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会社員"50歳引退"には最低いくら必要か


※写真はイメージです(写真=iStock.com/AH86)

「50歳で引退」というアーリーリタイアを目指して、資産形成に励んでいる人がいる。そうした夢をかなえるためには、最低いくら必要なのか。ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が試算したところ、「50歳時点で少なくとも1億円を準備しなければならない」という。会社員が「50歳で1億円」を達成するための条件とは――。

■「人生の半分は働かない」50歳リタイアが実現可能か?

「あなたとお金の生存戦略」をキーワードにお金との関わり方を考える本連載、今回考えてみたいのは「アーリー(早期)リタイア」。これは「50歳で働くのを一切やめる」といったライフスタイルのことです。

前回のコラムでは、相当の退職金をもらったとしても、老後のマネープラン上は「60歳引退」はリスクが高いということを解説しました(「60代継続雇用の薄給を嫌う人は老後破綻」)。

アーリーリタイアについて考える前に、前回の内容を簡単におさらいします。

例えば、60歳まで高所得だった人が60歳で退職し、次の働き口がない(あるいは、働こうとしない)まま年金の支給が始まる65歳まで、生活費を預貯金の取り崩しでまかなうとします。「無収入」となりますが、消費スタイルを大きく変えることは困難です。たとえば夫婦で年400万円(月約33万円)を取り崩すと5年間では合計2000万円。退職金(大企業で約2300万円)はほとんどなくなってしまうことになります。

「65歳からは年金暮らしをすればいい」と思われるかもしれません。しかし現在の高齢夫婦無職世帯の1カ月の実収入は公的年金など約21万円である一方、食費・交通通信費・交際費・教養娯楽費などの支出は約26.5万円。つまり月5.5万円の赤字なのです。高齢化するとともに支出額は下がりますが、それでも心もとない状況です。

こうした事態を回避するため、60代は継続雇用などで可能な限り働き、少しでも収入を得ることで退職金に手をつける時期をできるだけ先延ばしする。それは老後のマネープランを維持することにつながる――。そうした内容でした。

▼50歳でリタイアすると公言する30代会社員がしていること

しかしながら、本音でいえば「60歳引退」あるいはそれよりも早い「50歳引退」を夢見る人は少なくないはずです。できれば1年でも早く引退して悠々自適の生活に入りたいと念願し、そのために資産形成に励んでいる人もいるでしょう。

それでは、アーリー(早期)リタイアを本気で計画すると、どんな方法が考えられるでしょうか。

積極的に株式投資を行い、資産形成している30代の会社員には、「アーリーリタイアを目指している」と公言する人がいます。これは実現可能な目標と言えるでしょうか。

■50歳までの28年間で1億円をどう貯めるのか?

アーリーリタイアの実現には、いくつかの大きな難点があります。

その筆頭は、「引退後の期間があまりにも長期化する」というところです。65歳から年金支給開始のところを50歳でリタイアするということは、15年分の無収入期間を補う資産が必要になります。そこから人生100年時代の長いセカンドライフがスタートするということは、それまで生きてきた年数分と同じ期間を働かないで暮らしていくことになります。

仮に90歳まで備えると考えた場合でも、リタイアする50歳から標準的な引退年齢(65歳)までの15年間、また、そこから90歳までの年金生活25年間を送るための経済的備えが必要になります。「合計40年」の備えが安心できるレベルに達していないと、アーリー(早期)リタイアには踏み出せないでしょう。

また、50歳リタイアには「引退後の生活資金を蓄える準備期間はその分、短く(タイトに)なる」という問題もあります。22歳から働き始めたとすると、65歳リタイアの場合、43年間の準備期間があります。しかし、50歳リタイアとなれば準備期間は28年しかありません。早く引退するということは資産形成の期間が短くなる、ということですから自ずと短期化することになるわけです。

