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「オウム 獄中の告白」麻原彰晃・元死刑囚の弁護士の極秘接見記録を掘り起こした労作 - 田部康喜(東日本国際大学客員教授)

 オウム真理教による一連の事件の首謀者とされた、麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚とその弟子6人が7月6日に死刑が執行された。NHKスペシャル(7月8日)は、麻原の弁護団が1996年6月から8年間にわたって、接見した極秘の記録を掘り起こした。裁判では事件について、いっさい語ることを拒否した麻原が時に饒舌(じょうぜつ)に、弁護団の追及には時に窮した内容が、約300頁にわたって記録されていた。

 さらに、取材チームは死刑執行の直前まで、麻原と同時に死刑が執行された6人について往復書簡の形で事件を問い続けた。

 NHKスペシャルは、未解決事件file.02「オウム真理教」(2012年5月26日、27日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1998)のなかで、麻原元死刑囚の教団内で行われた説法の700本に及ぶテープを分析しながら、教団が一連の犯罪に手を染めていった過程を追究した。今回の「オウム 獄中の告白」でも、この取材が生かされている。

 麻原元死刑囚は、事件について何も語らないままに自らの命によって、罪を贖った。オウム事件を担当した裁判長は、次のように述べる。

 「最後までつきつめることができなかった。のちの世の教訓となることができなかったことは残念という思いある」

 メディアは、裁判を超えてその「教訓」を追究するものである。今回のNHKスペシャルは過去の取材も含めて、長期にわたる真実の追究の労作である。

当初は饒舌だった麻原・元死刑囚

 オウム真理教による一連の事件なかでは、まず信者を家族の元に引き戻す活動をしていた坂本堤弁護士と妻の都子さん、当時1歳の長男の龍彦さんの「坂本弁護士一家殺人事件」がある。サリンの製造後は、オウムにからむ事件を審理していた松本地方裁判所の裁判官の官舎を狙ったものの、果たせず民家に死傷者を出した「松本サリン事件」。そして、世界初の都市型テロである首都を襲った「地下鉄サリン事件」などがある。20件を超える事件の死者は29人、被害者は6500人以上に達する。

 番組が入手した極秘の接見記録によると、麻原・元死刑囚は当初は饒舌だった。当時ヒットしていた若者の曲の話になると、「この曲を作ったのは信者ではないでしょうか」と。

 さらに、事件の全容についても、「オウムをやっつけるということに対して、はっきりと主張したい」と語っていた。

 坂本弁護士一家殺人事件についても、一家の死体が教団に運び込まれたとき、「私はまずいな、大変だ、困ったと。坂本弁護士が今後悪行を重ねないとも思った。その後は教団を守るために証拠隠滅を図っていった」と。

地下鉄サリン事件、犯行の真相

 「地下鉄サリン事件」をめぐっては、麻原・元死刑囚が指示したのか、あるいは弟子たちが教祖を忖度し、教団内の出世を望んで犯行に及んだのか、大きな謎だった。検察の調べによると、教団に帰るリムジンのなかで謀議があったとされる。

 麻原・元死刑囚と、教団の№2でその後殺人事件で死んだ村井秀夫と諜報担当で今回死刑執行された井上嘉浩・元死刑囚、サリンの製造担当でやはり死刑執行された遠藤誠一・元死刑囚の会話である。

 麻原 強制捜査をどうすればいいのか?
 村井 地下鉄にサリンをまいてはどうか。
 麻原 パニックになるな。
    (村井に指示したとされる)
 麻原 サリンは作れるか。
 遠藤 条件がそろえばできる。

 極秘の接見記録によれば、麻原は次のように語っている。

 「(地下鉄サリン事件は)井上が中心だった。(わたしは)やめておけといった。村井が『人がもう動いている』というので」と黙認したと主張している。「主体は村井と井上だ」と。

 このリムジンのなかでの犯行の決定について、井上は死刑執行の直前に取材チームに宛てた手紙のなかで、ことなる証言をしている。「サリンをまくと強制捜査は避けられない、という段階で終わっている。撒けという指示はなかった。教団の施設のなかで意思決定がなされた」と述べ、井上自身はその意思決定に加わっていないという。主体は麻原と村井である、と。

 1997年2月10日、弁護団は麻原との接見に際して、教祖としての責任問題を追及している。

 弁護団 教団のトップとして防ごうとは考えなかったのか?
 麻原  考えなかった。
 弁護団 なぜ、止められなかったのか?
 麻原  井上が嘘を言っていたので。
 弁護団 彼らをやめさせる力があなたにはなかったのか?

 麻原・元死刑囚は答えに窮した。約300頁に及ぶ接見記録のなかに、麻原・元死刑囚の被害者に対するお詫びと反省の言葉は一切ない。

 取材チームとの往復書簡のなかで、今回死刑を執行された元死刑囚の慚愧の念が聞こえてくる。

 早川紀代秀「なぜあのような悲惨な事件を起こしたのか。麻原こと松本死刑囚しかいません。彼にひとつの誤りがないと信じたのが残念です」

 井上嘉浩「いつわりの現実逃避だった。他者が自分の問題を解決することはないのです」

 中川智正「(いまだに麻原・元死刑囚を信じる人々がいることに)人生の最後に後悔することがないように。被害者の方とご遺族には言葉もありません」

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