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「感じが悪い」と生きていけないこの社会 ~「異文化」を「感じの悪さ」に翻訳してしまう“この国のかたち”~ - 山本 一郎

 先日、当連載にてアロハシャツでうろうろしてたら職務質問されたというネタを書いたところ、なぜか近所の御茶ノ水幼稚園のママ友の間で「いま界隈で問題になっている変質者は山本さんではないか」とか勝手な噂を立てられたようで、こいつら本当に馬鹿なんだなと思うわけです。疑われて心当たりがある本人ならこんなのネタにするわけねえだろ。地域の世話人も兼ねてたっつーのに。そのうち証拠持って無慈悲に訴えてやろうと思います。

新宿区のダイバーシティの振り切れ具合

 で、実家の介護もあるのでこの方面からは距離を置いてるわけですが、実家周辺の保育園とかご一緒していると「専業主婦の勝手な噂が渦巻く千代田区界隈」と違って「共働きと外国人子弟がごちゃ混ぜになっている新宿区界隈」という新たな世界の地平線が拓けることになります。

とにかく子供の数が多いのと、ダイバーシティ(多様性)という意味ではなかなかの針の振り切れ具合でとても刺激的です。朝、子供を送りに来るお母さんが「あっ、ひょっとしていま仕事帰りなのかな」と思わせる出で立ちや匂い、お父さんによく似た素敵なアフロで元気よく挨拶する女の子、乗りつけた外車の助手席から颯爽と降りてくる金持ち系男子もいれば、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに手を引かれて眠そうにやってくる子たちもいます。

©iStock.com

 新宿区や中野区も外国からやって来られる方やご家庭が増えて、これに対応する行政も学校も大変なんだろうなと思うわけなんですが、やっぱり文化の違いからくる「あの人、感じが悪いよね」ってのは横行するようで、この界隈に足を向けて半年かそこらでママ友含め保護者同士の物凄い「断絶」を感じさせます。

 もちろん、日本人家庭は近所同士固まってわいわいやっているのですが、問題は行事の内容やしきたりの分からない外国人家庭で、分からなければ分からないなりに質問してくれれば説明することはできても、突然とんでもないことをやらかしているように日本人からは見えるので、感じが悪いよねって距離を置かれて地域でも学校でも孤立するってことが横行するようであります。

日本語もままならない異国で家庭を築き地域で暮らしていくはずが、単にその文化を知らなかったという理由で辛い思いをするというのは申し訳なく思うのです。

気心の知れた関係「だけ」を築こうとする

 私が最初に観たのは学校や保育園、地域で「節分のイベント」をやり、子供たちを招待したときに、きょとんとし、呆然とする外国から来た児童の姿でした。まあ、鬼だ豆だ、鬼に豆をまくと邪な気が祓われて一年健康に暮らせるんだよと説明されても理解できないのは間違いないんですよね。「鬼に豆をまくと家内安全らしい。なぜなんだ」「私に訊かれても困ります」風の。知るかよ。こっちが聞きたいわ。

数年もすると、仕事でもご一緒している黒人男性(40代)が「俺が本物の鬼だぞー」とか黒光りツーブロック腹筋を輝かせて鬼役を買って出てくれるようになるわけですけど、やはり理解できないものを遠ざけようとする動きは抗いがたい。保護者・ママ友界隈でも、私などは半ば強引に仲良くなって楽しくやる「コミュ力」はあるわけですけど、やはり日本人同士の付き合いでも親が忙しいとか、人付き合いが得意でない人は外される傾向が強くなるわけです。

 ある日、外国人の保護者が保護者同士の連絡網でやるLINEから外されたとかで揉めてましたが、両方から話をよく聞くと子供の手持ちの弁当の中身が臭いだかでいじめられ、いじめられた親が抗議したところエスカレートしたという残念な事例で困惑するわけです。まあ、子供からするとちょっとした違いで排除したりいじめたりというのは日常茶飯事で、それを見ている保育士さんたちが宥めたり、話を聞いた両親が受け入れてあげるよう促したりするのが本筋だと思います。