これらを踏まえれば、「より早い時期」から資産形成を開始し、「高い貯蓄率」で積み立てを行い、かつ「高い運用利回り」で資産を増やす必要があります。

▼必要予算は1億円、月10万円年8%の収益が必要に

アーリーリタイアのお金の収支を概算してみましょう。

まず50歳から65歳までの支出総額はどの程度でしょうか。妻、子2人の4人世帯を想定した場合、年500万円(月40万円強)でやりくりすると15年間で計7500万円が必要になります。これを65歳以降の老後資金とは別に確保しなければなりません。

65歳から90歳までの支出総額を仮に2500万円とすると(加齢とともに支出額が大幅に減ることを想定)、50歳の時点で少なくとも「1億円確保」というかなり高いハードルが設定されることになります。50歳で引退した場合、支給される厚生年金額も普通の会社員より減少するので、65歳以降の準備資金にその分も上乗せする必要があり、実際は1億円超が必要となります。

50歳までに1億円を用立てするには、どうすればいいのでしょうか。

50歳で1億円に到達するためには、25歳から25年間、毎月10.5万円を積み立て、なおかつ年8%の利回りで増やす必要があります。これは非常に厳しい条件です。20代のうちから毎月10万円以上を貯金にまわし、しかも年8%の利回りを維持しなければならないからです。

■アーリーリタイアを目指す努力は老後に報われる

しかも「50歳で1億円」は最低条件です。生活費とは別に、住宅ローンの支払いや子どもの教育資金も必要になります。そのためには50歳段階で、さらに数千万円の上積みがなければいけません。

考えれば考えるほど、アーリーリタイアの現実性は低くなってきました。夢を壊すようで恐縮ですが、アーリーリタイアは100年人生時代の働き方としては現実的ではないように思われます。

もう少し考えてみましょう。会社がリストラ施策で「割増退職金」を支払うことがあります。これに「あえて乗ってみる」というのはどうでしょうか。

50歳時点で自主退職し、割増退職金をもらったとします。相場から考えると、本来の退職金に賃金2年分が上乗せされる形になるかもしれません。でも、その上乗せ分は、早期退職後の2年間の生活費にしかなりません。本来、65歳まで働いて得られるはずの収入額を考えれば、「早期退職が得する」とはいえないでしょう。

上乗せ退職金をもらって、すぐに次の会社に再就職できれば、その割増退職金は大きな財産になります。しかし再就職するのであれば、それはアーリーリタイアとは言えませんね……。

▼「前倒しの資産形成」はゆとりをもたらす

アーリーリタイアを目指して資産形成に励む読者を、がっかりさせてしまったかもしれません。しかし、その取り組みは決して悪いことではありません。アーリーリタイアという目標に向かっていた人は、そうでない人に比べて相当のハイペースで資産を形成できているはずです。

65歳以降の老後に向けて資産を形成するといっても、ゴールが遠いためにモチベーションが続かず、手つかずの人も多いのが現実です。その状況を放置していれば、65歳を迎えたときに、「老後の準備は、退職金くらいしかなかった」ということになります。

こうした世帯に比べて、アーリーリタイアを目指して励んだ人のセカンドライフは段違いなはずです。50歳リタイアはできなくても、60歳リタイアなら、実現できる人も多いでしょう。65歳までの2500万円(年間支出約500万円×5年分)の資産と、65歳以降のために2500万円の計5000万円が準備できれば、「60歳引退」は十分に可能です。

もちろん65歳引退となった場合は、さらに経済的なゆとりをもって老後をエンジョイできます。「50歳引退は無理だったが、同期と比べてわが家の旅行予算はほとんど制限かけずに計画できる老後になったな。今年はどこへ行こうか」と笑顔で話せる老後になるはずです。「夢のアーリーリタイア」を考えることは、きっとムダにはならないことでしょう。

(企業年金コンサルタント/ファイナンシャル・プランナー 山崎 俊輔 写真=iStock.com)

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