことのない映像体験」だ。

 以降、映画は、いろいろな技術を尽くし、新しい映像体験を提供していく。ルーカスの「スターウォーズ」などは典型例。冒頭の戦艦スターデストロイヤーの大きさの見せ方。これだけで、皆、驚いたはずだ。日本でも「特撮」ではなく「SFX」という言葉が流行した。

 しかし技術を駆使すると、映画制作に膨大なお金がかかる。リアルなセットでのリアリティを追求した黒澤明監督が映画を作る時、国内の映画会社からお金がかかり過ぎるとして、資金を出してもらえなかったのは有名な話だ。

 1993年、「ジュラシック・パーク」で本格導入されたCGは、作れば作るほど、データーが蓄積、応用を効かせることができるので、最終的に安くできるといわれたものであるが、現時点では、予算縮小への貢献は聞かれない。

 そのため、DVD、キャラクターグッズの売り上げで、制作費を賄うようになったのが2000年前後の動きだ。興行収入は、作品全体の10%位にまで落ち込んでいた時期だ。映画館に活気がなくなった上に、スクリーン盗撮により、海賊版が横行し始めた時期でもある。

 また、この時期にデジタル化問題が発生。デジタル設備導入が必要なため、いわゆる昭和の古き良き映画館が、閉館を余儀なくされた。

 そして2000年になり「3D」が本格導入される。「3D」は新しい映像体験であり、観客を映画館に呼び戻した。その上、スクリーン盗撮しても、キチンとした映像にならないため、海賊版への抑止効果にもなっている。この頃から、シネコンが基本になる。

 そして、現在。視覚、聴覚だけでなく、臭覚、触覚を刺激する装置を入れた「4D」、映画への没入感を最大にしてくれる「IMAX」などが導入されている。

 それと共に、コンテンツ・レベルの向上も求められる。昔は、巨大セット、長期ロケーションでお金がかかったが、今はCG技術と、作成費でお金がかかる。このため、ヒットが見込まれる映画ばかりが作られるようになる。逆に言うと、似た映像が並ぶため、慣れちゃうと刺激が少ない。このため、今、映画館では、音楽ライブ、歌舞伎、オペラ、バレエなど、多彩な映像も公開されるようになった。

 一方、YouTubeなどの台頭で、ユーザーの驚愕映像体験は上がっているのが、現状だ。

 映画の歴史は、新しい驚きの映像体験と、それを実現する技術の歴史でもある。そんな中、新しい映像体験としてVRに注目が集まっている。

VRをなぜ映画館で観るのか

 VRは個人体験。冒頭に書いた通り、なぜ映画館で観るのか、疑問が出てくる。答えは「品質」と「共感」だ。品質は、映像、音両方だ。ここで使われるVRゴーグルのベースは、中国のPico(ピコ)社製。これをVAIOがリファインしたものだ。特長は6DoFを取り入れたこと。これはX、Y、Zの立体軸にピッチング、ヨーイング、ローリングという各軸の回転を組み合わせたモノで、立体かつ奥行きも含め、各方向への動きが実にスムーズになる。セキュリティー、高画質も含め、この映像品質を各ユーザーに等しく提供するためだ。

VAIOチューンのVRゴーグル斜め前から。軽量化を強く望みたい

 また、音のクオリティの問題がある。そもそも、ヘッドホンだと意図した低音が再現できないことが多い。だったら、VR+ヘッドフォンではなく、VR+劇場のサウンドシステムで、どうだと言うわけだ。最近の劇場のサウンドシステムはよく出来ており、音量設定さえ間違えなければ、映像にドンピシャのと音を楽しめる。

 共感は説明の必要もないと思う。初デートが映画館と言う人は多いと思う。それは体験共有したいからだ。耳がフリーだと、隣の人の状態はなんとなくわかるもので、全体的な雰囲気を高めてくれる。