いい歳こいた大人が、気にいらないことが起きて「こいつら本当に馬鹿なんだな」とか啖呵を切っている姿を見るとげんなりするんですよね。そんな奴にまともな人間いるはずないじゃないですか。ところが、よくよく話を聞いてみると「面倒にかかわりたくない」という親の姿勢が強く、文化の違いを乗り越えて一緒に楽しくやるよりも、文化の違いで起きる摩擦を煩(わずら)わしいことと思って積極的に回避し、気心の知れた子たちや家庭との関係「だけ」を築こうとする動きが強いようにも見えます。

「日本の生活は楽しいけど寂しい」

 言われてみれば、大人の世界でもこじれそうな人間関係で問題回避をする動きは強く出るようで、お付き合いの深いコンビニや飲食チェーンの集合研修でご一緒した際に「外国人研修生に対する日本人の距離感」というのは感じたわけですよ。

懇親会では私も気の毒に思って一人で食事をしている外国人に積極的に話をしに行くんですが、ほぼ全員が日本に来て一年ぐらい日本語もまあまあ上手くなったのに日本人の友達がなかなかできないと残念がっていました。

ベトナムやフィリピン、マレーシアあたりからの若い男女が多かったんですけど、彼らの言う「日本の生活は楽しいけど寂しい」っていう感想を聞くと申し訳ない気分になります。まあ、私が「おじさんでも良ければ私と友達になろう」というと逃げていくわけですが。何だお前ら話が違う。

まあそれはそれとしても、なんかこう、日本はなし崩し的に世界第4位の移民受け入れ国になっているにもかかわらず、せっかく日本がいいと言って来てくれた外国人に対して日本社会に受け入れたり、日本文化に親しんでもらって一緒にやっていこうという機運も機能も不足してるんじゃないかと思うわけですね。

感じいい人たちだけで回っていることは「衰退」なのではないか

 研修後のアンケートとかで、大学出たての日本の若者が「外国人と一緒に働くことをどう思いますか」って質問に対して「せっかく大学まで出ていい企業に就職したと思ったのに、外国人と一緒に働くことになって辛いです」みたいな率直な回答をしてくる人も稀にいてブルーになります。お前さあ。まあ、いままで日本人に囲まれて日本社会で暮らしてきた人たちからすれば、どうしても違和感があるのは仕方がないことだとは思うんですけどね。

 日本人同士ですら、感じ悪いっていうだけで仕事を干されたり連絡網から外されたりすることもまた多いわけなんですが、この感じいい人たちだけで回っている居心地の良さというのは、いずれ衰退の象徴になっていくと思うんですよ。

夜疲れてコンビニにいって応対してくれる外国人の店員に釣りを渡されて「ありがとう」と一言言えるかどうかで、ずいぶん違ってくるんじゃないかとすら感じます。親父お袋が病気になって、仕事以外の世間に触れる機会が多くなって初めて、私もようやく「相手を尊重するとはどういうことか」が何となく分かるようにはなってきました。

「なし崩しの移民増加」が生み出すもの

 これから外国人がもっと増えていくであろう日本で、彼らにもう一歩日本のことを知ってもらうための工夫をどうするのか、ちゃんと考えたほうがいいんだろうなあと。あるいは、欧州のように「もうこれ以上、移民は受け入れられません」とやったり、ドバイやシンガポールのように「あなたがたは労働力です。雇用が無くなったら在留資格も無くなります、強制送還です」とするのがいいのか。

安い労働力だと思って呼んできた外国人は、単に労働力ではなく、幸せを求める一人の人間であることも含めて、日本は外国人を受け入れる能力を磨く方法を考えなければなりませんし、安倍晋三政権が放置しているようにも見える「なし崩しの移民増加」が日本社会にとってとんでもない断絶と対立を生まないよう祈るのみであります。

(山本 一郎)

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