VRのネック、ゴーグル

 やはり、最大の問題は、VRゴーグルだろう。筆者は、完全フィットのゴーグルに出会ったことがない。メカを組み込まなければならないため、重いからである。

 今回は坐っている限りにおいて、ズレの問題はほとんどなかったが、重いのは欠点だ。正直、長時間の鑑賞には向かない。初めは「非日常体験だから」と言われ、納得しても、早々に問題になるだろう。また、VRゴーグルは共用なため、観客で使い回される。このため眼の周りに使い捨てのマスクを付ける。これも煩雑だ。VRは未だ黎明期のように思う。

第一印象

 短編映画「夏をやりなおす」を見る。主人公は、アニメ顔の女の子。これは3Dのワイヤーフレームにテクスチャーを貼り、3D化した人を、再度平面化することにより作られており、2Dと3Dの中間の独特の感じ。

 女の子の仕草は、遠目には、はっきりCGと分かるのだが、アップはかなり作り込まれており、アニメの表現としてはギリギリ及第点があげられるレベル。

 しかし、鼻の処理はNG。アニメはマンガを動かすために、その画は輪郭を持つ。ところがま正面の鼻に輪郭を入れると、妙な顔になる場合が多い。このため、色差で描写することが多いのだが、今回の主人公は、鼻の頭の色が濃く、黒ポチに見えるのだ。そうなると、習字で墨が付いた彼女を相手にしているようなもので、どうにも困ってしまった。ピクサーが、フルCG化アニメで「トイ・ストーリー」の描写を作ったように、新しい描写が必要だ。

 しかし空間描写はかなりのもので、かなりのリアリティ。ストーリーそっちのけで、キョロキョロしてしまう。ただやはり、ディテールの描き込みが足りてなく、ジブリ映画のように、背景美術鑑賞とまでは行かない。が、これをアートの感じで作れたら、話しは変わってくるというポテンシャルをヒシヒシ感じる。

 感心したのは臨場感。「自分目線」の映像だ。手、服などもないし、自分の声もないので気づきにくいが、彼女の隣で、彼女を見ている臨場感はかなりのもの。

 そして「自分が体感するような動き」。これが抜群によかった! ネイキッド・バイクに乗った時のような剥き出しの感覚なのだ、ウサイン・ボルトのような、普通の人が味わえないようなスプリント、タイソンのハンマーパンチなど、非日常の経験が凝縮されているような感じと言うと、お分かり頂けるだろうか。

 考えてみると、VRは体験し難いことを体験するためのツールだが、体感するとやはり「スゲー」となる。劇場の売りであるサウンドは、非常にナチュラルで、ストレスを全く感じない。

 本当に映画の一分野として認知してもらうには、直さなければならないところが山ほどあるモノの、非日常な世界を体感できる魅力があると言うのが第一印象だ。

 ディズニーランドのアトラクション「キャプテンEO(世界で最も多く見られた3D映画)」を初めて見た時の興奮がそこにはあった。

必要経費と対価


今回の先行体感上映は、私の見た約6分のオリジナル作品「夏をやりなおす」を含め、「おそ松さんVR」「evangelion Another Impact(VR)」の3本。アニメで人気の「おそ松くん」そして「エヴァンゲリオン」のラインナップが東映の本気を感じさせる。

 他2本に関しては、短編という以外の情報はないが、同等の時間を思われる。3つの世界に入り込む価格は、1500円。これは破格ともいえる。VRゴーグルは、3D眼鏡と一桁以上コストが違うし、技術は全部新開発。ゴーグルの装着サポートなどに、人を付けるとなると、コストはさらに嵩む。

 ちなみに今、映画の当日券は1800円。3Dで+300円(3D眼鏡持ち込みの場合。ない人は+100円)、IMAXは+500円、4Dで+1000〜1200円。妥当な線としては、VR+500〜1000円だろうか。個人的には、作品の質を上げてもらい、ゴーグルを修正してもらえれば、一作品(もち120分)、2500円はありだと思う。

 いずれにせよ、未来を問う上映は、新宿バトル9で、7月2日から1カ月行われる。皆さんはどんな印象をもたれるであろうか?

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